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リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画  作者: ヘタレパンダ


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第二十八話 天才フェレット・フェイ太郎


 ポルガンはコンビニでの買い物を終えると、店の前の広場へ向かった。


 大勢の客が休憩できるように、広場には臨時の椅子とテーブルが並べられている。


 ポルガンは空いている椅子に腰掛け、念願だったアイスの袋を開けた。


 パリッ。


 香ばしいモナカの皮をかじると、中から冷たいバニラアイスと板チョコが現れる。


「……美味い」


 ポルガンは目を見開き、もう一口かじった。


 モナカの軽い食感。


 口の中で溶けるアイス。


 そして、パリパリとしたチョコレート。


 そこへパンダが近づいてきた。


「美味いかにゃ? それ、人気あるにゃよ!」


「ああ、美味いな!」


 ポルガンは満足そうに頷いた。


「並んだ甲斐がある」


「チョコモナカシャンボは、最後までチョコがパリパリなのが良いんだにゃー」


 ポルガンは夢中になって食べ続け、あっという間に最後の一口を飲み込んだ。


 そして空になった袋を丁寧に畳むと、突然マントのポケットへ手を入れた。


「そうだ、パンダ殿」


「なんにゃ?」


「お前に渡したいものがある」


 ポルガンがマントのポケットから取り出したのは、小さなセーブルフェレットの子供だった。


 茶色い毛並みの中に、目の周りだけ黒い模様が入っている。


 まるでパンダの顔を、そのまま小さなフェレットにしたような姿だった。


「にゃー!」


 パンダは思わず声を上げた。


「可愛いにゃ! パンダ顔のフェレットにゃ!」


 フェレットは眠そうに丸まったまま、ポルガンの手の上で小さく鼻を動かしている。


「俺が育てた」


 ポルガンは少し誇らしそうに言った。


「飼っているフェレットの中でも、一番俺に懐いている。雄だ」


「今日はこいつにも好きな物を買ってやろうと思って、一緒に連れて来たのだが……」


 ポルガンはフェレットを見下ろした。


「今は気分が良い」


「iPhone20 poloを貰った礼も兼ねて、パンダ殿にやる」


「えー!」


 パンダは目を輝かせた。


「お前、動物が好きなのかにゃ? 意外だにゃ!」


「異世界にもフェレットが居るのか?」


「飯は何を食うんだにゃ? やっぱりフェレットフードなのかにゃ?」


「質問が多いな」


 ポルガンは苦笑した。


「その前に、こいつへ首輪を着けてやろう」


 ポルガンはマントの内側から、小さな首輪を取り出した。


 首輪の中央には、不思議な光を放つ透明な宝石が取り付けられている。


「この宝石は特殊な物だ」


「名だたる魔導士達を集め、特別な材料を使い、十日も掛けて造らせた」


「これを身に着ければ、人間の言葉を話せるようになる」


「人間と同じ物も食べられるぞ」


「凄いにゃあ!」


 パンダは宝石へ顔を近づけた。


「人間と同じ物を食べられて、お喋りもできるにゃか!」


「お前、ポルガン。結構良い奴なのにゃ」


「動物が好きなのかにゃ?」


「ああ」


 ポルガンは静かに答えた。


「俺は人間よりも動物が好きだ」


「動物は嘘を吐かないからな」


 いつもの偉そうな態度とは少し違う。


 その声には、穏やかな優しさが混じっていた。


「ただし、この首輪は貴重だぞ」


 ポルガンはフェレットの首へ慎重に首輪を着ける。


「正直に言えば、俺でも残りは七個しか持っていない」


「もっと欲しければ、魔導士を雇って造らせるんだな」


