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アーカイブ


「これ、魔法? ソメヤ、まだ?」

「そうだよ。私はもうちょっとしたら出てくるはず」


 自己紹介を終えた私は、宣言通りピグイタン最強決定戦のアーカイブをサルーニャに見せていた。サルーニャはこの手の大会をあまり見たことがないらしく、興味深そうに眺めている。私はそんな彼女の様子を眺め、年と話す内容の辿々しさの割に少し大人びて見えるのは、痩せていて頬の膨らみがないからなのかと、この子の人生の苦労を思った。彼女の視線の先にある動画は、シークバーをなかなか思い通り動かせなかったので、自分の出番より数分前からの再生となっている。


「ピグトニャ、神官、様だ」

「よく知ってるね〜」

「家に、カレンダーある、から」


 今のピグトニャは神官どころか無神論者だし、私はそういう彼しか知らないけれど、この子の知る彼は神官様なのだと思うと不思議な思いがした。画面の中のピグトニャ……私の知っている方のピグトニャは、相手を一歩も寄せつけず、スマートに勝利へ向かっている。アーカイブのコメントも、「すげえええええええ」「さすが」「ピグトニャ一強つまらん」など彼の強さを讃える内容で溢れかえっている。相手はダウンし、汗を手首の内側で雑に拭って一息つく彼の様子がアップで映し出された。そこで、サルーニャの手が動画を停止させる。


「……かっこいい」

「ピグトニャが?」

「……ソメヤ、ピグトニャ神官様と、知り合い?」

「一緒のチームだからね。友達だよ」

「すごい」

「私は何もすごくないよ、今度会わせてあげよっか」


 するとサルーニャはわずかに頬を染め、目を伏せ、もごもごと、別にいい、と言った。テスといいサルーニャといい、彼は年下特効でもあるんだろうか。それにしても子供の照れ隠しはわかりやすくて愛らしい。サルーニャはもういいとばかりに、また動画を再生する。


『なぜ……なぜ、お前が大将じゃない? 毎年、大将だっただろ』


 あ、と声が出た。


『簡単なこと……今、ここに……俺より強い奴がいる』


 ついに私にカメラが向いた。驚いたのか慣れてないのか間抜けなツラを晒し、あはは、どうも、なんて、見るからに困ったような声を出している。コメント欄も荒れている。「激アツ」「誰?」「だれ?」「これマジ?」。


『これがっ! ピグトニャが認めた選手! 名前はソメヤ……イストゥール、なんと、プロ登録から1ヶ月も経っていません! 完全無名の選手です!』


 こいつが次代勇者候補だと言われても、この時点では誰も信じてくれないだろう。それほどに私の見た目は、なんというか、自信に欠けていて、弱そうだ。恥ずかしー、と思いながらサルーニャを見やると、心の底から驚いた、という顔をしていた。


「ソメヤ……ピグトニャ神官様より、強いの!?」

「んー、あはは……どうかな。まだ魔法習ったばかりで、慣れてないから」

「でも、ピグトニャ神官様、そう言った! ソメヤお願い、教えて、」


 サルーニャはくるくると表情を変え、私の服を引っ張り、興奮したようにせっついてくる。


「魔法を教えて、教えてくれるんでしょ?」

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