第33話 魔王城の黒魔術図書館
月曜日の朝。
千葉のレオン邸の庭では、フェイ太郎がリアとナルを風魔法で宙に浮かせていた。
「オーイラはフェレットのフェイ太郎♪」
小さなフェレットが楽しそうに歌いながら空を飛んでいる。
「魔法も使えるスーパーフェレット♪」
「人間の言葉も話せちゃう♪」
「風魔法で空を飛ぶ~♪」
「きゃあ! 凄いよ、ママー!」
リアが大喜びで叫ぶ。
「フェイ太郎の魔法で、あたし達空飛んでるよ!」
「うわぁ! 凄いぞ、フェイ太郎!」
ナルも大興奮だ。
「もっと高く飛べないか?」
「危険だから駄目みゃー。」
フェイ太郎は首を横に振った。
「オイラが大人になったら、人間一人くらいなら連れて飛べるみゃ。でも魔法を教えてやるから、自分達で勉強した方が良いと思うみゃ。」
「凄いねぇ、フェイ太郎。」
パンダが感心する。
「もしかして一人なら自由に空を飛べるの?」
「そうみゃよ、パンダ。」
フェイ太郎は胸を張った。
「だからオイラ、トイレの心配もないみゃ。ポルガン様が何時も連れ歩いてくれたんだみゃ。魔石の首輪を二個付ければ、パンダとレオンも連れて飛べるみゃよ。」
「へぇ! 賢いんだな、見かけによらず!」
レオンが感心すると、フェイ太郎はムッとした。
「オイラを馬鹿にするなよ、ゴブリン男!」
「な! なんて事を言うんだ、このイタチ野郎!」
「パンダー!」
フェイ太郎がニヤニヤ笑う。
「オイラ知ってるんだみゃ。あの浮気指輪を付けたまま浮気した奴は、十日以内に宝石が真っ赤になるんだみゃ。まだ浮気したて、ゴブリンになりたてのホヤホヤみゃよ。」
「へぇー。」
パンダがニヤリと笑う。
「誰と何をしたんだか、分かるかなぁ?」
「やめろ! パンダ! やめろ! イタチ!」
レオンは真っ赤になった。
「多分、深雪みゃ。」
フェイ太郎はクックックッと笑う。
「初めて会った時、深雪の良い匂いがレオンの身体からプンプンしたみゃ。」
「へぇ、賢いんだね、フェイ太郎。」
「そうみゃ。オイラ、ポルガン様のお気に入りだったみゃ。こう見えて賢いみゃよ。」
「黙れ! お喋りイタチ!」
レオンが頭を抱える。
フェイ太郎は首を傾げた。
「レオンー。さっきから見てる四角い板は何みゃ?」
「iPhone20 Poloだよ。」
レオンは笑った。
「スマートフォン。これで今、魔王に連絡してる。今日行っても良いかなって。」
「へぇー!」
フェイ太郎は目を丸くする。
「そんな凄い魔法が東京にはあるのかみゃ。」
「東京だけじゃなくて、地球っていう惑星のほぼ全域で使えるけどな。」
「キュッキュッキュッ。」
フェイ太郎が笑う。
「オイラ達の住む世界は星じゃないみゃ。天動説で出来てるみゃ。遅れてるなぁ、地球人は。ちなみに空には天国があるみゃ。」
レオンは首を傾げた。
「お前こそ知らないんだな……。」
言いかけて止まる。
「……いや、あの世界、本当に天動説なのか?」
パンダがスマホを取り出した。
「泉の男神にメールしてみるにゃ。」
レオンは驚く。
「パンダ、いつ泉の男神にスマホ渡したんだ? しかもLINE交換してるのか?」
「男とか女とか言ってたら、友達居なくなっちゃうにゃ。」
その時。
スマホが鳴った。
「魔王から電話だ!」
パンダはスピーカーに切り替える。
「もしもしー。魔王様? 今日、レオンと魔王城に行っても良いかにゃ? 黒魔術図書館を見せて欲しいんだけど。」
『大歓迎するぞ!』
魔王の豪快な声が響いた。
『深雪達は来るのか?』
「深雪はテレビの仕事だよー。コヌトコオープンの密着取材で忙しいにゃ。」
『苦労してるんだな。』
「うん。じゃあ、ありがとねー。」
電話を切る。
パンダはフェイ太郎へ地図を見せた。
「これ覚えられる?」
「当然みゃ!」
「じゃあ、リアとナルを幼稚園へ送って来て。幼稚園には電話しておくから、人間の言葉は絶対話しちゃ駄目にゃ。フェイ太郎用の昼飯もナルに持たせるから、普通のペットとして大人しくしているにゃよ。リアには、Amazonから届いたばかりのお出掛け用ペットゲージ持ってって貰うからにゃ。重くないにゃ、リア?」
「大丈夫だよ、ママ。」
「了解だみゃ!」
フェイ太郎は敬礼した。
「送迎中はイナイイナイの魔法も使うみゃ。」
レオンは少し不安そうだ。
「……随分賢いイタチだけど、本当に大丈夫なのか?」
「馬鹿にすんなよ! 半分ゴブリン男!」
フェイ太郎は胸を張る。
「オイラはポルガン様のお気に入りみゃ!」
「余計なことだけは言うなよ……。」
しばらくすると幼稚園から電話が入った。
「子供達来ません。」
「通園拒否するってー。」
フェイ太郎が子供達を連れて戻って来て、半べそかいて言ったので、レオンは苦笑いした。
仕方なく、レオンは幼稚園を休むと電話した。
「まあ、偶になら良いよな。」
四人と一匹はドコデモゲートを潜る。
目の前に現れたのは、まるで童話『美女と野獣』に出てくるような、美しくも威厳のある魔王城だった。
正門では魔王が満面の笑みで待っていた。
その隣には、美しい娘・魔王真央。
「あなたが天才パンダね!」
真央は興味津々でスマホを見つめる。
「私もスマホ欲しいんだけど、いくらするの?」
「コヌトコで契約できるにゃよ。」
「なら、明日連れて行ってやるぞ。」
魔王が笑う。
「本当にあなたは真央に甘いんだから。」
奥から、美しいハイエルフの妻が現れた。
「簡単に買えるなら、私も欲しいわぁ。」
そしてレオンを見る。
「あらぁ。勇者の旦那様って、なかなか良い男なのね。でも、その指輪付きじゃ遊べないわねぇ。」
レオンは慌てて顔を背けた。
レオンがハイエルフに心を動かされた瞬間、指輪が赤く光った。
「ふふっ。」
ハイエルフは優しく微笑んだ。
「あなた、魔法の制御を全然知らないのね。」
横でパンダがニヤリと笑う。
「パンダさんは初歩くらいは教わってるのね。」
「泉の男神とフェイ太郎に教わったにゃ。」
「なにぃ!?」
レオンは驚いた。
魔王は豪快に笑う。
「さあさあ! レオン殿は黒魔術図書館が見たいのだろう。」
「特別室以外なら自由に見ても構わん。電子化して好きに使ってもいい。」
「その代わり――。」
魔王はニヤリと笑う。
「スマホ二台、頼むぞ!」
レオンは笑顔で親指を立てた。
「了解した!」
いやいやいや、大変なミスに気がつきました。
なんと幼稚園に行ってるはずの子供達が、本編に普通に登場してました!!フェイ太郎の存在は忘れてました!!
アナザーワールドになってたわ!!




