第十六話 鴉バス観光の東京視察ツアー
翌朝。
千葉県にあるレオン邸宅の前へ、一台の大型観光バスが静かに到着した。
車体には大きく書かれている。
『鴉バス観光』
西暦2031年。
水素と太陽光を利用したクリーンエネルギーの自動運転観光バスである。
深雪は満足そうに頷いた。
「予定どおりチャーター完了!」
「今日から異世界東京視察ツアーの始まりだ!」
一方、リア、ナル、桜子の三人は、まきと一緒に玄関に立っていた。
まきが優しく声を掛ける。
「今日は大人がお勉強の日だからね。」
「みんなは幼稚園へ行こう。」
リアは少し残念そうに頷く。
「帰ったらお土産ね!」
ナルは元気よく叫ぶ。
「アイス!」
桜子も負けじと手を挙げる。
「おすし!」
パンダは三人の頭を撫でた。
「ちゃんと良い子にしてるにゃよ。」
「終わったら『ドコデモゲート』で迎えに来るにゃ。」
まきは笑顔で頷く。
「異世界へも送迎するから安心して。」
三人は元気よく手を振った。
「いってらっしゃーい!」
観光バスには、深雪とレオン、カメラマン一名、そして異世界からの視察団三十五名が乗り込む。
魔王。
法王。
村長。
ドワーフ三名。
猫獣人二名。
エルフ八名。
ダークエルフ。
商人。
鍛冶職人。
その他、各分野の代表者達。
全員が新品のスーツ姿だった。
魔王は窓の外を見ながら呟く。
「ここが東京なのか?」
レオンは笑って首を振る。
「いや。」
「ここは千葉県。」
「俺とパンダの邸宅の一つだ。」
「一番広い家だから、物流の拠点にしている。」
庭には四トントラックが何台も並んでいる。
大型倉庫。
資材置き場。
ドコデモゲート。
異世界への物流基地そのものだった。
「この広さがないと、物資運搬のトラックが入れなくてね。」
魔王は納得したように頷く。
「勇者も物流には勝てぬか。」
その時、深雪がマイクを持って立ち上がった。
「はい、皆さん注目!」
車内が静かになる。
「日本では今、『異世界はちゃめちゃライフ』ってテレビ番組が大人気なんだ。」
「お前達は、その番組に出演する異世界人役のコスプレ集団って設定だからな。」
猫獣人が首をかしげる。
「私は本物なんだが。」
「その方が説明が楽なんだ。」
深雪は笑った。
「だから街で写真を頼まれても、怒るなよ。」
「礼儀正しくな。」
魔王が真面目な顔で頷く。
「了解。」
法王も微笑む。
「民に迷惑を掛けぬよう努めましょう。」
エルフ達も揃って返事をする。
「承知しました。」
ドワーフも拳を上げた。
「分解したくなっても我慢する。」
「それが一番心配なんだよ。」
レオンが苦笑した。
深雪は今日の予定を大型モニターへ映し出す。
「今日のコースはこれ!」
「最初は国会議事堂!」
「昼食はスジロウ!」
「食べ終わったら午後の視察へ向かう!」
魔王が手を挙げる。
「支払いはどうする?」
深雪は笑顔で答えた。
「スマホだ。」
「PaynPaynで払え!」
「使い方は覚えたよな?」
全員がスマホを掲げる。
「覚えましたー!」
深雪は満足そうに親指を立てた。
「よし!」
「では異世界東京視察団!」
「出発進行!」
自動運転バスは静かに動き出した。
窓の外では、千葉の街並みがゆっくりと流れ始める。
魔王も法王も、エルフもドワーフも、まるで遠足へ向かう子どものように目を輝かせていた。
その頃――。
異世界ではパンダが一人、コンビニ九店舗、コヌトコ一号店、ウニクロ一号店、ワーキュマン一号店の同時オープン準備に追われていた。
「レオンが居ない間に全部開店させるにゃー!」
異世界と地球。
二つの世界で、忙しい一日が始まろうとしていた。
天才パンダも働いてるにゃー
ヘタレパンダは給料月五万。
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