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第二十話 封鎖記録

戦艦ノマド。


艦橋。


深夜。


艦内の照明は落とされていた。


勤務中の乗組員以外の姿はない。


静かな空間だった。


その中央。


レオンは一人でモニターを見つめていた。


表示されているのは七年前の襲撃事件。


そして。


ATHENAが発見した封鎖記録だった。


《復元作業を継続中。》


「まだか。」


《暗号化レベルが高いため時間を要しています。》


レオンは小さく息を吐く。


七年間。


何も見つからなかった。


今さら数時間待つことなど苦ではない。


だが。


焦りはあった。


父が命を懸けて残したもの。


その正体に初めて近付いている。


そんな予感がしていた。


《新たな記録を復元。》


ATHENAの声が響く。


レオンは顔を上げた。


「表示しろ。」


モニターに古い映像が映し出される。


日付。


七年前。


襲撃の三日前だった。


映像はアークライト財団本部。


監視記録らしい。


長い廊下を一人の男が歩いている。


エドワード・アークライト。


レオンの父だった。


レオンは思わず身を乗り出す。


七年前の父の姿。


今まで写真でしか見たことがなかった。


父は周囲を警戒するように足を止める。


そして。


誰もいないはずの会議室へ入った。


扉が閉まる。


数秒後。


別の人物が現れる。


黒いコート。


帽子を深く被っている。


顔は見えない。


男は周囲を確認すると同じ部屋へ入った。


レオンの眉が動く。


「誰だ。」


《不明。》


《映像情報不足。》


映像が切り替わる。


今度は会議室内部だった。


だが。


画面は激しく乱れている。


音声も途切れ途切れだった。


『時間がない。』


父の声。


レオンは無意識に拳を握る。


『計画は……』


ノイズ。


『もう始まっている。』


知らない男の声。


『止めるべきだ。』


父の声。


『ミーミルは……』


激しいノイズ。


『今さら……無理だ。』


映像が大きく乱れる。


そして。


完全に途切れた。


レオンは黙る。


今。


確かに聞こえた。


ミーミル。


聞いたことのない言葉だった。


だが。


父が口にした以上、無関係とは思えない。


「続きを復元できるか。」


《試行中です。》


《成功率は低いと予測されます。》


再び時間が流れる。


静かな艦橋。


聞こえるのは機械音だけだった。


数分後。


ATHENAが新たな報告を行う。


《追加データを復元。》


モニターが切り替わる。


今度は映像ではない。


文書ファイルだった。


レオンの視線が鋭くなる。


ファイル名。


『MIMIR計画』


聞いたことのない名称だった。


だが。


父に関する封鎖記録の中で初めて現れた固有名詞だった。


「ミーミル計画……。」


ATHENAが答える。


《関連記録多数。》


《ただし閲覧制限あり。》


レオンはファイルを開く。


次の瞬間。


赤い警告表示が現れた。


《アクセス拒否。》


レオンが眉をひそめる。


「開けない?」


《閲覧権限不足。》


ATHENAは淡々と答える。


レオンはモニターを見つめた。


封鎖記録。


そしてミーミル計画。


そこまで辿り着きながら。


肝心の中身だけが見えない。


《補足情報を発見。》


「表示しろ。」


新たな画面が開く。


そこに表示されたのは短い項目だった。


『関連人物』


レオンは目を細める。


その下に一つの名前が表示される。


『エドワード・アークライト』


父だった。


レオンは息を呑む。


偶然ではない。


だが。


それだけでは父が何をしていたのかまでは分からない。


《追加情報を検出。》


レオンは顔を上げる。


「何だ。」


モニターに新たな文字列が表示される。


『計画概要』


その下には短い説明が残されていた。


『次世代統合支援計画』


『戦場情報統合システム』


レオンは眉をひそめる。


断片的な情報だけでは全容は見えない。


だが。


単純な兵器開発計画ではなさそうだった。


戦場情報。


統合支援。


父は何を作ろうとしていたのか。


《記録の大部分は欠損しています。》


ATHENAが告げる。


だが。


収穫はあった。


ミーミル計画。


父との関係。


そして。


まだ隠された記録の存在。


七年前の事件は。


レオンが思っていたより遥かに大きな何かへ繋がって

いる。


そんな予感がしていた。


《復元作業を継続します。》


ATHENAの報告が響く。


まだ分からないことの方が多い。


だが。


確実に前へ進んでいた。


レオンは静かに席へ腰を下ろす。


「続けろ。」


《了解。》


ATHENAは再び解析を開始する。


モニターには『MIMIR計画』の文字が残されていた。


父が関わった謎の計画。


七年前の襲撃事件。


そして封鎖された記録。


全てが一本の線で繋がろうとしていた。


レオンは画面を見つめる。


答えはまだ遠い。


だが。


確実に近付いている。


七年前の真実へ。


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