誤解
「ピグトニャ……あんた体調不良をいいことにソメヤ様を家に連れ込んで……?」
「ちがうって、マジでちがう」
「いや……でも……元勇者パーティと次代勇者候補……お互い相手にとって不足なし……?」
「ちがうって!」
ピグトニャの焦った声で目が覚めると、玄関先でチェレーゼとピグトニャが言い争っている声が聞こえた。私はあくびをしながらそちらへ歩いていく。
「どうしたの……」
「あっ……」
「……寝巻きまで貸してあげるなんて、素晴らしく親切ですねピグトニャ?」
「よく見て姉さん! これ普段着のシャツ! 寝巻きじゃない!」
「屁理屈でしょうそれは……!」
チェレーゼは靴を脱ぎ、私の胸元へ飛び込んできた。私は少しよろめく。チェレーゼは私の体をボディチェックでもするように叩いて確認し、特に胸の辺りに触れた。服にこの時期では暑すぎるぐらいの厚みがあることを確かめ、肌着を着せていることも確かめると、安心したように抱きついて問いかけてきた。
「変なことされてません? 体調は大丈夫ですか? もう、うら若き女性を家に連れ込むなんて……」
「大丈夫、大丈夫だって、なんもされてないから。体調が悪くて一人でいるのが心細かったから泊めてもらっただけ。それに、うら若きって歳でもないよ」
「でも寝巻き姿を……」
「そ、そんなにこっちでは貞操の危機的な感じなの……?」
チェレーゼはため息をつき、「着替えましょう、ピグトニャはそこで待ってて」と私を部屋まで押し戻した。着替えは畳んで置いてあり、私は半分寝た頭のままなんとか着替え終えた。そういえばいつも、着替えを用意してもらったり、言われるがまま目の前で着替えたりしているが、女性の前で着替えるのは問題ないんだろうか? 大浴場とかプールでは仕方ないけれど、一緒に住んでるからって着替えを見られるのは、同性でもなんかおかしい距離感な気がする。でもまあ、いいか。起こしてもらってるし。
「勘弁してほしいぐらい女性に対して紳士的なピグトニャだからまだいいですが……他の男性の家に入ってはいけませんよ、ピグイタンでは……」
「大丈夫、大丈夫! わかってるって。私が無理言ったの」
「……そんなに体調が悪かったのですか? ちょっと気分の悪くなる依頼でしたからね……何かありました? それとも風邪とか……あ、慣れないお弁当に当たったとか……」
「ほんとに大丈夫! もう治ったよ、すっかり。ごめんね心配かけて。むしろチェレーゼは大丈夫だった?」
「なんとかなりましたけど疲れましたね……あとで情報共有しましょう」
チェレーゼは玄関に向かって、部屋に入る許可を出した。それを受けたピグトニャがとぼとぼと歩いてくる。
「姉さん、なんでわざわざうちまで……」
「ピグトニャが未読無視するから」
まるでカップルのような会話をする二人に、私は少し呆れてしまう。
「こりゃピグトニャの婚期も遅れるわけだわ」
「ソメヤ様、やっぱり私の過干渉が良くないと思います?」
「んーまあでも、それを受け入れてるピグトニャがシスコンだよね。アンチスレでもシスコンって言われてたし」
「おまえなぁ……」




