↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リア充天才パンダとレオンの異世界日本化計画※毎日20時更新。そんなに全削除して欲しいですか?  作者: ヘタレパンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/137

第89話 鈍器ホーテ爆買い祭り、前編

地球

2031年11月20日 木曜日。

ポルガンの誕生日まで、あと1ヶ月と27日。


精神と時の空間

244日目。

時の間に居られる時間、あと242日。


ベッドの上、シーツが乱れたまま、二人は密着していた。

パリコレのステージを彩るイケメンモデル、アーネスト。

長い髪を緩く下ろしたその姿は、照明の下でさえ目を奪うほど整っていて、隣で甘える雷蔵を優しく包み込んでいた。


雷蔵はアーネストの胸に顔を埋め、腕を絡め、まるで子供のように甘えている。指先でアーネストの長い髪を掬い上げ、さらさらとした感触を何度も確かめるように撫でた。


「……綺麗だな」


雷蔵は小さく呟き、髪を指に絡めながらしばらくうっとりと見つめていた。その艶やかな髪の感触に、ふと、別の長い黒髪が浮かぶ。


梅子。


妻である梅子の、あの艶のある黒髪。


胸の奥がざわつき、雷蔵の目が微かに潤む。半泣きになりかけたその表情を、アーネストは見逃さなかった。


「また、梅子か」


アーネストが低く、少し呆れたような声で言う。長い髪が雷蔵の頰に触れる距離で、ため息をひとつ小さく吐き、雷蔵の頭をゆっくりと撫でた。


(お前は今、この俺に抱かれてるんだぞ。本当、欲深な男だな)


指が優しく頭皮を撫で、雷蔵の背中をさすりながら、アーネストは体を少し寄せる。肌と肌が密着し、吐息が交じる距離。不倫だとわかっていながら、熱がじんわりと広がる。


雷蔵は自分が不倫しているとわかっているのだろうか?


雷蔵はアーネストの胸に顔を押し付けたまま、目を閉じ掠れた声で答える。


「……知ってる。でも、お前の髪触ってると、つい……」


「つい、梅子を思い出すのか」


アーネストが苦笑混じりに囁き、雷蔵の耳元に唇を寄せる。熱い吐息が耳をくすぐり、雷蔵の体が小さく震えた。


「梅子は俺のライバルだ。お前の伴侶であり、仕事でも恋でもライバル。皮肉な話だな。」


指先が雷蔵の首筋をゆっくりと撫で下ろす。肌をなぞる感触は、甘く、少しだけ疼く。ベッドの中で二人は絡み合い、イチャイチャと息を交わしながら、ただそのぬくもりを確かめていた。


