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リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。そんなに全削除して欲しいですか?  作者: ヘタレパンダ


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第116話 娘娘、働くミャ!



2031年11月30日 日曜日。

ポルガンの誕生日まで、あと1ヶ月と10日。


精神と時の空間

285日目。

時の間に居られる時間、あと169日。


――精神と時の空間・休憩所。


「楽しかったミャー!」


 娘娘がポルガンの膝の上で、両手を大きく広げた。


「エオンモールも凄かったミャ! そこうも凄かったミャ! お菓子いっぱいあったミャ! いい匂いもいっぱいあったミャ!」


「香水ですね」


「そうミャ!」


 プレオープンから四日。


 娘娘は毎日のように二つの巨大商業施設へ遊びに行っていた。


 それでも、まだ飽きていないらしい。


「まだ見てない店もあるミャ」


「四日も行ったのにですか?」


「広すぎるミャ!」


 ポルガンは笑った。


「そんなに好きなら、働いてみますか?」


「ミャ?」


 娘娘が振り返る。


「エオンモールか、そこうデパートで」


「働く?」


「はい。店員として」


 娘娘は目を丸くした。


「働いたら……毎日、お店見れるミャね?」


「まあ、仕事中ずっと見て回るわけにはいきませんけど」


「お給料も貰えるミャ?」


「もちろんです」


 娘娘の耳がピンと立つ。


「そしたら、そのお金でプロメテーウス様に好きなものも買えるミャね?」


「買えますよ」


「娘娘、働くミャ!」


「早っ!」


 即決だった。


「どっちで働きたいです?」


「そこう!」


「そこも即決!?」


「香水あるミャ! お菓子あるミャ! 綺麗な服もあるミャ!」


「なるほど……」


 娘娘はポルガンの膝から飛び降りた。


「プロメテーウス様に言ってくるミャ!」


「今からですか?」


「今からミャ!」


 そして娘娘は、ものすごい勢いで休憩所から飛び出していった。


「……元気だなあ」


 ポルガンは苦笑した。


 ――異世界。


 罪の大岩。


「プロメテーウス様ー!」


 娘娘の声が響いた。


「娘娘か」


 巨大な岩を背負ったプロメテーウスが、ゆっくり顔を上げる。


 長く伸びた髪。


 長い髭。


 伸びきった爪。


 何千年という時間が、その姿に刻み込まれていた。


 しかし今日は、娘娘一人ではない。


 後ろには龍十二兄弟の十番と十一番。


 そして――。


「よっ」


 フリルたっぷりのロリータ服を着た誠也が立っていた。


 プロメテーウスが誠也を見る。


「……その服は何だ」


「気にすんな」


「気になる」


「似合ってるだろ?」


「それは否定しないが」


「ならいいじゃん」


 娘娘がパンパンと手を叩いた。


「今日はプロメテーウス様を綺麗にするミャ!」


「俺を?」


「そうミャ!」


 十番と十一番が前へ出る。


「父上。岩を代わります」


「大丈夫なのか?」


「はい」


 二人が罪の大岩へ手を伸ばす。


 プロメテーウスの代わりに、その重みを受け止めた。


「……ん?」


 十番が首を傾げる。


「どうした?」


「いや……」


 十一番も不思議そうな顔をする。


「以前代わった時より、随分軽いですね」


「やはり、お前もそう感じるか」


「はい」


 二人は顔を見合わせた。


 理由は分からない。


 だが確かに。


 かつて背負った時とは比較にならないほど、罪の大岩は軽くなっていた。


「まあいいミャ!」


 娘娘がプロメテーウスの腕を引っ張る。


「今のうちミャ!」


「どこへ行く?」


「お風呂ミャ!」


「風呂?」


「まず風呂!」


 誠也が笑った。


「諦めろ。今日は徹底的にやるぞ」


「何をだ?」


「身だしなみ」


「……俺に必要なのか?」


「必要だ」


「即答だな」


「何千年伸ばしてんだよ、その髪と髭」


 プロメテーウスは自分の髭を触った。


「数えてはいない」


「でしょうね」


 娘娘が背中を押す。


「行くミャ!」


「分かった、分かった」


 ――しばらく後。


「…………」


 プロメテーウスは湯船に浸かっていた。


「これは……」


「どうミャ?」


「気持ちがいい」


「そうだろ?」


 誠也が浴室の外から答える。


「久しく入っていなかった」


「久しくどころじゃねえだろ」


「何千年ぶりだろうな」


「スケールがでかすぎるんだよ」


 十分に体を温め。


 髪を洗い。


 髭を洗い。


 長い年月で絡みついた汚れを落としていく。


 風呂から上がる頃には、それだけでも随分印象が変わっていた。


「じゃ、次」


「まだあるのか?」


「これからが本番だ」


 誠也がハサミを取り出した。


「座れ」


「お前が切るのか?」


「任せろ」


「少々不安だ」


「失礼な」


 ジョキ。


 ジョキ。


 長く伸びた髪が床へ落ちていく。


 続いて髭。


「おお……」


 娘娘が目を輝かせる。


「プロメテーウス様、顔出てきたミャ!」


「元々あった」


「見えなかったミャ!」


「そうか……」


 最後に誠也が日本の爪切りを取り出す。


「手」


「これで何をする?」


「爪切るんだよ」


「この小さな道具で?」


「日本の爪切りを舐めんな。これは分厚い爪も切れる特注仕様だ。握力は必要だがな」


 パチン。


「おお」


 パチン。


「これは便利だな」


「だろ?」


「痛くない」


「普通は痛くねえよ」


 手の爪。


 足の爪。


 一つずつ丁寧に整えていく。


 そして最後に。


「服ミャ!」


