第91話 あのアホそうな顔した男!お着替えカメラ
精神と時の空間――食堂。
鈍器ホーテで爆買いをした翌日。
今日は夕方から訓練が始まるため、食堂には珍しくのんびりとした空気が流れていた。
パンダは椅子に座り、リアとナルが恐竜と新幹線の玩具で遊ぶ姿を、目を細めて眺めている。
「平和にゃあ。」
一方その頃。
深雪はウニクロの黒いTシャツとデニム姿で、レオンの隣に座り、昼間からビールを飲んでいた。
手にはスマホ。
画面の向こうでは、まきと桜子、フェイ太郎が映っている。
「えー? 俺写ってんの見ててくれたんだー! 嬉しいなぁ!」
『パパー!』
『応援してるよー!』
「ありがとな! 今日は夜から訓練だからさ、今はレオンとビール飲んでる。」
『またお腹出るよー?』
「スライムダイエットすりゃいーんだよ! あれ癖になるわ! ギャハハ!」
レオンはビールを一口飲みながら笑う。
「身体は自分で作るものだよ、深雪。」
「レオン先生、厳しいなぁ。」
そこへ。
「パンダさーん!」
キーキーと蜻蛉が元気よく食堂へ入ってきた。
「花火師さん達に作業場を作ってあげたって聞きました!」
「私達も布とかミシンとか最新の3Dプリンターとか欲しいです!」
「魔法を掛けて、バーン!って凄い衣装を作りたいんです!」
パンダは首を傾げた。
「うーん……。」
少し考える。
「それなら、もっと便利な物があるにゃ。」
四次元ポシェットをゴソゴソ漁る。
そして取り出したのは、一台のカメラだった。
「青い狸の神様道具――お着替えカメラにゃ。」
「お着替えカメラ?」
キーキーが目を丸くする。
「欲しい服をスマホでカメラに送信して、着替えさせたい人に向かってシャッターを押すだけにゃ。」
「どんな下手くそなイラストでも、チャッピーが自動補正して格好良くしてくれるにゃ。」
「えぇぇーー!?」
「ちなみに、パンダの服は全部これで作ったオーダーメイドにゃ。」
キーキーは目を輝かせた。
「凄ーーい!特注だったんですねー!」
「じゃあ、まずは実験にゃ。」
パンダは食堂を見回す。
「あ。」
ニヤリと笑う。
「まずは、あのアホそうな顔してレオンの隣でTV電話してる、ウニクロの服着た深雪で試すにゃ。」
「誰がアホそうな顔だ!」
「聞こえてるぞ!」
「深雪ー。」
「なんだよ。」
「そこ立つにゃ。」
「嫌な予感しかしねぇ……。」
渋々立ち上がる深雪。スマホはレオンに渡す。
パンダはファインダーを覗く。
「カシャ!」
ポンッ!
「……。」
「……。」
服だけが消えた。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
深雪は慌てて股間を隠す。
「何すんだよ! パンダァァ!!」
「きゃーーっ!!」
キーキーと蜻蛉は真っ赤になって後ろを向く。
パンダは頭を掻いた。
「あー、ごめんにゃ。」
「デザイン送る前に押しちゃったにゃ。」
「だから嫌な予感したんだよ!」
「リダイヤル押すにゃ。」
カシャ!
光が走る。
一瞬で元のウニクロ姿へ戻る深雪。
「寿命縮んだわ……。」
キーキーがカメラを受け取る。
「なるほど!」
「それじゃ、この写真をカメラについてるQRコードに送信してみますね!」
スマホを操作する。
「うん! 使い方分かりました!」
「本当か?」
深雪が警戒する。
「俺のサイドエフェクトが危険を予測してる。」
「大丈夫ですよ!」
カシャ!
