本性
「ま、待ってチェレーゼ」
「……どうしてです?」
「こ、この国って拷問は合法なの!?」
「合法なわけねーよ! 助けてくれよ」
オリバーは哀れっぽい声を出しながらも、ヘラヘラと笑っている。私は多少不愉快になりながらそれを無視した。
「チェレーゼは……人を痛めつけるのが好きなわけじゃないでしょ……? この人が何をしてるかはわからないけど……チェレーゼが手を汚すぐらいなら、もっといい方法が」
私の固有魔法を使えば。そう言いそうになったところで、ピグトニャから待てが入る。
「ソメヤやめろ!」
「……どうして?」
「はっきり言っておく……姉さんや俺は荒事に慣れている。おまえが心配することは何もない。上で休め」
「……」
「姉さんのことが気がかりなら、俺がやる……! 俺はもう神に背いた身だ。何も心配はいらない。そうだよ姉さん、ここは俺が」
「ダメです。ピグトニャは優しすぎる。子供の頃から……。本来ピグトニャみたいな子こそ神官であるべきなのに……ずっと続けてられるのは、私みたいな精神性の人間なんですよねえ……」
チェレーゼはそう言いながら、ど、れ、に、し、よ、う、か、な。と、おもちゃを選ぶような明るい声で口ずさみ始めた。翻訳されて耳に届く言葉と、原語でのリズムが違うのか、チェレーゼの綺麗な指は違和感しかないリズムで拷問器具の上を跳ね、ある一点で止まった。
「さて……」
「ねえお願い、チェレーゼ、一旦上に戻ろう? 私の話を聞いてくれてからでも」
「おい」
「確かめたいこともあるの。チェレーゼたちが来る前に、この人が私に言ってたことが、本当なのか……とか。かなり重要な話……」
チェレーゼがこちらを振り向く。その瞳は拷問者らしい冷たさを宿していたが、私が半分涙目になっているのを見て、すこしドギマギし、人間味が差し込んだ。
「……まぁ、それを先にした方が、効率はいいですね」
「でしょ!? ね、一旦上に戻ろ……ピグトニャも……」
「……わかったよ。オリバー! 後でまた来るからな、逃げられると思うなよ」
「はいはい、回復の時間くれてありがとさん」
「ちっ……いくら回復しても無駄ですよ」
私は最後に、オリバーの方を見た。彼はそれに気がつき、にたりと笑う。
「チェレーゼのお仲間を辞めたくなったら、いつでも来いよな……待ってるよ」




