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第二十八話 父の遺したもの

ノマド帰還から数時間後。


艦内は静けさを取り戻していた。


格納庫では整備班がヴァルハラの点検を行い、医務室では負傷者の治療が続いている。


だが。


管制室だけは違った。


---


大型モニターの前に主要メンバーが集まっていた。


レオン。


イリス。


グレン。


サミュエル。


ミア。


そしてカイル、マックス、エリック。


全員が回収したデータの解析結果を待っていた。


---


ミアが端末を操作する。


疲労は隠せない。


だがその表情には緊張が浮かんでいた。


「一次解析が終わりました。」


室内が静まる。


---


モニターに文字が表示された。


MIMIR PROJECT


七年間追い続けた名前。


レオンは無意識に拳を握る。


---


「まず分かったことがあります。」


ミアが言った。


「ミーミル計画は兵器開発計画ではありません。」


サミュエルが眉をひそめる。


「じゃあ何だ。」


---


世界地図が表示された。


無数の線が各国を結んでいる。


政府機関。


軍事企業。


研究施設。


情報機関。


世界中の組織が複雑に繋がっていた。


---


「軍事情報。」


「経済情報。」


「通信記録。」


「衛星ネットワーク。」


「各種データベース。」


---


ミアは説明を続ける。


「それらを統合管理するための巨大プロジェクトです。」


---


グレンが腕を組む。


「国家単位の計画じゃないな。」


「はい。」


ミアが頷く。


「複数の国家と企業が共同で進めていた形跡があります。」


---


管制室が静まり返る。


規模が大きすぎた。


七年前の事件の裏にしては。


あまりにも。


---


「父さんは何を見つけたんだ……。」


レオンが呟く。


---


ミアは新しいファイルを開いた。


「こちらはエドワード・アークライトの個人記録です。」


全員の視線が向く。


---


画面が切り替わる。


映像が再生された。


少しノイズが混じる。


そして。


七年前のエドワード・アークライトが姿を現した。


---


室内の空気が変わる。


レオンは息を呑んだ。


七年ぶりに見る父の姿だった。


---


『もしこの記録を見ているなら。』


『私は失敗したのだろう。』


---


静かな声だった。


だが疲労が滲んでいる。


---


『レオン。』


『お前に謝らなければならない。』


---


レオンの表情が強張る。


---


『私は間違った人間を信じた。』


『そして、その代償を支払うことになった。』


---


イリスが目を伏せる。


グレンも黙ったままだ。


---


『だが真実は残した。』


『必ず辿り着いてくれ。』


---


映像が乱れる。


ノイズが走る。


---


『信じるな。』


---


全員が顔を上げた。


---


『表に出ている人間を見るな。』


『本当に見るべき相手は――』


---


映像が途切れた。


画面が暗転する。


---


沈黙。


誰も言葉を発しなかった。


---


「そこで終わりか。」


サミュエルが低く呟く。


---


ミアは悔しそうに頷いた。


「データが破損しています。」


「残りの復旧には時間が必要です。」


---


レオンは画面を見つめていた。


間違った人間。


表に出ている人間ではない相手。


父は誰を指していたのか。


---


ミーミル計画。


七年前の襲撃。


マーカス・ヘイル。


全てが繋がっている。


だがまだ答えは見えない。


---


レオンは静かに立ち上がった。


「解析を続けてくれ。」


ミアが頷く。


---


「父さんが何を見つけたのか。」


「まずはそれを知る。」


---


復讐のためではない。


真実のためだ。


---


ノマドは静かに海を進む。


その先に待つものが何であれ。


レオンはもう引き返すつもりはなかった。


---


そしてその頃。


遠く離れた場所で。


ノヴァがデータを奪還したという報告が、ある人物の元へ届けられようとしていた。



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