表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/38

第三十二話 潜入開始

北大西洋。


深夜。


---


格納庫後部。


荒れる海へ向け、一隻の高速艇が降ろされていた。


全長十メートルほど。


黒く塗装された特殊作戦用高速艇だった。


レーダー反射を抑えた船体。


低騒音エンジン。


少人数潜入専用に改修されたノヴァの特殊装備である。


---


サミュエルは最後に艇へ乗り込んだ。


地上部隊員六名も続く。


---


「出発する。」


---


静かに高速艇がノマドを離れた。


---


雨と波を切り裂きながら艇は進む。


通常の船なら苦戦する海況だった。


だが特殊艇は海面を滑るように走る。


---


前方に黒い影が見え始めた。


孤島だった。


---


「見えた。」


隊員の一人が呟く。


---


島は想像より大きい。


直径十キロほど。


海岸線のほとんどは切り立った断崖に囲まれている。


---


島の中央には小高い丘。


その頂上には巨大な通信アンテナが立っていた。


---


丘の周囲には複数の施設。


研究棟。


発電設備。


警備棟。


レーダー施設。


---


さらに南側には人工港まで確認できる。


---


研究施設というより。


一つの要塞だった。


---


「厄介だな。」


サミュエルが呟く。


---


高速艇は島北側へ回り込む。


---


こちら側は断崖と岩場ばかり。


港も道路もない。


---


だからこそ警備が薄い。


---


「上陸地点まで二百メートル。」


通信機からミアの声が響く。


---


『監視カメラ反応なし。』


『予定ルートは生きています。』


---


「了解。」


---


やがて艇は巨大な岩陰へ滑り込んだ。


---


「上陸。」


---


全員が海へ飛び降りる。


---


冷たい海水が膝まで達した。


---


波の音が全てをかき消してくれる。


---


サミュエルは断崖を見上げた。


高さ三十メートル以上。


---


「登るぞ。」


---


アンカーが撃ち込まれる。


ワイヤーが張られる。


---


隊員たちは慎重に登り始めた。


---


十分後。


潜入隊は崖の上へ到達する。


---


そこには深い針葉樹林が広がっていた。


---


足元はぬかるみ。


木々が視界を遮る。


---


施設へ続く舗装路は森の反対側にある。


---


そのため潜入隊は獣道のような斜面を進んでいく。


---


雨のおかげで足音は消える。


---


百メートル。


二百メートル。


三百メートル。


---


誰にも発見されない。


---


だが。


順調すぎた。


---


サミュエルは周囲を見回す。


---


静かすぎる。


---


研究施設ならまだ分かる。


---


しかし。


この島は違う。


---


監視塔。


レーダー施設。


武装警備兵。


---


警備規模が異常だった。


---


「何かを研究しているんじゃない。」


サミュエルが低く呟く。


---


隊員たちが振り向く。


---


「何かを隠している。」


---


誰も反論しなかった。


---


その時。


先頭の隊員が拳を上げる。


---


全員停止。


---


林の隙間。


---


施設外周フェンス。


---


そして武装警備兵二名。


---


ライフルを携行し巡回している。


---


さらに遠くの監視塔にも人影が見えた。


---


施設外周道路には巡回車両がゆっくり走っている。


---


「やっぱり研究施設の警備じゃないな。」


隊員の一人が小さく呟いた。


---


「どうします。」


---


「避ける。」


サミュエルは即答した。


---


任務は戦闘ではない。


---


情報を持ち帰ることだ。


---


警備兵が通り過ぎる。


---


潜入隊は再び動き出した。


---


やがて森が途切れる。


---


目の前には巨大なフェンス。


---


その向こうには施設外周道路。


さらに奥には研究棟らしき建物が見えた。


---


「ミア。」


---


サミュエルが通信機へ向かう。


---


「侵入経路が欲しい。」


---


数秒後。


返答が返る。


---


『施設北東部に保守用搬入口があります。』


『現在使用されていません。』


『そこから侵入可能です。』


---


サミュエルは地図を確認した。


---


施設本体へ直接繋がる経路だった。


---


「そこへ向かう。」


---


潜入隊は再び前進を開始する。


---


その頃。


島南側の人工港。


---


白と黒で塗装された政府高官専用輸送機が着陸した。


---


周囲では四機の護衛戦闘機が上空を旋回している。


---


港の警備兵たちが整列した。


---


輸送機のタラップがゆっくりと降ろされる。


---


やがて一人の男が姿を現した。


---


マーカス・ヘイル。


---


七年前の事件に関わった男。


---


彼は無言のまま施設を見上げる。


---


「準備は。」


---


近くの職員が敬礼した。


---


「全て整っています。」


---


マーカスは小さく頷く。


---


そして施設へ向かって歩き出した。


---


その頃。


サミュエルたちは知らない。


---


自分たちが追い続けてきた男が。


---


今まさに同じ島へ足を踏み入れたことを。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