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リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。そんなに全削除して欲しいですか?  作者: ヘタレパンダ


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第120話 新潟物語でコスプレしよう



――精神と時の空間。


魔道具工房。


「…………」


カリカリ。


「…………」


カリカリ。


「…………」


カリカリ。


三人の前には、大量の魔石が積み上げられていた。


やることは単純。


魔石を一定の大きさに加工し、表面を磨き、規定された量の魔力を流し込む。


それをひたすら繰り返す。


ただし――。


少しでも大きさが違えば駄目。


削り過ぎても駄目。


魔力の量が多くても少なくても駄目。


単純作業のくせに、要求される精密度だけは異様に高い。


当然ながら。


魔道具班でも屈指の不人気作業だった。


そして今日は、人手が足りない。


「仕方ないですね。俺達もやりましょうか」


ポルガンの一言で。


ポルガン。


真央。


リリー。


三人まで魔石加工に駆り出されることになった。


「…………」


カリカリ。


「…………」


カリカリ。


「…………」


ポリポリ。


リリーの手が止まった。


「……真央」


「んー?」


真央は返事をした。


目はタブレットから離れない。


画面では、U-NEXTで『新潟物語』が流れている。


そして右手には魔石。


左手にはバーベキュー味のポップコーン。


魔石。


ポップコーン。


映画。


魔石。


ポップコーン。


映画。


明らかに仕事の優先順位がおかしい。


「真央。手、止まってるよ」


リリーが優しく注意した。


「止まってないわよ」


「止まってるよ」


「ちゃんとやってるわよぉ」


「さっきから同じ魔石をずっと持ってるじゃないか」


「…………」


真央がようやく手元を見る。


「あら、本当」


「もう……」


リリーが溜息をついた。


一方。


ポルガンは何も言わない。


黙々と魔石を削り続けている。


真央は再び映画を見る。


そして突然。


リリーの顔をジーッと見た。


「……なに?」


「苺」


「は?」


「リリーって苺よね」


「何言ってるの?」


「真央が百子」


「は?」


真央は楽しそうにポップコーンを口へ放り込んだ。


「ポルガン君が米農家のヤンキー、りゅうじ」


ポルガンの手が止まった。


「俺ですか?」


「そう!」


「ちょっと待ってよ」


リリーが映画と真央を交互に見る。


嫌な予感がする。


真央はさらに言った。


「それでママがあきこ!」


「…………」


リリーが固まった。


ポルガンも固まった。


ママ。


つまり――ミカエラである。


「真央」


「なあに?」


「りゅうじとあきこって結婚するんだよ。意味分かって言ってるの?」


「あくまで配役の話よ」


真央はケロッとしている。


「本当にそうなることを望んでるわけじゃないわ。そんなことになったら、ポルガン君、パパに八つ裂きにされちゃうんだから」


真央が笑いながら、バーベキュー味のポップコーンを口に入れる。


ポルガンの顔が引き攣った。


「ランスロット様に八つ裂きにされる役は、演じたくないかもしれません」


「駄目よぉ」


真央がポルガンを見る。


「りゅうじは苺ちゃんの初恋の相手なのよぉ。お願いポルガン君、コスプレしてよぉ」


ポップコーンの袋をわしゃわしゃ鳴らす。


「真央、百子のコスプレしたい! みんなで新潟物語のコスプレしたいな!♡」


ポルガンが苦笑する。


「この前までセーラーヌーンにハマってましたよね」


「そうだっけ?」


「真央さんがみっちで、リリーがはる。俺がシルクハット仮面」


「あれ楽しかったわね!」


「キーキーちゃん達まで乗り気になって、ガメラのキタムラで写真集作りましたよね。結構高かったのに、デジタルデータ付きで売れまくってたみたいですけど」


「当然よ! みんな可愛かったもの!」


リリーの眉がピクピク動く。


「本当、付き合わされる方の身にもなれよな」


魔石を削りながら、真央を見る。


「聞いてるかい? 真央」


「んー、なーに?」


真央がポップコーンの袋を差し出した。


「苺もポップコーン食べたいの?」


「苺って呼ぶな!」


リリーが立ち上がった。


「僕の名前はリリーだ! 真面目に魔石作れ! 聞いてるのか真央!」


「聞いてるわよぉ」


「なんか言ってやりなよポルガン!」


リリーがポルガンを見る。


「許嫁なんだろ!」


ポルガンが顔を上げた。


「俺がその分魔石作るから、リリーと真央は新潟物語やってていいよ」


「やったぁ!」


真央が両手を上げる。


「ポルガン君優しい! 大好きよ!」


「甘い!」


リリーが叫んだ。


「甘すぎるよポルガン! もう少しビシッと言ってやれよ! ポルガン一人じゃ大変な作業だろ?」


「んー」


ポルガンは魔石を一つ摘まみ上げた。


削る。


確認する。


魔力を流す。


完成。


次。


「俺は割と、黙々と単調な作業繰り返してても楽しいけど」


「楽しいの!?」


「はい」


ポルガンが笑った。


「リリーと真央も、本当は嫌なのに頑張ってくれただろ。それだけで嬉しいよ」


「…………」


リリーの目が潤んだ。


「ポルガーン」


「なんですか?」


「お前、人間が出来すぎてるよー」


「そうですか?」


だが。


感動しているリリーの横で。


