↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。そんなに全削除して欲しいですか?  作者: ヘタレパンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/138

第104話 高気圧兄弟参上!



 精神と時の空間――。


 レオンは休憩スペースへ向かいながら、妙な違和感を覚えていた。


「……なんか精神と時の空間、今日やけに寒くない?」


 腕をさすりながら、隣を歩いていた橘に尋ねる。


「ああ、高気圧兄弟が魔法修行に来てますから」


「高気圧兄弟?」


「西川さんと松岡さんですよ」


「ああ、あの噂の二人か」


 レオンはあっさり納得した。


「なんでも二人とも、魔法も習ってない頃から台風を発生させちゃってたらしくて。魔力の制御方法を習いたいって、俺に直接アクセスしてきたんですよ」


「へえ」


 レオンは感心したように頷いた。


「あー、そうなのね。魔力の制御できるようになるといいね。こっちの世界には凄い魔道具もあるしね」


「そうですね。今は訓練場で基礎から習ってるはずです」


「なら大丈夫でしょ」


 二人はそのまま廊下を歩いていった。


 ――その時。


 ゴォォォォォォォォォ!!


「うわっ!」


 突然、猛烈な風が吹き抜けた。


 レオンの青いジャケットが翻り、橘の髪が一瞬でぐしゃぐしゃになる。


「…………」


「…………」


 レオンはゆっくりと風が吹いてきた方向を見た。


「……今の何?」


「たぶん、高気圧兄弟ですね」


「まだ制御できてないじゃん!」


「だから習いに来たんですよ」


「いや、そうだけど!」


 レオンは乱れた髪を直しながら、訓練場の方へ向かった。


     ◇ ◇ ◇


 訓練場では、西川と松岡が並んで魔力制御の練習をしていた。


 二人の周囲だけ、明らかに空気がおかしい。


 風が渦を巻き、雲がものすごい速度で流れ、気温まで上下している。


 離れた場所では、訓練生たちが必死に帽子を押さえていた。


「…………」


 レオンが足を止める。


「どうしました?」


 橘が尋ねた。


 レオンは二人をじっと見つめた。


 魔力を感じ取っているらしい。


 数秒後。


「……パワー強すぎなんだよ、彼奴ら!」


「そうなんですか?」


「魔力値、僕を超えてそう」


「それは凄いですね」


「凄いですね、じゃないよ!」


 その瞬間。


「よし! もう一度いきます!」


 松岡が気合を入れた。


「もっと集中してみよう」


 西川も魔力を練り上げる。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。


 空が暗くなった。


「ちょっと待って!」


 レオンが叫ぶ。


「お前らは来なくていいよ! 台風来るから!」


「え?」


 二人が同時に振り返る。


 その瞬間、渦巻いていた魔力が霧散した。


 風が止まった。


 雲も消えた。


 レオンは胸を撫で下ろす。


「……頼むから、まず制御覚えて」


「そのために来たんですよ。それにもう、来ちゃってます!」


 橘が冷静に言った。


「ふたりとも悪気ないのが一番怖いんだよな……」


     ◇ ◇ ◇


「さて」


 レオンは気を取り直し、別の訓練場へ向かった。


 今日の目的は、高気圧兄弟の観察ではない。


 自分自身の修行である。


 待っていたのは五十嵐薫だった。


「来たか、レオン」


「ああ。よろしく」


「今日はHealing Radianceを教える。俺の事は五十嵐先生と呼ぶように」


 五十嵐はいつものように落ち着いた表情をしている。


「Healing Radianceは、単純な回復魔法じゃない」


「うん。先生!」


「まず対象を感じ取る。正常な部分と、傷ついた部分。その違いを魔力で見分けるんだ」


 レオンの表情が変わった。


 医師の顔になった。


「なるほど」


「分かるか?」


「要するに診断が先なんだな」


「……まあ、そういうことだ」