光が深雪を包む。
次の瞬間。
「……。」
食堂が静まり返った。
「可愛いーーっ!!」
深雪はマトカ☆マギーズのマトカの衣装へ変身していた。
ピンク色のフリフリ衣装。
長いツインテール。
髪型まで完全再現。
レオンは思わずビールを吹き出した。
「ぶふっ!!」
「すげぇ!」
「髪型まで変わってる!」
「凄いクオリティですね!」
キーキーと蜻蛉は大興奮。
「可愛いってお前!」
「俺は男だぞ!」
「あ、高橋居ないのか。」
「良かった……。」
レオンが笑いながら言う。
「高橋なら魔獣の飼育小屋に行くって言ってたよ。」
その瞬間。
「代わりに俺がウェアラブルで撮ってまーす!」
音声、長谷川の声。
「長谷川ーー!!」
「心配しないでください!」
「何をだよ!」
さらに。
「長谷川が消しても、僕が衛星でテレビ局へ転送してまーす!」
「照明の西田でーす!」
「さっきの可愛い三角ディレクターのお尻も転送しちゃいましたー!」
「西田ぁぁぁ!!」
「最悪だよ、お前達!休憩時間まで仕事すんのかよ?」
食堂は大爆笑。
「じゃあ次!」
「レオンさん!」
「立ってくださーい!」
「僕も魔法少女なの?」
レオンはノリノリで立ち上がり、ポーズまで決める。
「カシャ!」
光が消える。
長い黒髪、白いシックな丈の短いワンピース。
「正解!」
「ほむろちゃんでーす!」
「おおーー!!」
一同が拍手する。
「パパ可愛いー!」
ナルは飛び跳ねた。
「ナルも!」
「ナルはマイさんがいい!」
深雪がボソッと呟く。
「あれって三歳児に見せていいアニメだっけ……。」
「カシャ!」
ナルはマイに変身。
金髪のクルリンヘアー。黄色いワンピース。
「リアもー!」
「リアはサアヤ!」
「カシャ!」
リアもサアヤになる。
青いボブ。青いワンピース。
「このカメラ凄ーーい!!」
「本当すげぇ!!」
キーキーと蜻蛉は大はしゃぎ。
「パンダさんも!」
「カシャ!」
「……。」
なぜか。
キュウヘイの着ぐるみになった。
白い小動物のキュウヘイの着ぐるみ。
「なんでパンダだけ!?」
深雪が笑い転げる。
「そこは、きょうかじゃないんだな。」
その時だった。
「あ!」
キーキーが入口を見る。
「あそこに五十嵐さん!」
「ちょっとこっち来てくださーい!」
「やめろ!」
深雪が叫ぶ。
「五十嵐さん、そういうノリ絶対好きじゃないって!」
しかし。
空気を読まないキーキー。
何も知らない五十嵐は歩いてくる。
「どうした?」
「カシャ!」
食堂が静まり返る。
魔法少女きょうかになった五十嵐。
赤紫の衣装。赤紫の髪をポニーテールにしている。
スカート。
リボン。
長い髪。
五十嵐は無言で自分の姿を見下ろした。
「…………。」
誰も何も言えない。
キーキーだけが笑顔で拍手する。
「似合ってます!」
五十嵐は静かに顔を上げた。
「……これは、元に戻るんだろうな?」
「もちろんです!」
「そうか。」
深雪が思わず叫ぶ。
「怒らないんかーーい!!」
食堂は再び、大爆笑に包まれた。
「今度はユリウス様!」
「嫌な予感しかしない。」
カシャ!
白衣の天使になるマッチョのユリウス。
「これは……治癒魔法が二割増しになりそうですね。」
「ならねぇよ!」
⸻
「あっ!」
「ポルガン様!」
「え? 俺も?」
カシャ!
黒いシルクハットに黒いタキシード。
真央が拍手する。
「素敵です!」
「ありがとう……って、シルクハット仮面?」
⸻
「次は真央ちゃん!」
カシャ!
青緑のセーラー服、青緑のハイヒール。
髪型は変わらない。
セーラーネプチュン。
ポーズを取る、真央。
⸻
「お次はリリーさん!」
カシャ!
濃紺のセーラー服。濃紺のハイヒール。
髪型は変わらない。
セーラーウラノス。
目を白黒させるリリー。
⸻
「いー感じですね。このカメラ!」
キーキーがニッコリ笑った。
深雪です。
俺のお尻にはモザイクが入るんだろうか?
西田、お前だけは絶対許さん。