その時。


雷蔵のスマートウォッチが小さく震えた。


画面を見ると、雷蔵の兄――レオン財団のCEO、橘からの着信だった。


「……っ」


雷蔵は一瞬、アーネストの腕の中で硬直し、すぐにベッドの淵に置いてあったスマホに手を伸ばした。


アーネストはそれを見て、静かに雷蔵の腰を抱きしめたまま、小さく囁く。


「取れよ。兄さんからだろ」


その声は低く、少し独占欲を含んでいたが、決して離そうとはしなかった。


雷蔵はアーネストの腕の中から少しだけ身を起こし、スマホを手に取った。


「蒼介兄さん?」


『起きてたか、雷蔵。』


「どうしたの? 梅子さんに何かあったの!? こんな時間に電話なんて……。今、夜中の二時だよ?」


 思わず声が弾む。


 その様子を見たアーネストは苦笑しながら、雷蔵の肩へそっと頭を預けた。


『安心しろ。梅子君も元気だ。悪い知らせじゃない。』


 その一言に、雷蔵は大きく息を吐く。


「良かった……。」


『今度の休みなんだが、こっちの時間だと今日になる。久しぶりにみんなで鈍器ホーテを貸し切ることになった。梅子君達研究所の要員も勿論参加するぞ。』


「えっ!」


 雷蔵の表情が一気に明るくなる。


「本当!?」


『ああ。食料品や日用品の補充もあるからな。お前も来るか?』


「行く行く! 絶対行く!」


 ベッドの上で飛び起きそうな勢いの雷蔵を見て、アーネストが思わず笑う。


『相変わらず反応が早いな。』


「だって、梅子さんに逢えるんだよ!? しかも貸切なんだろ!」


『今回は人数も多いからな。パンダさんから、一人五万円までって連絡が来ている。レジが追いつかないそうだ。』


「五万円かぁ……。」


 雷蔵は真剣な顔になる。


「何買おう……。」


『悩む時間も楽しいぞ。』


「場所はこの前の鈍器ホーテ?」


『そうだ。午後三時集合。遅れるなよ。』


「了解!」


 少し間が空く。


 橘が穏やかな声で続けた。


『それと、梅子君たちは育児用品を買う予定らしい。研究に必要な物もあると言っていたよ。』


「そうなんだ。」


『まあ……研究だけじゃないだろうがな。』


 兄の含みのある言い方に、雷蔵は首を傾げる。


「どういう意味?」


『そのうち分かる。』


「兄貴、また意味深なこと言って……。」


 電話の向こうから小さな笑い声が聞こえた。


『じゃあ、午後三時に鈍器ホーテで。遅れるなよ。』


「兄貴もね!」


『おやすみ、雷蔵。』


「おやすみ!それから、ありがとう兄貴!」


 通話が切れる。


 雷蔵は嬉しそうにスマホを胸へ抱きしめた。


「久しぶりに梅子さんに逢える!」


 隣ではアーネストがくすっと笑う。


「電話が終わった途端、それか。俺が居るのにな。」


「だって、梅子さんにも、みんなにも会えるんだぞ。」


「……本当に嬉しそうだな。」


 アーネストは雷蔵の肩へ腕を回し、その笑顔を優しく眺めた。


「兄さんも、お前がそんな顔をしてると思うと安心するだろうさ。」


「そうかな。」


「ああ。」


 二人は数時間後に始まる賑やかな買い物を思い浮かべながら、穏やかな時間を共有していた。


 午前11時――。


 日本・鈍器ホーテ駐車場。


 黒塗りの高級車が静かに駐車場へ滑り込む。


 助手席のドアが開き、雷蔵が軽く伸びをした。


「まだみんな来る前なので、ゆっくり見られますね。」


「ああ。」


 運転席から降りたアーネストは、大きな建物を見上げる。


 外観そのものには驚かない。


 ヨーロッパにも大型スーパーは数多く存在する。


 だが、入口付近へ積み上げられた季節商品や、所狭しと並ぶ特売品を見て、小さく微笑んだ。


「日本らしいな。」


「そうですか?」


「客を楽しませようという気持ちが伝わってくる。」


 二人はカートを一台取り、店内へ入った。


 自動ドアが開くと、涼しい空気が流れてくる。


二人はカートを一台押しながら、食品売り場へ足を踏み入れた。


「今日は空いてますね。」


「ああ。貸切になる前だからな。」


 雷蔵は嬉しそうに店内を見回す。


「今のうちにゆっくり買い物しましょう。」


「そうしよう。」


 アーネストは自然な動作で雷蔵の腰へそっと手を添えた。


 雷蔵は何の違和感もなく歩き続ける。


「人、多いですね。」


「迷子になるなよ。」


「大丈夫ですよ。俺、もう子供じゃありませんから。」


「そういう問題じゃない。」


 アーネストは小さく笑い、手を離さない。


 雷蔵は外国人らしいスキンシップなのだろうと勝手に納得していた。


 野菜売り場を抜け、果物売り場へ着く。


 アーネストの足が止まった。


「雷蔵。」


「はい。」


「綺麗だな。」


 視線の先には果物が並んでいる。


 艶のあるリンゴ。


 宝石のようなシャインマスカット。


 赤く色付いた柿。


 どれも丁寧に並べられていた。


「日本は果物まで美しい。」


「確かに見た目は凄いですね。」


「食べてみたい。」


「じゃあ買いましょう。」


 雷蔵は迷わずシャインマスカットをカートへ入れた。


「リンゴも美味しいですよ。」


「それも。」


「柿は好き嫌いありますけど。」


「挑戦してみたい。」


「じゃあ一袋。」


 次々と果物が増えていく。


「結構買いますね。」


「雷蔵。」


「はい?」


「お前と一緒なら全部美味い。」


「そうですね。みんなで食べたら美味しいですよ。」


「…………。」


 また伝わらなかった。


 アーネストは思わず天井を見上げる。


(天然にも程がある。)


「どうしました?」


「いや……何でもない。」


 二人は笑いながら酒売り場へ向かった。


 長い棚には世界中の酒が並んでいる。


 アーネストは一本のワインを手に取った。


「日本にもワインがあるんだな。日本産のワインか。」


「そうですよ。」


「美味いのか?」


「俺も飲んだことないですね。」


「なら試そう。」


「いいですね。」


 一本。


 カートへ入る。


 今度は缶ビールが並ぶ棚を眺める。


「これだけ種類があるのか。」


「限定品も結構ありますよ。」


「全部味が違うのか?」


「全然違います。」


「面白い。」


 アーネストは数本手に取った。


「飲み比べしよう。」


「俺、お酒そんなに強くないですよ。」


「酔ったら俺が部屋まで運ぶ。」


「ははっ、冗談ばっかり。」


「俺は本気だ。」


 雷蔵は笑っている。


 冗談だと思っている。


「じゃあ、日本酒も一本買いましょう。」


「それも頼む。」


「お米のお酒なんですよ。」


「知っている。欧州でも人気だ。」


「そうなんですね。」


「だが、日本で飲むのは初めてだ。」


「じゃあ今日は乾杯ですね。」


「二人で。」


「みんなで、ですね。シャンパンとかも飲んでみます?」


「好きにしろ…………。」


 まただ。


 アーネストは心の中で肩を落とす。


(どうして全部『みんな』になるんだ。)


 雷蔵はカートを押しながら振り返った。


「アーネストさん?」


「ん?」


「疲れてません?」


「いや。」


「何か欲しい物あります?」


「ある。」


「何です?」


「お前。」


「え?」


「……日本のお菓子だ。」


「そうですよね!」


 雷蔵は満面の笑みで頷く。


「俺もポテトチップス買おうと思ってたんですよ!」


 そう言って嬉しそうにお菓子売り場へ向かってしまう。


 アーネストはその後ろ姿を見つめ、苦笑した。


「雷蔵。」


「はい?」


「お前は本当に罪な男だ。」


「え? 何か言いました?」


「いや。」


 アーネストは歩み寄ると、そっと雷蔵の肩へ腕を回した。


「今日は俺の隣から離れるな。」


「はいはい。」


 雷蔵は笑顔で頷く。


「迷子になったら大変ですもんね。」


 また勘違いしている。


 それでもアーネストは嬉しかった。


 肩を寄せ合ったまま、二人は次の売り場へ歩いていく。


 もうすぐ、この静かな店内は研究員たちと修行組で大賑わいになる。


 今だけは、二人だけの穏やかな時間だった。





雷蔵は可愛い。

梅子は腹が立つくらい、男の趣味が良いんだよな。

アーネスト


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。