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リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画  作者: ヘタレパンダ


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第34話 魔王討伐の本当の理由


魔王は黒魔法図書館の最奥にある、大きな黒い扉の前で立ち止まった。


重厚な扉には、幾重にも魔法陣が刻まれている。


レオンは静かに尋ねた。


「特別室には何があるのか聞いても構わないか? 入ったら駄目なんだよな?」


「ああ。」


魔王は静かに頷いた。


「ここ二百年間、この部屋へ入室した者は誰もいない。」


少し間を置いて続ける。


「……我を除いてな。」


「なに?」


レオンは目を見開いた。


「魔王殿、入ったのか?」


魔王は振り返り、娘へ声を掛けた。


「真央や。母さんとパンダ様の子供達とフェイ太郎と一緒に席を外しなさい。」


「分かったよ、パパ。」


真央は母親と二人の子供達、フェイ太郎と共に、その場を後にした。


四人と一匹の姿が完全に見えなくなるのを確認すると、魔王は重い口を開いた。


「我は10日前、興味本位で入った。そこには世界を破壊する魔法の術式が描かれていたんだ。」


静かな声だった。


「そして、その術式にはこう記されていた。」


『白魔法を破壊せよ』


レオンが眉をひそめる。


「白魔法に何かあるのか?」


「ああ。」


魔王は頷く。


「白魔法には、最強の消去呪文――『デリート』があるそうだ。」


「レオン殿とパンダ殿には話しても構わんだろう。」


「デリート……。」


「選んだ魔法を、この世から完全に消し去ることが出来る白魔法最強の呪文の一つだ。」


「どんな魔法であろうと、一度消されれば二度と存在できなくなる。」


「つまり、黒魔法の破壊術式にとって最大の天敵という訳だ。」


レオンは息を呑んだ。


魔王は続ける。


「特別室には、黒魔法の禁術二十種と、それを封じるための白魔法二十種が対になって記されているらしい」


「だが、我は世界を破壊する術式を見た瞬間、それ以上読むのをやめた。」


魔王はゆっくり目を閉じた。


「恐ろしくなったのだ。」


「妻も。」


「真央も。」


「誰も居ない世界など、我は欲しくない。」


静寂が流れる。


「あの部屋は、入った者の心へ破壊衝動を植え付ける。おそらく術式そのものが、術者を探しているのだ」


「これが、お前達一家に『魔王討伐』の依頼が出された、本当のきっかけだ。」


レオンは静かに尋ねた。


「知っていたのか……。」


「ああ。」


魔王は苦笑した。


「何故だろうな。」


「お前達一家に会うまで、ずっと悪魔の声が聞こえていた。」


「『その呪文を使え。世界を壊せ。』とな。」


「だが、不思議なことに、お前達の作ったコンビニのおにぎりを食べた日から、その声が聞こえなくなった。」


「そして……。」


「術式の内容も思い出せなくなった。」


「だから我は二度と、この部屋へ入らない。」


パンダは静かに考え込んだ。


「恐ろしい呪文は、それだけなのにゃ?」


「その呪文を知ることで救われる人はいないのかにゃ?」


「他の禁術は?」


魔王は首を横に振る。


「我には無理だ。」


「白魔法と黒魔法、両方扱える者でなければ、あの禁術を止めることは出来ない。」


その瞬間だった。


パンダが何気なく口を開く。


「もしかして……。」


二人がパンダを見る。


「白魔法の『デリート』で、その最悪の黒魔法だけを消しちゃえば良いんじゃないかにゃ?」


「それが、この世界の試練なんじゃないかにゃ?」


レオンの表情が固まる。


数秒の沈黙。


そして突然、レオンが笑った。


「お前、本当に凄いな。」


「やっぱりお前は天才だ。」


レオンは興奮気味に続けた。


「その方法なら、世界を壊さずに済む!」


「黒魔法の術式一つだけをデリートすればいい!」


「そうか……。」


「だから白魔法に『デリート』が存在するのか!」


レオンはすぐにパンダの iPhone20 Polo を手に取った。


「泉の男神!」


「入口の天使に聞いてくれ!」


「もし最悪の黒魔法一つだけを、この世から消すことが出来たら――。」


「魔王を倒す必要は、もう無くなるんだよな?」


送信。


数秒後。


すぐに返信が届いた。


『そういう話であれば、魔王を殺す必要はないと、天使は申しております。』


その文章を見た瞬間。


三人は顔を見合わせた。


そして同時に笑った。


魔王はレオンの肩を叩く。


「レオン殿。」


「浮気癖は酷いが……。」


「本当に良い男だな。」


魔王の目から涙が溢れる。


「怖かったんだ……。」


「あの黒魔法を知った時。」


「本当に……怖かった。」


魔王は両手で顔を覆い、声を殺して泣いた。


パンダはそっと魔王を抱きしめる。


レオンも静かに肩へ手を回した。


三人はしばらく何も話さなかった。


ただ、この世界を救えるかもしれないという希望だけが、静かな黒魔法図書館を優しく包んでいた。

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