第二十七話 反撃の狼煙
警備ユニットが前進を続ける。
重い足音が谷に響く。
片脚を損傷しているにもかかわらず、その巨体はなお進撃を止めない。
後方には施設警備隊。
崩れかけた施設出口から次々と姿を現していた。
---
サミュエル隊は谷の斜面を下りながら後退していた。
回収地点まではあと数百メートル。
だが警備ユニットに追いつかれれば終わりだった。
地上部隊の射撃が続く。
しかし装甲に火花を散らすだけ。
決定打にはならない。
レオンも振り返る。
巨大な機械兵器が岩を踏み砕きながら迫っていた。
---
その時。
背後で巨大な機械音が響く。
ヴァルハラ一号機。
三号機。
四号機。
三機の鋼鉄の巨人が立ち上がった。
敵兵たちの動きが止まる。
警備ユニットの単眼センサーが赤く明滅した。
新たな脅威を認識したのだ。
---
カイルは操縦桿を握る。
久しぶりの実戦だった。
《全システム正常。》
ATHENAが報告する。
「一号機、起動完了。」
マックスも三号機を前進させる。
「三号機、問題なし。」
---
四号機。
エリックは黙って照準を合わせていた。
視線の先には警備ユニット。
迫る巨体。
その姿を見ても表情は変わらない。
「エリック。」
カイルが通信を開く。
「やれるか?」
エリックは鼻で笑った。
「聞くまでもない。」
---
警備ユニットが重機関砲を向ける。
発砲。
轟音が谷に響いた。
だが。
その瞬間にはもう遅かった。
---
四号機がライフルを構える。
照準固定。
引き金を引いた。
高出力弾が一直線に飛ぶ。
次の瞬間。
警備ユニットの胴体中央へ直撃した。
轟音。
装甲が吹き飛ぶ。
さらに内部で誘爆が発生した。
爆炎。
衝撃波。
巨体が大きく揺れる。
そして。
そのまま崩れ落ちた。
---
谷全体が静まり返る。
誰もが目の前の光景を見つめていた。
歩兵部隊を追い詰めた警備ユニット。
その巨大兵器が。
たった一発で破壊されたのだ。
敵兵たちも思わず足を止める。
圧倒的な戦力差を理解したのだろう。
---
エリックが照準を下ろす。
「終わりだ。」
短い一言だった。
「相変わらず派手だな。」
マックスが呟く。
「弾の節約をしただけだ。」
エリックは素っ気なく答えた。
カイルは苦笑する。
「それを派手って言うんだよ。」
---
やがて敵部隊は後退を始めた。
撤退命令が出たのだろう。
《周辺脅威反応の低下を確認。》
ATHENAが報告する。
《作戦目標達成。》
《撤収を推奨します。》
---
サミュエルは大きく息を吐いた。
「全員、回収地点へ移動!」
地上部隊が移動を再開する。
レオンも施設へ最後の視線を向けた。
父が命を懸けて守ろうとした真実。
その鍵は既に手の中にある。
---
輸送機が高度を下げる。
地上部隊が順次搭乗を開始した。
最後の隊員が収容される。
「全員搭乗完了。」
サミュエルの報告が入った。
ヴァルハラ隊も回収位置へ移動する。
回収アームが展開される。
三機の巨人が固定された。
---
やがて輸送機は上昇を開始した。
谷が遠ざかっていく。
夜明けの光が山々を照らし始めていた。
---
輸送機内部。
レオンは回収したデータチップを見つめる。
七年間追い続けた真実。
父が残した最後の記録。
その答えが、この中にある。
七年間。
長かった。
だがようやくここまで辿り着いた。
レオンは静かに拳を握る。
「父さん……。」
誰にも聞こえない呟き。
だがその瞳には確かな決意が宿っていた。
真実への扉は。
今まさに開かれようとしていた。




