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蝋燭の日のような


名前:サルーニャ・トゥー

年齢:10

性格:本来は好奇心旺盛なものの、抑圧されている。自責傾向が強い

能力:魔法使用不可(原初魔法含む)。手先が器用

天啓:未取得


 ……これらは、サルーニャと話している間、こっそりと覗き見ていた彼女のステータスだ。以降、私はずっとステータスを……彼女の心理を観察しながら言葉を選んできた。


──我に見せよ、あなたの心を……もっと。


 サルーニャは生来の好奇心ゆえか、キーボードへの反応は悪くない。おずおずとキーを押し、どうしてこれが魔法につながるのか、どうしてこれがかっこいいとされるのか、そんなことを考えているようだった。初心者用の簡単なゲームをやらせると、多少楽しそうに何回かプレイしていたが、ふと、まだ途中なのに手を止めた。飽きたのかと思ったが、どうやら違いそうだ。


「ソメヤ」

「どうしたの?」

「サルーニャがタイピング、しても、魔法できない?」


 それは前向きな期待というよりは、諦めのこもった声色だった。彼女の心は揺れ動き、ひとつの希望に達しようとしている。私はそれをアシストするために、ここにいる。


「……できない」

「どうして?」

「私もわからない。チェレーゼもわからないと思う……多分この世の誰も、わからない」


 サルーニャの内部の魔力が、行き場を失ったように循環しているのが見える。魔力というのは血液と同じように体内を循環しているが、本来体外から来るものであるらしい。それが私たちのいのちとして体内を巡る。生命という大魔法を成し遂げる強大なエネルギー……それは適性者も非適性者もなく、すべての人にもたらされている。


「……サルーニャは、どうしても魔法、使えない?」

「……うん。使えない。他の魔法が使えない人たちと同じように」


 固有能力で見る限り、魔力の量は個人差が大きいが、魔力のない人はいない。魔力が少なくても軽々と魔法を使いこなす人もいれば、内に秘めた巨大なエネルギーを持て余している非適性者もいて、見た目だけではまるでわからない。実際100年ほど前まで、固有能力以外では、物心ついた頃に魔法の指南をすることでしか、適性の有無は確認できなかったらしい。しかしその技術は海を超えた先、この少女の生まれた地で磨かれ続け、ついには、生後半年程度でほとんど確実に判定できるほどに育った。


 彼の国は言う。生まれたて、いいや、体内にいるうちから魔法適性を判定する技術が開発できれば……世界から魔法差別は消え去り、人類はまたひとつ高いステージに登ると……平和になると。


 しかし、私たちはそれに頷かない。魔法国でありながら、決して彼らに与しない。そのためには、魔法適性がないことを嘆く小さな心を救わなければならない。


「サルーニャちゃん」


 親に嫌われる、という根源的な恐怖。何をしても意味がないという絶望。まるで彼女そのものになったかのように、ありありと見える。無防備な幼い精神は、皮を剥いた葡萄のようだ。その瑞々しい甘味に手を伸ばし、今にも食べようとしている暗闇に、私は蝋燭だけを持って立ち向かう。か細く、風が吹けば消えてしまうほどの炎だが、これは彼女の内にあるものだ。たったひとつだけ、そんなことを考えてはいけないと思い、押さえつけながらも、こっそりと願い続けていた希望……。


「タイピングしても魔法はできないけど……それは、片脚ですごしたり、喋らずにすごしたりしても、同じ。何をしても、同じなの」

「……」


 何をしても同じ。その言葉に、サルーニャの体はかすかに震えた。

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