第三十一話 孤島
三日後。
北大西洋近海。
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ノマドは荒れた海を進んでいた。
厚い雲。
強風。
高波。
周囲に船影はない。
まるで世界から切り離された海域だった。
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管制室。
大型モニターには孤島の衛星画像が映し出されている。
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「目標まで二百キロ。」
ミアが報告する。
「現時点で敵に察知された兆候はありません。」
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レオンは腕を組みながら画面を見つめた。
小さな島。
だが地下には巨大施設が存在している。
父が残した座標。
そしてマーカスの目的地。
全てがこの島へ繋がっていた。
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「潜入隊は。」
レオンが尋ねる。
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サミュエルが前へ出る。
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「準備完了です。」
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今回投入されるのは少人数。
サミュエル。
地上部隊員六名。
以上だった。
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グレンが画面を見ながら言う。
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「護衛戦闘機四機。」
「早期警戒機まで随伴している。」
「その割には少人数だな。」
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サミュエルが頷く。
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「だからこそです。」
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室内の視線が集まる。
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「マーカスが向かう施設なら警戒も厳しい。」
「輸送機や大部隊を近付ければ発見される可能性が高い。」
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衛星画像には監視塔とレーダー施設が映っている。
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「今回の目的は制圧じゃない。」
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サミュエルは続ける。
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「まず中を確認する。」
「施設の規模も戦力もまだ分からない。」
「必要なら後から戦力を投入すればいい。」
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レオンも頷いた。
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「情報収集を優先する。」
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それが最も現実的だった。
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「ヴァルハラ隊は待機。」
レオンが言う。
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「何かあれば即座に出撃できるようにしておけ。」
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カイルが頷く。
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「了解。」
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マックスも答える。
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「いつでも出られる。」
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エリックは鼻で笑った。
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「出番がなければそれでいい。」
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その時。
ミアが新しい映像を表示した。
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「島の警備状況です。」
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衛星画像が拡大される。
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監視塔。
レーダー施設。
巡回車両。
武装警備兵。
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「推定戦力は五十から八十名。」
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グレンが眉をひそめる。
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「研究施設にしては多いな。」
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「軍事施設並みです。」
ミアが答えた。
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映像がさらに移動する。
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島北部。
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断崖絶壁。
荒れた海岸線。
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「潜入経路はこちら。」
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通常なら上陸を試みない場所だった。
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だからこそ。
警備も比較的少ない。
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その時だった。
通信士が声を上げる。
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「島からの通信を傍受!」
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全員が振り向く。
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ミアが即座に解析を開始する。
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数秒後。
結果が表示された。
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「発信先はマーカス専用機です。」
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室内が静まり返る。
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「まだ到着していないのか。」
イリスが呟く。
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「はい。」
ミアが頷く。
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「ですが目的地は間違いなくこの島です。」
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サミュエルが地図へ視線を向けた。
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「なら今が好機だ。」
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全員の視線が集まる。
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「マーカス到着後は警備がさらに強化される可能性がある。」
「到着前ならまだ動きやすい。」
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グレンも頷いた。
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「理にかなっている。」
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レオンは静かに命じる。
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「予定通り実行する。」
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「了解。」
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数時間後。
潜入隊は格納庫へ集まっていた。
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装備は軽量化されている。
消音火器。
暗視装置。
通信機。
最低限の爆薬。
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戦闘ではなく。
偵察を前提とした装備だった。
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サミュエルは装備を確認する。
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異常なし。
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地上部隊員たちも緊張した表情を見せていた。
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そして小型艇へ乗り込む。
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嵐の海。
冷たい雨。
激しい波。
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孤島の輪郭が少しずつ近づいてくる。
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サミュエルは遠くに見える島を見つめた。
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長年の経験が告げている。
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今回の任務は簡単には終わらない。
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だが。
引き返す理由もなかった。
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七年前の真実。
その入り口が。
もう目の前まで迫っている。