「必要な道具や材料をすべて揃えれば、金貨千枚ほど掛かる」


「千枚!」


 パンダはフェレットを落としそうになった。


「高過ぎるにゃ!」


「だから大切にしろ」


「着けている者の寿命まで延ばす、極めて強力な魔道具だ」


 ポルガンは自分の襟元を少し開き、同じ宝石の付いた首飾りを見せた。


「実は俺も着けている」


「人間が着けた場合は、動物の言葉が理解できるようになる」


 ポルガンは得意げに笑った。


「東京や、お前達の世界の技術も確かに凄い」


「だが、我々の世界の技術も侮れぬものだろう?」


「うんうん!」


 パンダは何度も頷いた。


「凄いにゃね、ポルガン!」


「これは日本にもない技術にゃ!」


 ポルガンからフェレットを受け取る。


 小さな体は柔らかく、ほんのりと温かかった。


「可愛いにゃー!」


「名前はフェイ太郎にするにゃ!」


「フェイは中国語でドラゴンを表すにゃ!」


「太郎は男の子って意味にゃ!」


「こいつにぴったりの名前にゃ!」


「ドラゴン太郎か」


 ポルガンは満足そうに頷いた。


「強そうで良い名前だな」


 実際の意味が正しいかどうかは、誰も確認しなかった。


「ところで、今日コンビニへ来た本当の目的は別にある」


「にゃ?」


「猫達のお気に入りだという、ニャオチュールが売られていると聞いたのだ」


「あー!」


 パンダは納得して手を叩いた。


「世界の猫族も、猫獣人もまっしぐらのニャオチュールにゃ!」


「買えたかにゃ?」


「ああ。購入制限いっぱいまで買った」


「それなら明日、コヌトコがオープンするにゃから、もっと大量に買えるようになるにゃーよ!」


「本当か!」


 ポルガンの顔が輝いた。


「猫達も喜ぶ」


 その時だった。


 ポルガンの腕の中にいたフェレットが、ゆっくりと目を開けた。


「うーん……眠いミャ」


 小さな口から、はっきりと人間の言葉が飛び出した。


「喋ったにゃ!」


 パンダはフェレットを両手で持ち上げる。


「ポルガン……お腹が空いたミャ」


「パンダの名前はポルガンじゃないにゃ!」


「パンダはパンダにゃ!」


「今からお前の飼い主になるにゃよ!」


「パンダ?」


 フェレットは首を傾げる。


「可愛らしい名前だミャ」


「よろしくミャ」


「オイラにも名前を付けてくれミャ」


「もう付けたにゃ!」


「お前の名前はフェイ太郎にゃ!」


「ドラゴン太郎という意味にゃ!」


「フェイ太郎……」


 フェレットは自分の名前を確かめるように繰り返した。


「カッコいい名前だミャ!」


「気に入ったかにゃ!」


「気に入ったミャ!」


 パンダはフェイ太郎を抱き締めた。


「よろしくにゃ、フェイ太郎!」


「よろしくミャ、パンダ!」


 その様子を見ていたポルガンは、満足そうに笑った。


 そして突然、真剣な表情で立ち上がる。


「ところで、パンダ殿」


「先ほど言っていたスライムダイエットだが……」


「にゃ?」


「俺もやってみたい」


 ポルガンは自分の腹を見下ろした。


「お前を見ていると、いつまでも腐っているのが馬鹿馬鹿しくなってきた」


「痩せて格好良くなり、俺も東京へ行ってみたい!」


「おお!」


 パンダは喜んで立ち上がった。


「良いぞ、良いぞ!」


「やる気になったにゃね!」


「ただし、その前にビフォーの写真を撮るにゃ!」


「びふぉー?」


「痩せる前の姿にゃ」


 パンダはiPhoneを取り出した。


「ポルガン、そこに立つにゃ!」


「こうか?」


「もっと背筋を伸ばすにゃ!」


「腹は引っ込めるなにゃ!」


「そのままのデブを見せるにゃ!」


「言い方というものがあるだろう!」


 パンダは気にせず、スマホのシャッターを連打した。


