第十二話 レオン、シムシティ頑張る
異世界東京視察団の出発まで、あと三日。
その頃、泉の森では――。
ドドドドドドドッ!
ブルドーザー。
ショベルカー。
クレーン車。
四トンダンプ。
日本から持ち込まれた重機が、森の中を走り回っていた。
ヘルメットを被ったレオンが、大きな地図を広げる。
「道路は幅十二メートル。」
「歩道も作る。」
「上下水道も整備。」
「街路樹も植える。」
まるで都市開発ゲームのようだった。
パンダは高台から工事を眺めながら手を振る。
「レオン!」
「泉の森開発は任せたにゃー!」
「シムシティ作る気で、しっかりやるにゃーよ!」
レオンは振り返り、親指を立てる。
「任せろ!」
その直後だった。
「序でにビル建てて!」
「ホテルも三軒くらい造るにゃ!」
レオンの笑顔が消えた。
「……まだあるの?」
パンダは止まらない。
「買い物に来た人達が、ゆっくり休めるようににゃ!」
「高級ホテル!」
「その名も帝王ホテルにゃ!」
魔王が首をかしげる。
「帝王ホテル?」
法王も興味を示す。
「王族も泊まれる宿でしょうか。」
パンダは胸を張る。
「もちろんにゃ!」
「スイートルームも造るにゃ!」
「温泉付き!」
「展望レストラン付き!」
「会議室付き!」
レオンはメモを書きながら呟く。
「ホテル三棟……。」
「まだ増える予感しかしない。」
その予感は当たった。
「あと!」
「ビジネスホテルも建てるにゃ!」
「庶民用の宿場も造るにゃ!」
レオンは天を仰ぐ。
「そう来たか……。」
「了解。」
「ビジネスホテルと言ったら、アバホテルだな。」
「……って!」
「これ以上仕事増やすな、パンダ!」
「怒るぞ!」
パンダは全く反省しない。
「そう言うなにゃ。」
「泉にシムシティの名人二十人発注してやるから。」
レオンの目が輝く。
「そうしてくれ。」
「都市計画の専門家なら大歓迎だ。」
その時、泉が青白く光った。
文字が浮かび上がる。
『都市計画技師 二十名 承りました』
レオンが思わずガッツポーズをした。
「ありがとう、泉!」
深雪はその様子を撮影している。
「医者が都市開発ゲームやってるぞ。」
「タイトルは『レオンシムシティ』だな。」
テレビスタッフも笑う。
「視聴率取れそうです!」
その頃。
東京視察団の参加者達は、異世界初の外貨両替所に集まっていた。
係員のエルフが説明する。
「東京へ行かれる方は、こちらで金貨を日本円へ両替してください。」
魔王は袋いっぱいの金貨を置いた。
「全部頼む。」
法王も袋を差し出す。
「こちらもお願いします。」
ドワーフは巨大な鉱石を机へ置く。
「これは売れるか?」
パンダが鉱石を眺める。
「金貨も良いけど、鉱石ならもっと歓迎されるにゃ。」
「レアメタルとかあるかにゃ?」
レオンが工事をしながら叫ぶ。
「日本で採れない金属なら高く売れるかもしれないぞ!」
パンダは指を折りながら考えた。
「例えば……。」
「タングステン。」
「モリブデン。」
「コバルト。」
「ニッケル。」
「チタン。」
「包丁や工具、機械に使う金属は喜ばれるにゃ。」
ドワーフ達の目が輝いた。
「それなら山ほどあります!」
「採掘は我々の得意分野です!」
魔王軍の兵士も手を挙げる。
「魔王城の地下にも珍しい鉱石があります。」
「売っても構わないか?」
パンダは満面の笑みになった。
「大歓迎にゃ!」
「東京で換金して、日本の物をいっぱい買ってくるにゃ!」
深雪が笑う。
「これ、異世界と地球の貿易が始まった瞬間じゃないか?」
法王は頷く。
「我々の世界の資源と、勇者様の世界の技術。」
「互いに利益がありますな。」
その頃、レオンは工事現場で図面を広げていた。
「ホテル街完成。」
「商店街建設開始。」
「駐車場整備。」
「バスターミナル予定地確保。」
「次は病院だ。」
パンダが後ろからひょっこり顔を出す。
「レオン。」
「なんだ?」
「映画館も欲しいにゃ。」
「あと水族館。」
「動物園。」
「植物園。」
「美術館。」
「博物館。」
レオンはゆっくり振り返った。
「……。」
「まだ増えるの?」
パンダは笑顔で頷く。
「もちろんにゃ!」
レオンは深くため息をついた。
「もうシムシティじゃない。」
「都市開発無双だ。」
その時、泉が再び光る。
『都市開発専門家 二百名に増員しますか?』
レオンは両手を合わせた。
「お願いします!」
泉の文字がゆっくり変わる。
『承りました』
次の瞬間、泉から二百人の都市開発技師が現れた。
全員がヘルメットを被り、設計図を抱えている。
「本日より配属されました。」
「道路担当です。」
「上下水道担当です。」
「建築設計担当です。」
「造園担当です。」
レオンは感動して涙ぐんだ。
「これなら終わる……。」
パンダはニコニコしながら親指を立てた。
「働け! レオン!」
レオンも笑い返した。
「もう働いてる!!」
泉の森では今日も重機の音が鳴り響く。
勇者一家の異世界日本化計画は、もはや街づくりを超え、一つの巨大都市建設へと進化していた。
働け、レオン!
リア充のレオン、嫁にこき使われる。
レオンを可哀想だと思う人、イイね、コメントなどお待ちしております。