 娘娘が用意していた服を広げた。


 清潔で、上質な生地の服。


 派手すぎず。


 しかしプロメテーウスの堂々とした体格によく似合う。


「俺がこれを?」


「着るミャ!」


「……分かった」


 数分後。


 娘娘は言葉を失った。


「…………」


「どうした?」


「プロメテーウス様……」


「何だ?」


「すっごく綺麗ミャ」


 何千年もの間、罪の大岩を背負い続けていた男。


 その髪が整えられ。


 髭が整えられ。


 顔がはっきりと見える。


 威厳のある、美しい男だった。


 誠也も腕を組む。


「やっぱ素材が良かったな」


「素材?」


「元がいいって意味」


「そうか」


 プロメテーウスは少し照れたように髪へ触れた。


 娘娘が嬉しそうに笑う。


「そうだミャ!」


「ん?」


「娘娘、働くことにしたミャ!」


「働く?」


「そこうデパートで働くミャ!」


「百貨店という場所か?」


「そうミャ!」


 娘娘は胸を張った。


「お給料貰うミャ!」


「そうか」


「そしたらプロメテーウス様にも、娘娘のお金で好きなもの買ってあげるミャ!」


「…………」


 プロメテーウスの表情が変わった。


 驚いたように娘娘を見つめる。


 そして。


 ゆっくりと、穏やかな笑みを浮かべた。


「そうか」


「うんミャ!」


「働くのか」


「働くミャ!」


「立派だな」


「ミャ!」


 褒められた娘娘が嬉しそうに笑った。


「そうだ!」


 突然、娘娘が声を上げる。


「プロメテーウス様も、そこう行ってみたらどうミャ?」


「俺が?」


「そうミャ!」


 プロメテーウスは少し考えた。


「行ってみたい」


「ミャ!」


「だが――」


 罪の大岩の方を見る。


「十番と十一番が岩を背負うのはきついだろう」


 十番が首を振った。


「大丈夫ですよ、父上」


「しかし」


「以前代わった時より、何故かは分かりませんが、全然軽いです」


 十一番も笑う。


「そうですよ。とても軽いです、父上」


「……そうなのか?」


「はい。それに私達もプレオープンには招待されたんですし」


 十一番は続けた。


「訓練の方も進んでいます。我々二人が三日間くらい抜けても、支障は出ないはずです」


 十番も頷く。


「たまには楽しんできてください」


「…………」


 プロメテーウスは二人を見た。


 自分の愛する息子と娘。


「すまない」


「父上」


「そういう時は、ありがとうでいいですよ」


「……そうか」


 プロメテーウスが微笑む。


「ありがとう」


 誠也が立ち上がった。


「俺も行ってみたいし、娘娘と一緒に案内するぜ」


 フリフリのスカートが揺れる。


 プロメテーウスは、また誠也を見る。


「本当にその格好で行くのか?」


「行くよ」


「そうか」


「何だよ」


「いや。似合っている」


「だろ?」


「そこは喜ぶのだな」


「当然」


 娘娘がプロメテーウスの手を取った。


「じゃあ行くミャ!」


「では――」


 プロメテーウスが頷いた。


「行ってみるとするか」


 ――そこうデパート。


「…………」


 入口に立ったプロメテーウスが、動かなくなった。


「どうしたミャ?」


「いや……」


 明るい。


 人が笑っている。


 美しい服が並んでいる。


 甘い香りが漂う。


 見たこともない食べ物。


 宝石。


 香水。


 菓子。


 そして、楽しそうに買い物をする人々。


「ここが……百貨店」


「そうミャ!」


「凄いだろ?」


 誠也が笑う。


「時間ないから、今日はここだけな」


「ああ」


「まず何見るミャ?」


「俺には分からん」


「じゃあ娘娘が案内するミャ!」


「頼む」


 娘娘がプロメテーウスの手を引く。


「こっちミャ!」


 最初は服。


「これは俺には派手ではないか?」


「似合うミャ!」


 次は靴。


「こんなに種類があるのか」


「あるミャ!」


 次は菓子。


「これは食べ物なのか?」


「食べ物ミャ!」


「宝石ではなく?」


「チョコレートミャ!」


 次は香水。


「これは……」


「いい匂いするミャ!」


「本当だな」


 そしてデパ地下。


 プロメテーウスは、何度も足を止めた。


 一つ一つ。


 何もかも珍しい。


 娘娘が笑う。


 誠也が笑う。


 店員が笑顔で商品を渡してくれる。


 誰も自分を責めない。


 誰も石を投げない。


 誰も罪を数えない。


「…………」


「プロメテーウス様?」


 娘娘が顔を覗き込んだ。


 プロメテーウスの頬を、一筋の涙が流れていた。


「どうしたミャ!?」


「いや……」


 プロメテーウス自身が驚いたように、涙へ触れる。


「楽しいのだ」


「ミャ?」


「こんなに楽しいのは――」


 店内を見回す。


「何千年ぶりだろう」


 誠也は少しだけ黙った。


 そして、笑った。


「これからきっと、もっと楽しくなるさ」


「…………」


「今までの分もな」


 プロメテーウスが誠也を見る。


 娘娘も大きく頷いた。


「そうだミャ!」


 そして。


 娘娘はプロメテーウスの手を握った。


「これからいっぱい楽しいことするミャ」


「ああ」


 大きな手が。


 娘娘の小さな手を、ぎゅっと握り返す。


「案内するミャ!」


「頼む」


 三人は再び歩き出した。


 明るい店内を。


 何千年もの間、罪だけを背負ってきた男が。


 初めて自分のために買い物を楽しみながら。


 娘娘と手を繋いで――。


 ゆっくりと。


誠也です

プロメテーウス、メチャクチャ喜んでたな。

ただの買い物で泣いて喜ぶなんて可哀想だな、

プロメテーウス様。

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