 五十嵐は手をかざした。


 淡い光が掌から溢れ出す。


「Healing Radiance」


 柔らかな光が訓練用の魔獣を包み込んだ。


 傷ついていた脚が、みるみるうちに癒えていく。


「ただ光を当てればいいわけじゃない。治す場所を正確に――」


「こう?」


「え?」


 レオンが手をかざした。


 目を閉じる。


 魔獣の身体を診察するように、魔力を静かに巡らせていく。


 骨。


 筋肉。


 血管。


 神経。


 そして傷。


 レオンの頭の中では、それらがまるで人体を診察する時のように明確に分けられていた。


「Healing Radiance」


 パァァァァァァ――。


 優しい光が広がった。


 魔獣の身体を包み、残っていた小さな傷まで綺麗に消えていく。


「…………」


 五十嵐が黙った。


「これで合ってる?」


「…………」


「五十嵐先生?」


「……合ってる」


「良かった」


 レオンは自分の掌を見つめた。


「面白いな。魔力をもっと細く分ければ、一部分だけ治療することもできそうだ」


「…………」


「逆に範囲を広げれば、複数人を同時に――」


「…………」


「どうした?」


 五十嵐は冷静な顔を保っていた。


 保っていたのだが。


「……俺、これ造るのに相当かかったんだけど」


「え?」


「…………やっぱり天才って、ずるくない?」


「何か言った?」


「別に」


 五十嵐は視線を逸らした。


「ふん! まあいい。次に進もう」


 何事もなかったように歩き出す。


 レオンは首を傾げながら、その後を追った。


     ◇ ◇ ◇


 次に待っていたのはユリウスだった。


「Healing Radianceは習得できたようだな」


「ああ」


「ならば、次へ進める」


 ユリウスはレオンの前に、小さな黒い魔石を置いた。


 その表面には、複雑な術式が絡みついている。


「次に教えるのは、デリートだ」


 レオンの表情が真剣になる。


「前に言ってた上級魔法だな」


「ああ。ただし勘違いするな。デリートは、何でも消せる便利な魔法ではない」


 ユリウスは黒い魔石を指差した。


「何を消すのか。それを正確に理解しなければならない」


「なるほど……」


 レオンはすぐに意味を理解した。


「正常なものと異常なものを見分けられなければ、使えないってことか」


「その通りだ」


 ユリウスが微笑んだ。


「だから先にHealing Radianceを習わせた」


「ああ。繋がってるんだな」


「Healing Radianceは癒すべきものを見つける魔法。そしてデリートは――」


「消すべきものを見つける魔法」


「理解が早いな」


 レオンは黒い魔石へ手を伸ばした。


 目を閉じる。


 魔石そのもの。


 その内部に宿る魔力。


 そして、その表面に後から刻まれた術式。


 すべてを一緒に捉えてはいけない。


 必要なものを残し。


 不要なものだけを選び取る。


「……これか」


 レオンの指先に淡い光が宿った。


「デリート」


 パキン――。


 小さな音がした。


 黒い魔石は、そのまま残っている。


 だが。


 表面を覆っていた術式だけが、綺麗に消えていた。


「…………」


 ユリウスが目を見開く。


「できた?」


「……できている」


「良かった」


 レオンは安心したように笑った。


 少し離れたところで見ていた五十嵐が、無言で腕を組んでいる。


「…………」


「五十嵐先生?」


「何でもない」


「なんか機嫌悪くない?」


「悪くない」


「そう?」


「ふん!」


 レオンはますます首を傾げた。


     ◇ ◇ ◇


 修行を終え、レオンたちは休憩スペースへ戻った。


「疲れた……」


 レオンが扉を開ける。


 そして。


 固まった。


「…………」


 そこに、見慣れた休憩スペースはなかった。


 目に飛び込んできたのは、圧倒的な色彩だった。


 赤、紫、黄色、桃色――。