「良いにゃ、良いにゃ!」


「デブだにゃ!」


「良い感じに撮れてるにゃ!」


 正面から。


 横から。


 後ろから。


 上半身。


 顔のアップ。


 少し上から。


 少し下から。


 パンダは十枚以上の写真を撮影した。


「何をしているのだ?」


「写真を撮ったにゃ」


 パンダは画面を見せる。


「ほれ、これが今のお前にゃ」


「これは……」


 ポルガンは目を見開いた。


「凄いな、iPhone20 poloは」


「鏡とはまるで違う」


「身体をあらゆる方向から一瞬で記録できるのか」


「そうにゃ!」


「痩せた後にも同じように撮れば、違いが分かるにゃ!」


 もっとも、この時のパンダは、動画で撮影しておくべきだったとはまだ気付いていなかった。


「それじゃ、早速スライムの所へ行くにゃ!」


 パンダはフェイ太郎を抱えたまま歩き出す。


「なんかにゃ、あのスライム、地球のゴミを食べたからか、前より頭が良くなったみたいなんだにゃ」


「ゴミを食べて頭が良くなるのか?」


「よく分からんにゃ!」


「でも、命令を細かく理解できるようになったにゃ」


 パンダは得意げに胸を張る。


「もしかしたら、病気を治したり、切られた腕を生やしたりできる医療スライムになるかもしれないにゃ!」


「東京視察から帰ってきたら、レオンもきっと驚くにゃね!」


 ポルガンは少し不安そうに尋ねた。


「本当に大丈夫なのだろうな?」


「太ったラットは元気だったにゃ!」


「人間は俺が最初なのだろう?」


「そうにゃ!」


「やはり不安だ!」


 ◇


 一時間後。


「終わったにゃー!」


 医療研究所の扉が開く。


 中から現れたポルガンを見て、パンダは思わず口を開けた。


「おおおおー!」


 大きく膨らんでいた腹は引き締まり、丸かった顔の輪郭もすっきりしている。


 肩幅が広く、背も高い。


 余分な脂肪が消えたことで、整った顔立ちと青と緑の瞳が、より一層際立っていた。


 服は、まだ開店前のウニクロから特別に用意してもらったものだった。


 黒い細身のズボン。


 白いシャツ。


 落ち着いた色のジャケット。


 全身ウニクロなのに、驚くほど格好良い。


「メチャクチャイケメンになったにゃ!」


 パンダはポルガンの周りをぐるぐる回る。


「デビッドボーイも真っ青にゃ!」


 フェイ太郎も目を丸くした。


「ポルガン、美しいミャ」


「そうか?」


 ポルガンは自分の腕や腹を触る。


「身体が軽い」


「今なら、どこまでも走れそうだ」


「上手くできたにゃ!」


 パンダは満足そうに頷く。


「でも身体には多分負担が掛かってるにゃ」


「これからはちゃんと運動もしろにゃ!」


「食べ過ぎにも気を付けるにゃよ!」


「了解した」


 ポルガンは素直に答えた。


「この身体を維持するためなら、運動も悪くない」


「んじゃ、アフター写真を撮るにゃ!」


 パンダは再びスマホを構えた。


「前を向くにゃ!」


「次は横!」


「今度は振り返るにゃ!」


「顔だけも撮るにゃ!」


 シャッター音が次々と響く。


「良いにゃ!」


「美しいにゃ!」


「最高のビフォーアフターにゃ!」


 ポルガンもすっかり気分を良くして、次々とポーズを取った。


「レオンと深雪が帰ってきたら、きっと驚くにゃね!」


 パンダは、太っていた頃のポルガンと、今のポルガンの写真を並べて満足そうに笑った。


 まるで別人だった。


 あまりにも別人過ぎて、後にレオンから、


「こんなもの、画像詐欺にしか見えんぞ!」


 と叱られることになるとは、この時のパンダはまだ知るよしもなかった。

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