隠密行動
[しばらく声が出せないのでこれで。そっちの声はミュートしています]
「わかった! いや、聞こえないんだったわ」
[これから通報しますが時間がかかるかも。極力安心させて、こちらは味方だと意識づけるように。指示があるまで動かないで。保護隊が来るまで公園で遊んでて。私は儀式を行います。ご武運を]
おそらく、見えないキーボードでタイピングしてこちらに連絡しているのだろう。あれなら打鍵音も響かないように設定できる。口調が乱れているのも、打鍵数を減らすためだと推測できる。隠密行動にも使えるなんて、タイピングは便利だ。声にしても聞こえないので、心の中で了解、と呟き、サルーニャの方を振り返った。
「サルーニャちゃん、その脚……」
「……!」
抱っこしようか、と言おうとしたら、本人が全力で首を振った。
「あし、触ると、お、怒られる。か、か、カメラある」
私がそっと玄関へ目配せすると、確かに防犯カメラがあった。喋っているということは、音は聞こえないのだろう。
「……公園に行ったら、これはずそうか。喋っても大丈夫。大丈夫だからね」
「こ、わい」
「怖いか」
「ま、魔法、つかえなくなるから、こわい」
「……」
まずはカメラから離れるのが先だと考え、それ以上は首を突っ込まずに歩き出す。
「……前回のピグイタン最強決定戦見た?」
サルーニャは首を振った。親は見ていたのに子は見せてもらえないのか。それとも、単に興味がないのか。そこまではわからない。
「そっか。じゃあ後で見てよ。私こう見えてピグイタン最強なんだよ」
「ゆ、うしゃさま、よりも?」
「うーん、それはわかんない」
「じゃあ、最強じゃない」
「確かに、それはそうだね」
思ったより口達者な少女を安心させるべく、私は目線を合わせた。
「でも、すぐに超えてみせるよ。だから私といれば、怒られることなんてないよ」




