第3話 異世界初のコンビニ(後編)
森の中。
三軒のコンビニの前には、長蛇の列ができていた。
村人。
冒険者。
商人。
そして──
黒い鎧を着た魔王軍。
パンダは大きな声で叫ぶ。
「今準備中にゃー!」
「オープンまであと三十分!」
「ルールを守れん奴等は使用禁止にゃよ!」
村人達は素直に並ぶ。
魔王軍も並ぶ。
将軍が小声で言った。
「魔王様……。」
「我々が最後尾です。」
魔王は真面目な顔で頷いた。
「勇者の罠かもしれん。」
「油断するな。」
その様子を見たパンダが手を叩く。
「あっ!」
「魔王軍の兵士達!」
兵士達がビクッとする。
「はいっ!」
「ちょうど良いにゃ!」
「ビラ配りのバイトやれ!」
全員
「……え?」
パンダはチラシを山ほど渡した。
「手伝ってくれたら、それぞれの店舗のおにぎり二個ずつご馳走するにゃ!」
兵士達の目が輝いた。
「お、おにぎり……。」
将軍が魔王を見る。
「魔王様。」
「偵察のためにも必要な任務かと。」
魔王は腕を組む。
「うむ。」
「受けよう。」
次の瞬間。
魔王軍は町中で叫び始めた。
「本日オープンでーす!」
「二十四時間営業でーす!」
「ご来店お待ちしておりますー!」
村人達はざわつく。
「魔王軍が宣伝してるぞ。」
「勇者の店を?」
その頃、店内では。
レオンが棚に商品を並べていた。
「リア、ナル。」
「オープン前に商品を食べたら駄目だぞ。」
「はーい!」
元気よく返事をする二人。
しかし次の瞬間。
ナルはフルーツサンドを持っていた。
「おいしそう!」
リアはおにぎりを手にする。
「これ食べたい!」
レオンは苦笑した。
「開店したらね。」
店の外。
魔王がガラス越しに中を覗いていた。
「……。」
「なんだ、あれは。」
ナルが笑顔で答える。
「フルーツサンドだよ!」
「おいしいよ!」
リアもおにぎりを見せる。
「これがおにぎり!」
「食べたかったら並んで待っててね!」
魔王は固まった。
「……並ぶのか。」
その横でレオンが笑顔で頭を下げた。
「どうも。」
「勇者一家の夫であり、精神科医のドクターレオンです。」
「あなた達が魔王ですね?」
魔王は頷く。
レオンは優しく微笑んだ。
「でも、ちゃんと順番を守ってくださいね。」
「村人さん達の方が先に並んでいますから。」
魔王軍全員が後ろを振り向く。
そこには百人以上の村人が並んでいた。
「……。」
誰一人文句を言わない。
魔王は静かに頷く。
「勇者の国の掟なら従おう。」
その時。
レオンが振り返った。
「パンダ。」
「通貨はどうする?」
パンダはニヤリと笑う。
「日本円を金貨と交換するにゃ!」
魔王軍と村人達は同時に首をかしげた。
「日本円?」
「金貨?」
「交換?」
パンダは満面の笑みで言った。
「まずは両替所を作るにゃ!」
取り敢えずの営業は、異世界の金で取引する事になった。
一銅貨100円。一銀貨千円。一金貨一万円。
――異世界初のコンビニ、その開店まであと五分。




