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第二十五話 守護者

《回収率八十五パーセント。》


ATHENAの報告が響く。


管理室を赤い警告灯が照らしていた。


敵兵たちは中央データ区画側の通路から接近している。


管理室入口を封鎖するように射撃を続けていた。


レオンたちは管理室内部から応戦する。


背後には保守用通路。


撤退できる道はそこしかない。


---


通路の奥。


巨大な警備ユニットがゆっくりと前進する。


重い足音が地下区画を揺らした。


ハンクが顔を引きつらせる。


「冗談だろ……。」


「ライフルでどうにかなる相手か?」


誰も答えなかった。


答えを持っていなかったからだ。


---


警備ユニットが停止する。


赤い単眼センサーが明滅した。


次の瞬間。


重機関砲が火を吹いた。


轟音。


管理室入口付近の壁が吹き飛ぶ。


破片が飛び散った。


「伏せろ!」


マックスが叫ぶ。


全員が身を低くした。


銃弾が室内を薙ぎ払う。


机。


壁面。


端末周辺。


次々と破壊されていく。


エリックが歯を食いしばった。


「化け物かよ!」


射撃が止まる。


わずかな隙を狙い、エリックとハンクが反撃した。


銃弾が装甲へ命中する。


火花が散る。


だが。


傷一つ付いていない。


カイルが顔をしかめた。


「効いてないぞ!」


《装甲強度を分析。》


《現在装備による有効打は期待できません。》


ATHENAが冷静に告げた。


---


その時だった。


レオンの通信端末に着信が入る。


通信相手はサミュエルだった。


《こちらサミュエル。》


《敵増援を確認。》


《降下地点は維持している。》


《だが施設周辺の敵戦力が増加中だ。》


《データ回収後は速やかに離脱しろ。》


レオンは表情を険しくした。


敵はこちらだけではない。


施設全体が警戒態勢に入っている。


マックスも状況を理解する。


「長居はできんな。」


《回収率九十パーセント。》


ATHENAが報告した。


あと少し。


あと少しで終わる。


---


警備ユニットが再び前進する。


重い足音。


圧倒的な存在感。


敵兵たちもその後ろに続いていた。


完全に押し込まれている。


ハンクが舌打ちした。


「このままじゃ突破されるぞ!」


その時。


エリックの視線が警備ユニットの脚部に止まった。


「待て。」


「脚だ。」


全員が振り返る。


エリックは続けた。


「関節部だけ装甲が薄い。」


ATHENAが即座に分析を開始する。


《解析。》


《脚部駆動機構を確認。》


《損傷を与えた場合、機動力低下の可能性があります。》


マックスが頷いた。


「止めればいい。」


「破壊じゃない。」


「動きを止める。」


レオンも理解する。


「脚部を狙え!」


---


だが敵兵の射撃が激しい。


まともに身を出せない。


マックスがライフルを構えた。


「俺が敵兵を抑える!」


連続射撃。


敵兵たちが一斉に身を隠す。


その隙だった。


エリックとカイルが飛び出す。


脚部関節へ集中射撃。


火花が散る。


続いてハンクも加わった。


銃弾が同じ箇所へ叩き込まれる。


警備ユニットが重機関砲を発射した。


壁が砕ける。


天井の一部が崩落する。


それでも射撃は止まらない。


そして。


カイルの一発が関節部へ深く食い込んだ。


《脚部損傷を確認。》


ATHENAが報告する。


続いてエリックの射撃。


ハンクの射撃。


駆動機構から火花が噴き出した。


警備ユニットの動きが止まる。


大きく体勢を崩した。


そして片膝をついた。


「止まった!」


カイルが叫ぶ。


敵兵たちの動きも一瞬止まった。


---


その瞬間。


ATHENAの声が響く。


《回収率百パーセント。》


《対象データの保存を確認。》


《データ回収完了。》


全員の表情が変わる。


終わった。


目的は達成された。


レオンは即座に決断する。


「撤収だ!」


レオンは背後の保守用通路を指差した。


「入口まで戻る!」


マックスが頷く。


「全員後退!」


脱出経路は侵入時と同じ保守用通路しかない。


エリックとハンクが援護射撃を行う。


カイルが最後に管理室を振り返った。


父の記録。


ミーミル計画。


全ては手に入れた。


後は生きて帰るだけだ。


---


一行は保守用通路へ向かって駆け出した。


背後では警備ユニットが再び立ち上がろうとしている。


完全には止まっていない。


《高脅威反応継続。》


《追跡の可能性があります。》


ATHENAが警告する。


レオンは振り返らない。


今は戦う時ではない。


真実を持ち帰ることが最優先だ。


地下施設に警報が鳴り響く。


その中をレオンたちは出口へ向かって走り続けた。


だが誰も知らなかった。


回収したデータの中に。


七年前の事件を覆す記録が含まれていることを。


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