 色とりどりの巨大な花々が大胆に咲き誇り、その間を縫うように、真っ赤な鮮やかな蔦が壁から天井へと伸びている。


 さらに巨大な枝が空間を横切り、見る方向によってまるで違う景色になるよう、花や植物が立体的に配置されていた。


 休憩スペース全体が、ひとつの巨大な作品になっている。


 そして、その強烈な花々の中に置かれているのは――椅子。


 椅子。


 ソファ。


 また椅子。


 革張りの重厚なものから、身体を包み込むようなもの、曲線の美しいものまで、形も大きさもまるで違う。


「…………」


 レオンは一度、扉を閉めた。


 部屋番号を確認する。


 間違っていない。


 もう一度、扉を開ける。


 やっぱり同じだった。


「……僕、部屋間違えた?」


「合ってますよ」


 後ろから橘が答えた。


「ここ休憩スペースだったよね?」


「そうですよ」


「じゃあ、なんでこんなことになってんの?」


 中央では、カクト君と仮屋崎翔子が完成した空間を眺めていた。


「この辺り、もう少し色が欲しいわね」


 仮屋崎翔子が花々を見上げる。


「いや、そこはこれ以上増やさない方がいい。座った時の視界がうるさくなる」


 カクト君は一脚の椅子に腰を下ろし、そこから見える景色を確認していた。


「…………何してるの?」


 レオンが尋ねた。


「見れば分かるでしょう? 殺風景だったから、華やかにしてあげたのよ」


 仮屋崎翔子が当然のように答えた。


「殺風景って……休憩スペースだからね?」


 レオンは今度はカクト君を見る。


「それで……なんで椅子がこんなにあるの?」


「休憩スペースだろう?」


「そうだけど」


「なら、椅子は重要だ」


「…………まあ、それはそうだけど」


「見た目だけじゃ駄目だ。長く座っていて疲れる椅子を置いても意味がない」


 カクト君は真剣だった。


「座ってみろ」


「え?」


「その椅子」


 促されるまま、レオンは近くにあった椅子へ腰を下ろした。


「…………」


 身体を預ける。


「…………」


 背中が楽だった。


 腰も楽だった。


 修行で疲れていた身体が、すっと椅子に馴染んでいく。


「どうだ?」


「…………悔しいけど、めちゃくちゃ楽」


「だろう?」


 カクト君が満足そうに頷く。


「いや、でも多すぎない? こんなに椅子いる?」


「その日の気分で座りたい椅子は変わるだろ?」


「…………」


 レオンは反論しようとして――やめた。


 実際、座り心地はものすごく良い。


 周囲を見渡せば、仮屋崎翔子の花々が視界いっぱいに広がっている。


 派手だ。


 とにかく派手だ。


 だが、不思議と一つの空間としてまとまっている。


「……これ、美術館なの? 休憩スペースなの?」


「休憩スペースよ」


「休憩スペースだ」


 二人が同時に答えた。


「…………そうなんだ」


 その時。


 ゴォォォォォォォォ!!


 再び猛烈な風が吹いた。


「うわっ!」


 巨大な花々が揺れ、真っ赤な蔦がざわめき、レオンの青いジャケットが大きく翻る。


 しかし、重厚な椅子はびくともしない。


 レオンがゆっくりと振り返った。


「……また?」


「高気圧兄弟でしょうね」


 橘が平然と答えた。


「…………」


 レオンは天井を見上げる。


 そして、座り心地のいい椅子に深く身体を沈めた。


心なしか、魔力も体力も回復しているようだ。


「もういいや……」


 今日はHealing Radianceを覚えた。


 デリートも覚えた。


 上級魔法を二つも習得した。


 なのに。


「Healing Radianceとデリート覚えるより、こっちの世界で普通に休憩する方が難しくない?」


 誰もレオンの問いに答えなかった。





レオンです。

今迄、地味な修行を延々としてた。

まず魔力値を最低限、上級魔法が使えるレベル迄あげなくちゃならなくてね。


それにしても高気圧兄弟!僕が言うのも何だけど怪物だよな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。