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第十五話 逃亡

最前方空域。


大型ヘリ周辺。


ヴァルハラ二号機はなおも回収部隊と交戦していた。


ヴァイス。


護衛機二機。


三機による包囲。


ヘリとの距離はさらに広がっている。


《目標との距離、一二〇〇メートル。》


ATHENAが告げる。


リディアは舌打ちした。


「逃がす気満々ね。」


ATHENAが新たな情報を検知する。


《敵部隊内部通信を傍受。》


短い男の声。


《任務継続。》


《優先事項に変更なし。》


護衛機二機が即座に隊形を変更した。


リディアは眉をひそめる。


「命令一つで動くのね。」


《敵部隊の統制率は極めて高いと推定。》


次の瞬間。


護衛機が左右から接近する。


挟撃。


《敵機接近。》


《回避推奨。》


二号機が急旋回する。


機関砲弾が夜空を裂いた。


さらに。


白線機。


ヴァイスが加速する。


白いラインが夜空に残像を描く。


《敵指揮機接近。》


《後方警告。》


リディアは咄嗟に機体を反転させた。


超高速弾。


紙一重で回避。


「しつこいのよ!」


今度は逃げない。


照準。


左側の護衛機。


電磁加速ライフル。


発砲。


一発。


二発。


三発。


護衛機が回避を続ける。


だが。


四発目。


弾丸が主翼を貫いた。


火花。


姿勢が崩れる。


リディアは追撃した。


引き金。


轟音。


護衛機の胴体が爆散した。


ATHENAが報告する。


《敵護衛機撃墜を確認。》


リディアが笑う。


「一機!」


ATHENAが報告する。


《敵部隊統制継続を確認。》


《編隊に乱れはありません。》


仲間を失っても敵は動揺しない。


その瞬間。


ヴァイスが急加速した。


白線が夜空を切り裂く。


《敵指揮機接近。》


リディアは回避機動。


しかし。


間に合わない。


轟音。


超高速弾が二号機の左腕部を掠めた。


火花。


警報。


ATHENAが報告する。


《左腕部外装損傷。》


《照準精度低下。》


リディアは舌打ちした。


「ただのかすり傷じゃないってわけ。」


それでも操縦桿を握り直す。


完全にヘリへの進路を塞がれていた。


その頃。


大型ヘリ内部。


護衛が報告する。


「護衛機一機喪失。」


マーカスは静かにモニターを見つめる。


「予想より早いな。」


護衛が尋ねる。


「問題ありませんか?」


マーカスは即答した。


「問題ない。」


「任務に支障はない。」


「ヴァイスがいる。」


その頃。


後方空域。


カイルはなおも第二迎撃隊と交戦していた。


ATHENAが報告する。


《二号機交戦継続中。》


カイルは前方を見つめる。


「持ちこたえろ。」


「リディア。」


その頃。


戦場西側。


ヴァルハラ三号機。


マックスは全速力で接近していた。


《目標空域まで十秒。》


ATHENAが報告する。


モニターに敵影。


ヴァイス。


そして護衛機一機。


マックスは目を細める。


「ようやく見えたか。」


推力上昇。


三号機が空気を裂く。


最前方空域。


ヴァイスが再び加速する。


リディアの背後。


死角。


《被弾予測。》


《回避困難。》


リディアが振り返る。


間に合わない。


その瞬間。


夜空を一条の光が駆け抜けた。


轟音。


長距離射撃。


ヴァイスが機体を傾ける。


砲弾が機体脇を掠めた。


初めてだった。


ヴァイスが明確な回避行動を取ったのは。


リディアが笑う。


「来た!」


通信回線が開く。


《生きてるか。》


聞き慣れた声。


マックスだった。


「遅い!」


《文句なら後で聞く。》


リディアは機体を並べる。


「一機落としておいたわ。」


《十分だ。》


《無茶をするな。》


「誰のせいよ。」


二機のヴァルハラが並ぶ。


初めて。


回収部隊の包囲が崩れた。


残る護衛機がヴァイスの横へ移動する。


二対二。


戦況が変わる。


ATHENAが警告する。


《敵編隊機動変化。》


《指揮機による統制と推定。》


残る護衛機が即座に機動を変更する。


そして。


ヴァイス自身が加速した。


今までより速い。


《敵機出力上昇。》


《高機動モードへ移行した可能性。》


一直線。


狙いは。


マックス。


「来るぞ!」


リディアが叫ぶ。


マックスは即座に反応した。


照準。


発砲。


同時に回避機動。


轟音。


超高速弾が三号機を掠めた。


火花。


警報。


《左推進器軽微損傷。》


《機動性能三%低下。》


マックスの表情が険しくなる。


「速いな……。」


掠っただけ。


それだけで損傷した。


ヴァイスは静かに機首を向ける。


マックスも照準を合わせる。


リディアは二機の間に視線を向けた。


夜空の中央。


二人のエースが向かい合う。


戦場の空気が変わる。


誰もが理解していた。


ここからが本番だと。


その背後で。


大型ヘリはなおも闇の彼方へ飛び続けていた。


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