第十七話 国会議事堂のイケメン議員と深雪の妹
鴉バス観光の自動運転バスは、国会議事堂の正門前へ静かに停車した。
窓の外には、大勢の警備員と報道陣が待機している。
魔王が小さく呟いた。
「随分と厳重だな。」
深雪は笑った。
「日本の政治の中心だからな。」
バスの扉が開く。
そこには、背の高いハンサムな青年が笑顔で立っていた。
隣には、息をのむほど美しい女性が立っている。
青年が深雪へ向かって手を振った。
「ようこそ、異世界の皆様!」
「遠路はるばる……。」
「え?」
「千葉県から来ただけなの?」
深雪は肩をすくめる。
「まあ、そうなんだけどな。」
青年は頭をかいた。
「調子狂っちゃうなぁ。」
「まあ、いいか!」
彼の名は三角雷蔵。
国会議員であり、深雪の義理の弟でもある。
隣に立つ女性が優雅に一礼した。
「初めまして。」
「三角梅子です。」
世界的に活躍するパリコレモデルであり、雷蔵の妻。
そして深雪の妹だった。
雷蔵は深雪へ近寄る。
「なんか、中で総理も待ってるよ。」
「義理兄さん。」
深雪が目を丸くした。
「えー?」
「異世界ってバレてんの?」
雷蔵は苦笑する。
「あれだけ珍しい資源鉱石を日本へ輸出しておいて、秘密にできると思う?」
「義理兄さんは相変わらず大雑把なんだから。」
深雪は頭をかいた。
「そっかぁ。」
「異世界産の資源だけで、一兆円規模の取引になっちゃったもんな。」
「日本も大喜びだよな。」
その時だった。
梅子の視線がエルフ達へ向く。
「お兄ちゃん。」
「異世界のルポ番組、今すごく人気なんだって!」
「……って。」
「なに、この美しい生き物!」
「パリコレもびっくりの美人集団!」
「誰なの?」
先頭の金髪エルフが一歩前へ出る。
「異世界のコンビニ店員リーダーを務めております。」
「本日はよろしくお願いいたします。」
続けて微笑む。
「あなたも、とても美しいですね。」
「そのお召し物も素敵です。」
梅子は嬉しそうに頬を押さえた。
「分かる?」
「今日は異世界のお客様をお迎えするって聞いたから、イタリアのデザイナーさんにお願いして急いで取り寄せてもらったドレスなの。」
銀髪エルフが目を輝かせる。
「生地の光沢が、とても美しいです。」
黒髪エルフも頷く。
「縫製も素晴らしいですね。」
梅子は笑顔になる。
「ありがとう!」
「今度、あなた達にもドレスをプレゼントしたいな。」
エルフ達も笑顔で頭を下げた。
「ありがとうございます。」
雷蔵が手を叩く。
「では皆さん。」
「まずは総理にお会いください。」
「日本で一番偉い人がお待ちです。」
◇
総理大臣応接室。
視察団四十名と、雷蔵、梅子が案内される。
部屋へ入ると、女性総理大臣が立ち上がった。
「ようこそ、日本へ。」
「皆様が異世界から届けてくださった資源のおかげで、日本の産業は大きな前進を遂げています。」
「心より感謝申し上げます。」
法王が一礼する。
「こちらこそ、勇者様の国の技術に感謝しております。」
魔王も静かに頷いた。
「互いに利益があるなら、それが一番だ。」
短い懇談が行われた。
資源。
技術。
物流。
今後の協力体制。
和やかな雰囲気のまま話し合いは進み、双方は友好関係を深めることで一致した。
総理は最後に笑顔で言った。
「本日はどうぞ、日本を存分に楽しんでください。」
「ありがとうございます。」
一同が揃って頭を下げる。
こうして国会議事堂の視察は、滞りなく終了した。
バスへ戻った深雪がマイクを握る。
「次の目的地!」
「昼飯!」
「スジロウだ!」
その瞬間。
猫獣人が立ち上がった。
「待ってました!」
魔王も笑う。
「回る寿司というものを、この目で見てみよう。」
法王も頷く。
「異世界初の回転寿司ですな。」
鴉バス観光は静かに走り出す。
向かう先は、異世界一行が最も楽しみにしていた昼食会場――スジロウだった。




