第十一話 合流
夜空。
逃走する大型ヘリ。
その周囲を飛ぶ四機の戦闘機。
第二迎撃隊。
その後方。
ヴァルハラ二号機。
リディアは操縦桿を握り締めていた。
《ATHENAより警告。》
《追加推進剤パック損傷。》
《推進効率七十四%。》
《目標との距離拡大中。》
警告表示が赤く点滅する。
「最悪ね。」
ヘリとの距離は再び開き始めていた。
せっかく追い詰めた。
だが今は第二迎撃隊が壁になっている。
「時間稼ぎなら成功してるわよ。」
小さく呟く。
その頃。
ヘリ機内。
護衛たちは安堵していた。
巨大兵器の追撃が鈍った。
それだけで空気が変わる。
だが。
マーカスだけは楽観していなかった。
「油断するな。」
窓の外を見つめる。
「まだ終わっていない。」
護衛が戸惑う。
「しかし追撃は――」
「一機だけだと思うか?」
護衛は言葉を失った。
マーカスは考えていた。
施設を襲撃した組織。
巨大兵器を複数保有。
高度な電子戦能力。
周到な作戦計画。
偶然ではない。
全て準備されていた。
「まだ何か来る。」
低い声だった。
その頃。
上空別空域。
ヴァルハラ三号機。
第一迎撃隊との戦闘は続いていた。
爆発。
曳光弾。
ミサイル。
夜空が光で染まる。
《ATHENAより報告。》
《追加損傷を確認。》
《左腕部装甲損傷。》
《損害軽微。》
マックスは笑った。
「しつこい連中だ。」
アレックスは三号機を追う。
目の前の敵は危険だ。
だが。
なぜ戦い続ける。
なぜ撤退しない。
疑問が頭をよぎる。
その瞬間。
通信が入った。
《第二迎撃隊より報告。》
《目標ヘリ防衛継続中。》
アレックスの目が細くなる。
防衛。
つまり。
「こちらは囮か。」
ようやく理解した。
三号機の任務。
自分たちを引き付けること。
そして本命はヘリ。
アレックスは即座に命じた。
「二機はそのまま追撃。」
「残り二機はヘリ支援へ向かえ。」
「本命はヘリだ。」
「奴らを合流させるな。」
《了解。》
戦闘機二機が進路を変える。
マックスはそれを見て笑った。
「そう来るか。」
「だが簡単には行かせん。」
その頃。
ノマド。
管制室。
ミアが叫ぶ。
「敵機二機が離脱!」
大型モニターに新たな軌道が表示される。
イリスの表情が変わった。
「二号機へ向かっています!」
レオンは即座に判断する。
「三号機は足止め継続。」
「一号機は急げ。」
《了解。》
その頃。
夜空。
ヴァルハラ一号機。
カイルは全速力で飛行していた。
背部推進機が唸る。
機体各部のスラスターが噴射を続ける。
《ATHENAより報告。》
《目標空域まで六十秒。》
カイルは前を見据える。
「持ちこたえろ。」
誰へ向けた言葉か。
自分でも分からなかった。
その頃。
二号機。
新たな警告が表示される。
《ATHENAより警告。》
《敵機二機接近。》
《第一迎撃隊所属機と識別。》
リディアは顔をしかめた。
「冗談でしょ。」
第二迎撃隊四機。
さらにアレックスが送り込んだ二機。
計六機。
状況は悪化していた。
ハーランドもそれを確認する。
「包囲を完成させる。」
「逃がすな。」
戦闘機隊が広がる。
六方向。
完全包囲。
ヘリはその中央を飛行する。
リディアは歯を食いしばった。
撃てばヘリを巻き込む。
撃たなければ距離が開く。
最悪の配置だった。
その時。
通信音が響いた。
《こちら一号機。》
聞き慣れた声。
リディアが笑う。
「遅い。」
《悪かったな。》
次の瞬間。
夜空の彼方。
青白い光が出現する。
鋼鉄の巨人。
ヴァルハラ一号機。
カイルだった。
第二迎撃隊のパイロットたちが息を呑む。
「もう一機!?」
ハーランドの顔色が変わる。
「増援だと……。」
カイルは状況を確認する。
ヘリ。
二号機。
戦闘機六機。
敵の配置は見えた。
突破口を作るには十分だった。
《リディア。》
「何?」
《俺が道を開く。》
《お前はマーカスを追え。》
一瞬の沈黙。
そして。
リディアが笑った。
《了解。》
遠方では爆発光が瞬く。
三号機と第一迎撃隊の戦闘はなお続いていた。
マックスは敵機を引き付け続けている。
その光景を見たマーカスは静かに呟く。
「やはり来たか。」
表情は変わらない。
だが。
胸の奥で警鐘が鳴っていた。
二機のヴァルハラ。
逃走するヘリ。
包囲する戦闘機隊。
夜空で全てが交差する。
突破作戦が始まろうとしていた。




