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ピックアップ!

 充実したモーニングを嗜んだ後、シスコンとブラコンは仕事のためにそれぞれ去っていった。私は一人家に戻り、先日購入したパソコンで『国際魔法連合軍』と検索した。メヒェリエ大辞典の他、国際魔法連合軍ピグイタン支部公式サイトがヒットする。『ピックアップ! 救われた方の声』という特集ページが目について、開いてみると、何人かの顔写真と体験談がずらりと並んでいて、クリックすれば詳細に飛べる仕組みになっていた。その中に、アマリを見つける。たしかに、他国出身だとは言っていたが、驚いた。好奇心のままにページを開く。


お名前:アマリ・ダズ

母国:バブーフ王国

移住先:ピグイタン王国

体験談:


 きっかけは11歳の頃、インターネットで見かけた魔法指南の動画でした。ふざけて試しただけで、実際に魔法を使おうなんて思っちゃいませんでした。


 そもそも、タイピングで魔法を使える人がいるだなんて、いや、魔法という存在自体が、嘘だと思っていました。昔、インターネットで、ピグイタンに流通している呪文書のデータを手に入れて打ってみたけれど、何も出なかったから。


 けれど、あの日は出たんです。後から聞いた話だと、俺が不正に持っていた呪文書(真似しないでね!)は高難度な魔法で、単に力量が足りないだけでした。あの日見ていた入門動画で使われていたのは、基本呪文の防御せよ(シルドラ)と、熱よ集まれ(イグニャ)……ぐらいでした。どうやら熱魔法が得意だったようで、ボヤ騒ぎを起こしてしまって、この動画の真似をしたらみんなできる、と言い訳をしました。結果、自分だけが特別だったと知りました。


 放火魔扱いされて、少年院に入りました。手錠と腰縄をつけて法廷に入ったとき、傍聴席に家族がいないかを探しました。誰もいませんでした。母さんも父さんも兄さんも。後で聞いた話、魔法適性者を産んだ家として迫害されて、とても法廷に来られる状態ではなかったそうです。こんな情けない姿を見られなくてよかったという気持ちと、家族にも見捨てられたという気持ちが、同時にありました。


 数年間を少年院で過ごしました。どれだけおとなしくしていても、模倣犯として扱われるどころか、難癖をつけられて何度も懲罰房に入りました。作業も、キーボードを使うものは避けられました。初めて魔法を使ったのが、キーボードによる詠唱だったからです。学問もほとんどさせてもらえず、つらい肉体労働の後も自由意志で横になることさえできない日々を送るうちに、17歳になっていました。


 18歳の誕生日の直前、青年刑務所に行くか釈放されるかの裁判を前にして、面会に来てくれたのが連合軍の方でした。その方の助力で釈放が決まり、何年かぶりに広い空を見たとき、涙が出ました。少年院の空は狭かったんです。その上、非適性者の家族を探す手伝いまでしてくれました。家族まで助ける、自国で受け入れる、と言ってくれたのは、ピグイタン支部の方だけでした。とても感謝しています。


 今は、ピグイタン王国で魔法のプロとして働いています。これを見ている、迫害を受けた魔法適性者の人たちが、一刻も早く安全な場所で身を落ち着けられるよう祈ります。そのときはぜひ、ピグイタンの魔法大会も見に来てください。


※国際魔法連合軍ピグイタン支部では、魔法差別被害者の方へ向けて、安全基地への緊急避難や、難民申請のお手伝いをしています。また、魔法適性の有無に関わらず、ご家族や親しい方も併せて保護します。お困りの方、お困りの方をご存知の方は、以下の連絡フォームよりお気軽にご相談ください。

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