真央だけは不満そうだった。


「でも駄目なの」


「何がですか?」


「ポルガン君は、りゅうじやってくれないと真央は嫌なの!」


「真央! 我儘言わない!」


リリーが叱る。


ポルガンは少し考えた。


目の前に残っている魔石を見る。


「仕方ないですね」


「え?」


「それじゃあ、あと三個終わったら、キーキーさんのところに三人で行きますか!」


真央の顔が輝いた。


「やった!!」


ポルガンに抱きつく。


「大好きポルガン君!!」


「はいはい」


「…………」


リリーが二人を見る。


そして。


「お前は百子じゃなかったのか?」


「え?」


「なんで、りゅうじに惚れてんだよ?」


「それとこれとは別よ!」


「何が別なんだよ!」


――一時間後。


キーキーちゃんの衣装部屋。


「出来た!!」


真央が歓声を上げた。


最初に出てきたのはポルガンだった。


青い特攻服。


先の尖ったエナメルの靴。


そして――。


前へ向かって天高くそびえ立つ、巨大なリーゼント。


「…………」


リリーが固まった。


「これ、本当に俺なんですか?」


ポルガンが真顔で聞く。


「ぶっ……!」


リリーが吹き出した。


「あはははははは!! ポルガン! 何だよその頭!!」


「そんなに笑わなくても……」


ポルガンが巨大なリーゼントを気にして触ろうとする。


「触っちゃ駄目! りゅうじなんだから!」


真央は改めてポルガンを上から下まで眺める。


「うん! やっぱりポルガン君は何着てもカッコいい!」


百子そっくりのフリフリのロリータ服に着替えた真央が、その手を叩いた。


「完璧よ、ポルガン君!」


「真央さんは楽しそうですね……」


「当たり前よ!」


「というか」


リリーが笑い過ぎて目尻の涙を拭う。


「お前、さっきまで工房で黙々と魔石作ってた奴と同一人物に見えないぞ」


「俺だって好きでこの格好してるわけじゃないですよ!」


「りゅうじ!」


「ポルガンです!」


「りゅうじ!」


「はいはい、りゅうじでいいです!」


「諦めるの早っ!」


そしてリリー自身も、黒い口紅と細い眉の苺をイメージしたヤンキーファッションへ。


「……僕、これ着るの?」


「着るの!」


「絶対?」


「絶対!」


「はぁ……」


ところが着替えて出てきた途端。


「おお! リリー、似合いますね」


ポルガンが素直に褒めた。


「うるさいよ、リーゼント」


「名前で呼んでくださいよ!」


そこへミカエラがやって来た。


「真央、何やって――」


ミカエラの足が止まった。


巨大なリーゼントを見る。


「…………ポルガン?」


「はい」


「何、その頭」


「俺に聞かないでください」


「ママ!」


真央の目が輝く。


「ちょうど良かった! ママはあきこ!」


「嫌な予感しかしないんだけど」


――三十分後。


白い特攻服に身を包んだミカエラが立っていた。


「…………」


ポルガンが見る。


リリーが見る。


真央が見る。


「ママ、格好いい!!」


「でしょう?」


ミカエラがまんざらでもなさそうにポーズを決める。


リリーが笑う。


「なんでミカエラ様は普通に似合うんだよ!」


「リリー、それ褒めてる?」


「多分!」


「ところでママ」


真央がニコニコしながら言った。


「あきこは、りゅうじと結婚するの」


ミカエラが止まる。


青い特攻服に巨大リーゼントのポルガンも止まる。


「…………誰と?」


「ポルガン君」


「真央さん!!」


「配役! 配役だから!」


リリーが慌てて割って入る。


その瞬間。


ガチャ。


「ミカエラ、ここにいたのか」


ランスロットが入ってきた。


「…………」


ランスロットが室内を見る。


百子。


苺。


りゅうじ。


あきこ。


そして一眼レフを構えるキーキー。


「何をしている?」


真央が元気よく答えた。


「新潟物語ごっこ!」


「そうか良かったな」


「ママとポルガン君、夫婦役なの!」


「真央さん!!」


ポルガンの悲鳴が響いた。


ランスロットがポルガンを見る。


「…………」


「違いますからね!?」


「…………」


「俺が望んだ配役じゃありませんからね!?」


ランスロットはしばらく黙っていた。


やがて。


「その新潟物語とやらを我にも見せろ」


「パパも見る!?」


「ああ」


「やったぁ!」


真央がタブレットを取り出す。


ポルガンが胸を撫で下ろした。


「助かった……」


リリーが肩を叩く。


「良かったな、りゅうじ」


「やめてくださいよ!」


「ポルガン君!」


真央が振り返る。


「なに?」


「キャレットポップコーン持ってきて!」


「まだ食べるんですか!?」


「苺ミルク味!」


「はいはい」


ポルガンは笑いながら部屋を出ていった。


リリーがその背中を見送る。


「……本当に甘いな、あいつ」


「そこがいいのよ」


真央が笑う。


そして数時間後。


魔道具工房。


「…………」


リリーは完成した魔石の山を見上げていた。


「ポルガン」


「はい?」


「残りのこれ……ほんとに一人で作ったの?」


「はい」


「大変だっただろ?」


「いや」


ポルガンは次の魔石を手に取る。


カリカリ。


「結構、楽しかったですよ」


「…………」


リリーは呆然とする。


「化け物かよ」


「なんでですか!」


工房に笑い声が響いた。




真央

優柔不断なところを除いたら。

ポルガン君って、最高の旦那様よね♡

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