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悪趣味カレンダー

 1時間半揺られて到着した先は、駅前以外は寂れていて住宅街か畑しかない、みたいな普通の郊外で、早起きして移動した私は少しばかり疲れていた。チェレーゼはピンピンとしている。やはり日頃の生活習慣が大事だと再認識する。


「こんにちは。クエストの件でお約束していた者ですが」


 ピグイタンにおいてはごく一般的な建築様式の民家。インターフォンにカメラがついているのは、地球とおんなじだ。平日の午前10時ごろなので、みんな仕事や学校に行っているのか、あたりはしんとしている。チェレーゼの声に「少々お待ちください」と応答があり、それから足音が聞こえた。


「お待ちしておりました。依頼人のトゥーでございます。チェレーゼ神官様に来ていただけるなんて光栄です! どうぞあがってください」


 トゥーというのは、一般的にファミリーネームだったはずだ。ジムに何人かいた気がする。ということは、この人はトゥー夫人なのだろう。見るからに普通の中年女性、といった風貌で、悪意や意地悪さは見出せず、それがむしろ警戒心を高めた。


 家に入ると、壁掛けのカレンダーに目が止まった。勇ましい男が剣を持つ横に、左右分割の物理キーボードを顕現させたピグトニャが立っていたからだ。二人ともキメ顔をしているので、おそらく本当の戦闘中ではなく、それらしくとった写真だろう。


「勇者パーティカレンダー、今年も買ったんですよ」

「……どうも、ありがとうございます。最近は売り上げが落ちていたので、少し驚きました」

「私たちにとって御三方は、いつまでも希望の光ですから! ……でも、勇者様が行方不明のままでは……やはりまだ見つからないのですか?」

「……ええ。残念なことに。どうかお祈りください」


 するとトゥー夫人は、祈りの仕草をして、神よ、とだけ呟いた。信仰心はどうやら強いらしい。


 これが勇者か。


 私はしばらくそのカレンダーを眺めていた。勇者の顔つきは確かに、暖かくて優しいというよりは、鋭くて気迫があった。結構昔に撮ったのか、ピグトニャは今と比べるとかなり若く見える。少年と言っても良い。若さのためか、勇者の隣にいるからか、あるいは営業用の顔なのか、私の知っている普段の表情より随分優しそうに見える。勇者になるとこんな商品まで出るのか……と思うと、やはり私には荷が重い……という気持ちになった。


「ソメヤ様、いきますよ」


 チェレーゼが小声で先を促す。私は慌ててカレンダーから目を離し、後についていった。

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