第三十話 動き出す駒
マーカス・ヘイルの移動が確認されてから一日後。
ノマド管制室。
監視班からの報告が続いていた。
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大型モニターには飛行経路が表示されている。
一本の線が大西洋上を伸びていた。
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「移動経路を特定しました。」
ミアが端末を操作する。
「目的地もほぼ確定です。」
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モニターに機影が映し出された。
マーカスが搭乗している政府高官専用輸送機。
全長四十メートル級の大型高速輸送機だった。
長距離飛行能力と高い防御性能を持つ要人輸送機である。
その周囲には四機の護衛戦闘機。
さらに早期警戒機まで随伴していた。
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サミュエルが眉をひそめる。
「副長官一人の移動にしては大袈裟だな。」
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「通常任務の護衛規模を大きく超えています。」
ミアも頷いた。
「重要施設への移動と考えるべきでしょう。」
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その時だった。
監視班から通信が入る。
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「目的地を確認しました!」
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室内が静まり返る。
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「どこだ。」
レオンが尋ねる。
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「北大西洋海域です。」
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グレンが反応する。
「北大西洋?」
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ミアが端末を操作する。
大型モニターに座標が表示された。
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その数字を見た瞬間。
ミアの表情が変わる。
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「この座標……。」
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レオンが顔を上げる。
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「どうした。」
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「昨日発見したデータと一致します。」
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室内が静まり返った。
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「特定できたのか。」
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「暗号そのものはまだ解読できていません。」
ミアが答える。
「ですが座標データの復元には成功しました。」
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画面が切り替わる。
二つの座標が並ぶ。
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完全一致。
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偶然ではあり得ない。
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「エドワード氏が最後まで保存していた座標です。」
「そしてマーカスの移動先と同じ場所です。」
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レオンはモニターを見つめる。
父が残した手掛かり。
そしてマーカス。
別々だった線が一つに繋がった。
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「衛星映像を出せ。」
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ミアが操作する。
映像が表示された。
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荒れた海。
厚い雲。
激しい波。
その中央に小さな島が映っている。
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「無人島か。」
カイルが呟く。
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「表向きは。」
ミアが答えた。
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映像が拡大される。
巨大アンテナ。
地下搬入口。
発電施設。
そして海岸部の人工港湾。
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誰が見ても分かる。
無人島ではない。
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「研究施設か。」
マックスが低く言った。
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「少なくとも何かを隠している。」
グレンが続ける。
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エリックが鼻で笑う。
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「結局行くんだろ。」
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レオンは小さく頷いた。
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「ああ。」
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七年前。
父はこの場所へ辿り着こうとしていた。
そして、その直後に殺された。
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「まずは少人数で確認する。」
レオンが言う。
「大部隊は動かさない。」
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サミュエルが頷く。
「偵察隊を編成しておく。」
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管制室の空気が引き締まる。
ノヴァは再び動き始めた。
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その頃。
北大西洋の孤島。
地下深く。
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一人の男の前に報告書が置かれた。
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「施設襲撃の件です。」
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男は無言で目を通す。
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「データ保管庫は破壊。」
「回収部隊は失敗。」
「重要データの一部が持ち出された可能性があります。」
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沈黙。
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やがて男は報告書を閉じた。
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「そうか。」
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短い返答。
だが声に動揺はない。
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「七年前の亡霊が動き出したか。」
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男は静かに立ち上がる。
その顔はまだ見えない。
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だが。
七年前の事件を知る人物であることだけは確かだった。
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「ようやくここまで辿り着いたか。」
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北大西洋。
嵐の海に浮かぶ孤島。
そこには七年前の真実の一端が眠っていた。




