脱法クエスト
脱法的なクエスト受注方法に驚いてつい大声でツッコミを入れた私を、チェレーゼは人差し指を立てて嗜めた。
「しーっ、せっかく融通をきかせてくれるというのですから、我儘を聞いてもらった方はだんまりがマナーです」
「教師っぽい……」
事情を理解して申請書を記入して提出すると、受付嬢はため息をつき、嫌そうな顔でハンコを押して受理した。
「まあ……そもそもこんな依頼を受け付けるギルド中央会が悪いです。せめて特命依頼として、それこそチェレーゼ神官様とか、良心ある方々とわかりきっている人への依頼とすべきで……」
「そしたらこちらの方が跳ね上がってしまいますからね」
チェレーゼはお金を表すジェスチャーをする。このジェスチャーが好きなのか、それともお金お金と口にすることに抵抗があるのかわからないが、彼女はよくこのジェスチャーをする。
「単純に、より広く募りたかっただけかもしれませんが……なんにせよ依頼却下も特命依頼も納得させられず、結局五つ星……実質最高ランク依頼とすることで収めた。相当なモンスターカスタマーなのでしょう」
「行きたくなくなってきた……」
私の嫌そうな声を無視して、チェレーゼは話を進める。
「出発は2日後、朝からだととても助かるのですが……先方と調整をお願いします。難しそうなら教えてください」
「はいはい、わかりました。チェレーゼ神官様がいらしてくれるなら、きっと都合をつけてくれるでしょう。……せめて、その程度の分別は持っていて欲しいものです」
依頼受注後、依頼人とやり取りするのはギルドだ。諸々の調整をギルドが行い、あくまで冒険者はギルドの指示で動く。それは依頼人のプライバシーを守るためでもあるし、報酬トラブルなどを避けるためでもある。ギルド職員は忙しい。その上、褒め称えられるのはいつも冒険者ばかりである。挙げ句の果てにこのような脱法行為に付き合わされるのだ。私は心の中で、ギルド職員の皆さまへの感謝と労いの言葉を何度も繰り返した。




