第二十九話 黒幕の影
ノマド帰還から二日後。
管制室では解析作業が続いていた。
回収したデータは膨大だった。
ミーミル計画。
エドワード・アークライトの調査記録。
七年前の通信ログ。
そして暗号化された大量のファイル。
真実へ近づいている。
だが。
まだ全体像は見えていなかった。
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レオンは大型モニターを見つめていた。
父が残した映像。
最後の言葉。
何度も頭の中で繰り返される。
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「新しいデータを復元しました。」
ミアの声が響く。
全員の視線が集まった。
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モニターに一つのファイルが表示される。
作成日時は七年前。
襲撃事件の約一か月前だった。
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「エドワード氏の個人調査記録です。」
ミアが説明する。
「破損が激しかったのですが、一部を復元できました。」
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画面に複数の名前が表示される。
政府関係者。
軍需企業幹部。
情報機関職員。
どれも重要人物だった。
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「父さんは何を調べていた?」
レオンが尋ねる。
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「ミーミル計画の関係者です。」
ミアが答えた。
「計画に関わる人物を独自に洗い出していました。」
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サミュエルが腕を組む。
「つまり容疑者リストか。」
「そう考えていいと思います。」
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グレンが画面を見つめる。
「多すぎるな。」
そこには数十人の名前が並んでいた。
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「エドワード氏自身も絞り切れていなかったようです。」
ミアが新しいページを開く。
そこには短い手書きメモが残されていた。
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『証拠が足りない』
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全員が黙る。
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『まだ全員を把握できていない』
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レオンはその文字を見つめた。
父もまた。
真実へ辿り着く直前だったのだ。
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「分かったことより。」
マックスが口を開く。
「分かってないことの方が多いな。」
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誰も反論しない。
それが現実だった。
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「つまり俺たちは待機か。」
カイルが椅子にもたれながら言う。
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「ああ。」
レオンが頷いた。
「焦って動く段階じゃない。」
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エリックが鼻で笑う。
「珍しく慎重だな。」
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「父さんも慎重に調べていた。」
レオンはモニターから目を離さない。
「同じ失敗は繰り返さない。」
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その時。
ミアが別のファイルを表示した。
「ですが手掛かりはあります。」
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画面に座標データが映し出される。
数字の羅列。
そして暗号化された通信記録。
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「これは?」
イリスが尋ねる。
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「エドワード氏が最後まで削除しなかったデータです。」
ミアが答える。
「重要情報として保存されています。」
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サミュエルが眉をひそめる。
「場所を示しているのか?」
「可能性は高いです。」
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だが。
それ以上は分からない。
暗号が残っている。
復号には時間が必要だった。
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その時だった。
管制室の通信モニターが点灯する。
緊急回線。
監視班からだった。
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「こちら監視班!」
慌ただしい声が響く。
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「報告します!」
「マーカス・ヘイルの移動を確認しました!」
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空気が変わる。
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レオンが顔を上げた。
「どこへ向かう。」
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「現在調査中です!」
「ただし極秘移動であることは間違いありません!」
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「護衛規模は?」
サミュエルが尋ねる。
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「通常の三倍以上です。」
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室内が静まり返る。
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マックスが眉をひそめる。
「重要人物扱いだな。」
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「あるいは。」
グレンが低く呟く。
「重要な何かに向かっている。」
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レオンは考える。
偶然ではない。
そんな気がした。
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七年間追い続けた男。
その男が動いた。
そして父が残した手掛かりも動き始めている。
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「監視を継続しろ。」
レオンが命じる。
「今度は見失うな。」
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「了解。」
通信が切れる。
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誰も口を開かなかった。
点と点が少しずつ繋がり始めている。
だが。
本当の敵はまだ姿を見せない。
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ノマドは静かに海を進む。
その先で待つ真実へ向かって。




