第二十話 異世界人の医学のお勉強
ドドバシカメラでの買い物を終えた異世界東京視察団。
配送伝票を書き終えたレオンは、大きく伸びをした。
「よし。」
「次は日本の医療を見に行こう。」
魔王が首をかしげる。
「病院か?」
「そう。」
「異世界にも医者はいるけど、日本とはかなり違うからね。」
深雪がマイクを握る。
「異世界東京視察団!」
「次の目的地は総合病院でーす!」
「出発進行!」
鴉バスは静かに走り出した。
◇
三十分後。
大型総合病院へ到着する。
白く大きな建物。
救急車が次々と出入りしている。
村長は目を丸くした。
「城のような病院ですな。」
レオンは笑う。
「一日に何百人もの患者さんが来るからね。」
その時、一台の救急車がサイレンを鳴らしながら到着した。
隊員達が患者を素早く運び込む。
魔王が感心する。
「速い。」
法王も頷いた。
「まるで訓練された騎士団ですな。」
レオンは説明を続ける。
「日本では病気やけがをしたら、まず病院へ来る。」
「重症なら救急車が迎えに行くんだ。」
猫獣人が手を挙げる。
「お金は?」
「あとで払う。」
「命を助けることが最優先だからね。」
法王は静かに目を閉じた。
「素晴らしい考え方です。」
◇
院内へ入ると、受付には多くの患者が並んでいた。
自動受付機。
電子掲示板。
番号で呼ばれる待合室。
エルフ達は興味深そうに見つめる。
「紙ではないのですね。」
「全部、電子化されています。」
レオンは案内する。
「診察券一枚で受付も会計もできる。」
ドワーフが機械を覗き込む。
「この箱、どういう仕組みだ?」
「コンピューターだよ。」
「後で説明する。」
◇
医療機器の見学では、MRIやCT装置を見せてもらった。
大きな機械を見た魔王は驚く。
「この中へ入るのか?」
「そう。」
「体を切らなくても中を調べられる。」
法王は感嘆した。
「まるで神の目ですね。」
レオンは笑う。
「科学の力だよ。」
◇
病院見学を終え、全員がロビーへ集まる。
深雪がカメラへ向かって話し始めた。
「今日のテーマは、日本の医療でした。」
「戦うための力じゃない。」
「助けるための力。」
魔王は静かに頷く。
「我が国にも必要だ。」
法王も続ける。
「医療は人を救う希望ですな。」
村長はメモ帳へびっしりと書き込んでいた。
「病院。」
「救急車。」
「受付。」
「待合室。」
「薬局。」
「全部、村に必要です。」
レオンは満足そうに笑った。
「焦らなくていい。」
「一つずつ作っていけばいい。」
深雪がマイクを握る。
「さて!」
「勉強したあとは、お楽しみ!」
「今日は帝王ホテルに泊まりまーす!」
異世界東京視察団から歓声が上がる。
「おおーーっ!」
魔王も法王も、エルフもドワーフも、子どものような笑顔を浮かべながら鴉バスへ乗り込んだ。
◇
鴉バスは夕暮れの街を走り抜ける。
高層ビルの間に、一際大きな建物が姿を現した。
『帝王ホテル』
魔王が思わず見上げる。
「……これも宿なのか。」
深雪は得意そうに頷く。
「日本を代表するホテルの一つだ。」
「今日はここに泊まって、日本のおもてなしを体験してもらう。」
自動ドアが開く。
広いロビー。
シャンデリア。
笑顔で迎えるホテルスタッフ。
「いらっしゃいませ。」
エルフ達は辺りを見回した。
「まるで王宮ですね。」
ドワーフはふかふかの絨毯を踏みしめる。
「床まで柔らかいぞ。」
法王は静かに微笑む。
「今日もまた、新しい学びがありそうですな。」
その夜、異世界東京視察団は、日本の「おもてなし」を初めて体験することになる。




