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ラビ

「あっ……ソメヤさん、チェレーゼ神官様」

「こんにちは。例のクエストについて、正式な受注申請と、ご相談が……」


 ギルドアプリの受注申請は、仮予約のようなものである。実際の申請時には、一度ギルドに赴かねばならない。というわけで、私とチェレーゼは、早速聖セレンゼギルドを訪れていた。私たちの姿を見たいつもの受付嬢は、どことなく不安そうな顔をする。この人、休憩とかお休みとか、ちゃんと取れてるんだろうか。


「えっと……神官様。このようなクエスト……本当に受けるのですか? それとも、なにか新しい研究成果で、万人に……魔法の道が?」

「残念ながら、そのような研究成果は出ていません……しかし」


 チェレーゼはゆっくりと、威厳に満ちた、落ち着いた声で答える。


「私は教師(ラビ)です。それも……ピグイタンで二番目に高名な」


 急に、知らない人みたいな横顔になった。いつも私と朝ごはんを食べ、前髪を編みながらひとつふたつの冗談を交わし、夜遅くまで残業をしてクマを作り、時にはダサい公用車を乗り回し、時折ジムに冷やかしに来る……そういうチェレーゼ・イグノジーの顔ではなかった。


 ファーザー・エイリム大神官の娘、勇者パーティの一員。我らがチェレーゼ・イグノジー神官様──そう呼ばれ慣れた女の顔。


「クエストをクリアしに行くのではありません……ちょっとした、お説教をしに行くんです。それに、間に受けたおばかさんが受注するのも防がないといけません。ですから……なんとかしてくれますね?」

「…………特別ですからね。特別」


 受付嬢は困り顔で『単身によるクエスト受注申請書』を取り出す。チェレーゼと二人で行くと受注予約備考欄に書いておいたのに、なぜ? 私がきょとんとしていると、チェレーゼが説明してくれた。


「私は七つ星なので……下位のクエストは1週間経過しないと受注できないんです。そんなに待ってられません。ですから、ソメヤ様は単身でクエストに向かい……たまたま居合わせた私も協力した、という形にして、事後的にパーティ申請書を受理してもらいます」

「めちゃくちゃルールの穴すり抜けてる!」

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