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第二十六話 撤退

警報が鳴り響く。


赤い警告灯が保守用通路を照らしていた。


レオンたちは全力で走る。


背後からは断続的な銃声。


追撃部隊が迫っていた。


「急げ!」


マックスが叫ぶ。


先頭を走るのはハンク。


その後ろにレオン。


カイル。


エリック。


最後尾をマックスが守る。


---


《追跡反応を確認。》


ATHENAが報告する。


《敵兵十五名以上。》


《警備ユニット一機。》


ハンクが顔をしかめた。


「まだ来るのかよ。」


エリックが振り返る。


通路の奥。


赤い警告灯の中を敵兵たちが追ってきていた。


さらにその後方。


巨大な警備ユニットの姿も見える。


脚部を損傷している。


だが止まってはいなかった。


《推定移動速度低下率四十パーセント。》


《完全停止には至っていません。》


「十分だ。」


マックスが短く答える。


「距離を稼げる。」


---


やがて前方に光が見えた。


保守用通路の出口だった。


ハンクが先に飛び出す。


冷たい山の空気が流れ込んできた。


夜明け前の空。


薄明かりが岩場を照らしている。


レオンたちも次々と外へ飛び出した。


その瞬間だった。


銃声。


岩陰から敵兵が姿を現す。


「外にもいるぞ!」


カイルが叫んだ。


施設警備隊だ。


出口周辺を封鎖するために配置されていたらしい。


---


「伏せろ!」


マックスがレオンを押し倒す。


銃弾が頭上を通過した。


ハンクが即座に反撃する。


岩陰へ向けて連射。


敵兵が身を隠した。


だが数が多い。


背後からは追撃部隊。


前方には警備隊。


完全な挟撃だった。


---


その時。


通信が開く。


《こちらサミュエル。》


《位置を確認した。》


《援護する。》


次の瞬間。


山の斜面から一斉射撃が始まった。


正確な援護射撃。


出口を封鎖していた敵兵たちが次々と倒れる。


サミュエル率いる地上部隊だった。


「第一班、左翼を抑えろ!」


「第二班、援護射撃継続!」


サミュエルの指示が飛ぶ。


地上部隊が岩場へ展開した。


敵兵たちは完全に足を止められる。


「今だ!」


サミュエルが叫ぶ。


「こちらへ来い!」


---


レオンたちは岩場を駆け抜ける。


サミュエル隊と合流した。


全員が重武装だった。


サミュエルがレオンを見る。


「データは?」


「回収した。」


短い返答。


サミュエルは頷く。


「なら撤収を開始する。」


---


その時だった。


轟音が響く。


保守用通路の出口が崩れた。


岩盤を砕きながら巨大な影が現れる。


警備ユニットだった。


片脚を引きずりながらも追ってきている。


その後ろには敵兵たち。


ハンクが呆れたように笑う。


「しつこい連中だな。」


エリックがライフルを構える。


「どうする?」


サミュエルは即答した。


「時間を稼ぐ。」


地上部隊が再び射撃を開始する。


だが警備ユニットは止まらない。


装甲に火花が散るだけだった。


---


その時。


上空から重いエンジン音が響いた。


全員が空を見上げる。


雲の切れ間から二機の大型輸送機が姿を現した。


ノマド所属の輸送機だった。


《こちらガレス。》


《迎えに来たぞ。》


通信越しの声にハンクが笑う。


「遅ぇよ。」


《文句は帰ってから聞く。》


ガレスが返した。


---


輸送機は谷の上空でホバリングする。


後部ハッチが開いた。


その内部で固定されていた鋼鉄の巨人が姿を現す。


ヴァルハラ一号機。


ヴァルハラ三号機。


ヴァルハラ四号機。


固定具が解除された。


次の瞬間。


ヴァルハラ一号機が輸送機後部から滑り出した。


続いて三号機。


四号機。


三機の鋼鉄の巨人が重力に引かれ落下する。


轟音。


谷底へ着地した機体が大地を揺らした。


土煙が一気に吹き上がる。


---


《遠隔起動開始。》


ATHENAが告げた。


三機のセンサーが光を灯す。


胸部装甲が展開する。


コクピットハッチが開いた。


ATHENAの遠隔制御によって、ヴァルハラは片膝をつく。


続いて巨大な腕が地面へ降ろされた。


搭乗補助動作だった。


---


警備ユニットはなおも前進している。


敵兵たちも続いていた。


距離は縮まっている。


カイルがライフルを握り直した。


「間に合ったな。」


マックスが頷く。


「ここからが本番だな。」


エリックは何も言わない。


その視線は既に敵へ向けられていた。


レオンは空を見上げる。


撤退はまだ終わっていない。


むしろここからが本番だった。


ヴァルハラ隊が再び戦場へ降り立とうとしていた


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