第二十四話 接触
管理室が赤い警告灯に染まる。
耳障りな警報音が地下区画に響き渡った。
《武装反応接近。》
《到達まで三十秒。》
ATHENAの警告が続く。
ハンクは即座に管理室入口へ移動した。
「ここで迎え撃つしかねぇな。」
エリックも反対側の壁へ身を寄せる。
ライフルの安全装置を解除した。
マックスは端末を確認する。
「データはどうだ。」
《回収率五十パーセント。》
《完了まで約一分。》
カイルが顔をしかめた。
「長いな。」
「だが待つしかない。」
レオンは短く答えた。
父の記録。
ミーミル計画のデータ。
ここまで来て手放すわけにはいかない。
通路の奥。
複数の足音が近付いてくる。
規則正しい動き。
訓練された兵士たちだ。
やがて姿が見えた。
黒い戦闘服。
フルフェイス型ヘルメット。
統一された装備。
肩や胸部に所属を示すマークはない。
カイルが小声で呟く。
「こいつら……。」
「正規軍じゃないな。」
マックスも同意した。
「傭兵か。」
「あるいは施設専属の警備部隊か。」
先頭の兵士が管理室入口へ銃口を向ける。
ハンクの表情が険しくなる。
「来るぞ!」
次の瞬間。
銃声が響いた。
最初の一発が壁を砕く。
続いて双方が一斉に射撃を開始した。
激しい銃撃戦。
管理室入口に火花が散る。
エリックが正確な射撃で敵を牽制する。
「右だ!」
カイルが即座に反応した。
二人の連携射撃。
敵兵が身を伏せる。
だが敵も熟練していた。
不用意に姿を晒さない。
少しずつ距離を詰めてくる。
マックスが状況を確認する。
「四人。」
「いや、六人か。」
《通路後方に追加反応。》
《計九名を確認。》
ATHENAが報告した。
カイルが顔をしかめる。
「増えたぞ。」
「予想通りだ。」
マックスは冷静だった。
「施設警備隊なら増援が来る。」
その時。
敵側の通信が聞こえた。
「侵入者を確認。」
「管理室を封鎖しろ。」
「データ端末を破壊するな。」
レオンの表情が変わる。
「端末を守れ?」
エリックも気付いた。
「データを消したくないらしいな。」
マックスが頷く。
「この施設の情報は奴らにとっても重要ということだ。」
つまり。
この施設は今も運用されている。
そして。
守るべき何かが存在している。
《回収率七十五パーセント。》
ATHENAが報告する。
まだ終わらない。
敵は徐々に距離を詰めていた。
ハンクが物陰から射撃する。
「きりがねぇぞ!」
その直後。
通路奥から重い足音が響いた。
今までとは違う。
鈍く重い金属音。
全員の表情が変わる。
《新たな反応を検知。》
《大型兵装ユニット接近。》
「何だと?」
カイルが目を見開く。
敵兵たちが一斉に後退を始める。
まるで何かに道を譲るように。
通路の奥。
暗闇の中から巨大な影が姿を現した。
全高二・五メートルほどの人型機械兵。
厚い装甲板に覆われた全身。
関節部には剥き出しの駆動機構。
頭部には赤く光る単眼センサー。
右腕には重機関砲。
左腕には大型シールド。
人間離れした威圧感があった。
ハンクが思わず呟く。
「おいおい……。」
「何だあれは。」
ATHENAが即座に解析を試みる。
《該当データなし。》
《施設警備用戦闘ユニットの可能性。》
装甲兵の赤いセンサーが光る。
ゆっくりとレオンたちへ向けられた。
《警告。》
《高脅威目標を確認。》
《推奨行動――即時撤退。》
管理室の空気が一変した。
そして装甲兵が重機関砲を持ち上げる。
《回収率八十五パーセント。》
ATHENAの報告が響く。
もう少しだ。
だが敵は目の前にいた。
レオンはライフルを構える。
「回収完了まで持ちこたえるぞ!」
マックスたちも武器を構え直す。
敵兵。
警備ユニット。
そして父の記録。
全てを懸けた戦いが始まろうとしていた。




