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贖罪のオーディン 〜最強兵器に乗った少年は、復讐の果てに世界の真実を知る〜  作者: situ725


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第三話 迎撃

ヴァルハラが降下してから三分後。


保養施設周辺は混乱の渦中にあった。


施設全域で通信障害が発生。


監視カメラは機能停止。


警備本部との通信も途絶えている。


非常電源は作動しているものの、


システムの多くは正常に機能していなかった。


ミアによる電子戦が効果を発揮していた。


その混乱の中心に、


鋼鉄の巨人が立っている。


ヴァルハラ一号機。


全高二十メートル。


重量百二十トン。


月明かりに照らされた装甲は鈍く輝いていた。


コックピット内。


カイルはゆっくりと息を吐く。


汗が額を伝う。


操縦桿を握る手にも力が入っていた。


初実戦。


頭では冷静なつもりだった。


だが身体は正直だった。


《機体状態正常。》


《右膝アクチュエーター誤差〇・七%。》


《戦闘継続可能。》


「分かってる。」


カイルは短く答えた。


《二号機、三号機は上空待機中。》


《必要時に投入可能です。》


ミアの声が聞こえる。


「了解。」


その瞬間。


サーチライトが照射された。


警備部隊だった。


だが隊員たちは混乱している。


「本部と繋がらない!」


「監視システムが死んでる!」


「何が起きてるんだ!」


そして彼らは、


目の前の巨人を見上げた。


「なんだ……あれ。」


「戦車じゃない。」


「人型だぞ。」


恐怖が広がる。


それでも任務は任務だった。


機関砲が火を吹く。


曳光弾が夜空を裂いた。


火花。


爆音。


ヴァルハラの装甲へ弾丸が叩き込まれる。


《頭部センサー軽微損傷。》


《観測機能三%低下。》


カイルは顔をしかめた。


「やっぱり痛いな。」


完全無敵ではない。


だからこそ慎重に戦う。


ヴァルハラが前進する。


一歩。


また一歩。


百二十トンの質量が大地を揺らした。


装甲車部隊が後退する。


カイルは拳を振り上げる。


だが狙ったのは車両ではない。


地面だった。


轟音。


大地が砕ける。


衝撃波が周囲へ広がった。


先頭車両が横転。


後続車両が急停止する。


隊列が崩壊した。


「撤退しろ!」


「化け物だ!」


「対戦車ミサイルを持って来い!」


その頃。


施設北側。


森林地帯。


サミュエル・クロス率いる地上戦部隊が動き出していた。


三十名以上の隊員が施設外周へ展開。


残る部隊は周辺封鎖と脱出経路確保を担当している。


さらに複数の支援チームも待機していた。


「全班、突入開始。」


短い命令。


隊員たちが一斉に前進した。


アルファ班。


通信室制圧担当。


ブラボー班。


会議データ確保担当。


チャーリー班。


マーカス確保担当。


それぞれが別ルートから施設へ侵入する。


《アルファ班、北棟侵入。》


《ブラボー班、サーバールームへ向かう。》


《チャーリー班、目標捜索開始。》


銃声が響く。


《敵警備部隊と接触。》


《一名軽傷。》


《だが任務続行可能。》


サミュエルは冷静だった。


「無理はするな。」


「目標を優先しろ。」


「時間との勝負だ。」


一方。


保養施設内部。


マーカス・ヘイルは非常通路を歩いていた。


護衛部隊十名。


全員が完全武装。


「航空防衛軍との回線は。」


「まだ復旧しません。」


「ヘリは。」


「屋上で待機中です。」


護衛部隊が非常通路の防爆扉を閉鎖する。


重い金属音が響いた。


侵入者の追跡を少しでも遅らせるためだった。


「急げ。」


マーカスは歩みを速める。


七年前。


アークライト襲撃事件。


あの夜と似ている。


嫌な予感が消えない。


その時。


通信機から叫び声が響いた。


《侵入者確認!》


《巨大人型兵器です!》


マーカスは立ち止まる。


「何だと?」


《繰り返します!》


《巨大人型兵器です!》


一瞬だけ。


マーカスの顔色が変わった。


「まさか……。」


マーカスの表情が凍り付く。


脳裏をよぎった考えを、


彼は即座に否定した。


あり得るはずがない。


その頃。


上空四千メートル。


六機の戦闘機編隊が接近していた。


先頭を飛ぶのは、


アレックス・ローガン。


国家航空防衛軍最年少エース。


雲を抜けた瞬間。


彼はそれを見た。


巨大な鋼鉄の人影。


横転した装甲車。


混乱する警備部隊。


「……冗談だろ。」


僚機が呟く。


だがアレックスは冷静だった。


「全機、落ち着け。」


通信回線が静まる。


「歩行兵器だ。」


「だが推進機を搭載している。」


「降下能力も確認済み。」


「未知の兵器だ。」


彼は司令部へ回線を開く。


「司令部。」


《こちら司令部。》


「目標は未知の大型兵器。」


「重要警護対象施設を襲撃中。」


「交戦許可を要請する。」


短い沈黙。


《状況を継続監視。》


《交戦権限を現場指揮官へ一時委任する。》


《必要と判断した場合は攻撃を許可する。》


「了解。」


アレックスは続けた。


「二番機。」


《了解。》


「高度を下げろ。」


「ただし安全距離を維持。」


「まずはデータ収集だ。」


「まだ撃つな。」


「相手の性能が分からない。」


「無駄撃ちはするな。」


僚機が慎重に接近する。


その様子を、


ヴァルハラのセンサーが捉えた。


《高速飛行体六。》


《航空防衛軍です。》


《接触まで九十秒。》


カイルは空を見上げる。


六の光。


一直線に迫ってくる。


「攻撃してこないか。」


予想外だった。


普通ならミサイルが飛んできてもおかしくない。


「慎重な相手らしいな。」


遠く離れたノマド。


管制室。


大型モニターには、


施設内部。


地上部隊。


ヴァルハラ。


戦闘機部隊。


全てが映し出されている。


レオンは静かに立っていた。


グレンがレオンを見る。


「最終判断はお前だ。」


レオンは頷く。


「作戦第二段階へ移行。」


イリスが命令を伝達する。


「サミュエル隊は会議データを確保。」


「マーカスを逃がすな。」


「ただし死なせるな。」


レオンは続けた。


「戦闘機との交戦は極力避けろ。」


「目的はマーカスだ。」


「無用な損耗はするな。」


《了解。》


ミアも端末を操作する。


《電子戦継続。》


《敵通信妨害を維持します。》


そして夜空では。


カイルが背部ウェポンラックのロックを解除する。


巨大な電磁加速ライフルが展開された。


カイルは深く息を吐く。


「頼むぞ。」


撃墜が目的ではない。


まずは牽制。


それで退いてくれるなら、


その方が良かった。


人類初の人型兵器。


そして現代戦闘機。


歴史上初めての戦いが始まろうとしていた。


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