家族団欒
「姉さん! ソメヤ!」
「あら、ピグトニャ……もう終わりましたよ。連絡をくれてありがとうございました」
「はぁっ、はっ、はぁっ、よかった……って、それ、オリバー?」
「ええ。2年ぶりですね。このままパパも呼んで家族団欒しますか? ねえオリバー」
「するかよボケ……ッ」
全力疾走してきたのか、息を切らしたピグトニャが入ってくる。私のテレパシーは伝わっていたのだ! 会話から察するに、私のテレパシーを受信したピグトニャが、より近い場所にいるチェレーゼに連絡し、その後ふたりとも急いで助けに来てくれたのだろう。
「ピグトニャ、久しぶりだなぁ! 俺のとこにッゴェッ」
「行きませんよ。懲りるということを知りなさい」
チェレーゼは容赦なく鳩尾を狙って蹴り飛ばす。この状況でも軽口を叩けるオリバーの胆力はすごい。
「相変わらずだな……どこから情報を得た? というか……いつから出所していた? 2年前の裁判で、懲役5年だったはずだろ」
「言うかよバーカ」
「もしかして脱獄か? 警察に送り返すべきか?」
「こんだけボコボコにされてりゃテメェの愛しの姉さんも暴行罪で刑務所行きだろが!」
「正当防衛です。それに家族内のトラブルって逮捕されにくいですから。鍵屋という第三者を騙してるあなたは捕まるでしょうけど」
そう言いながら、さらにチェレーゼはオリバーの顔面をぶん殴った。つい、それは過剰防衛では、と思ってしまう。
「愛しの勇者様は俺を憐れんでくれてるみたいだぜ」
「まだ勇者様ではありません……簡単にその名を口にするな」
「おーおー悪かった、愛しのユーシャ様は先代のことだもんな」
「減らず口を叩けなくする魔法を教えてあげましょうか?」
オリバーはごろんと寝っ転がり、降参降参、とつぶやく。
「ハイハイ俺の負け。才能あるチェレーゼちゃんには勝てませーん。もう二度と手は出しませーん」
「姉さん、こんなゴミでも、殺したら流石に逮捕される」
「ちっ、法律が無かったら殺しているんですが……」
チェレーゼの舌打ちなんか初めて聞いた。ほんの少し、チェレーゼの素顔を垣間見た気がする。
「えっと……このオリバーさん? のことはどうするの?」
「ブタ箱にブチ込むしかないですね。反省というものを知りませんから。脱獄罪に加えて微罪とはいえ詐欺、変身術の違法利用……できればそこに、ソメヤ様への脅迫、誘拐未遂、なんならナイフを持ち出しているので殺人未遂も掛け合わせて……まぁ、追加で8年ぐらいは捕まっていて欲しいものです」
「いくら捕まえても無駄だろ! 現に俺はここにいるんだからな! 人を簡単に殺せない法律に感謝だぜ」
「へえ、やっぱり脱獄してきたんですね。模範囚への恩赦ではなかったと」
「やっべ」
この子は少しアホなんだろうか。
「姉さん、警察呼ぶ前に、こいつが何をしにきたのか把握しておきたいんだけど……」
「それもそうですね……地下牢にでも入れますか」
「この家地下牢あるの!?」
チェレーゼは、ええ、とこともなげに頷き、オリバーに目隠しと耳栓をし始めた。
「あそこならオリバーの力も無効化できます……詳しいことは後で。このカスを連れて行きましょう」
「……姉さん。こいつがゴミクズなのは百も承知だけどさ……」
「いいんです。ピグトニャ……あなたは優しすぎる」
「……」
ピグトニャは黙り込む。チェレーゼは、視覚も聴覚も奪われたオリバーを、雑に掴んで運んでいく。私も慌てて彼らの後を追った。




