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ギルドについて

 結果的に、五つ星への昇格は簡単に認められた。チェレーゼは達成報告をした瞬間から「本来五つ星相当のクエストを一人でこなしたのだから、当然昇格が認められるはずです」と鼻息を荒くしていたが、はたしてそのとおりになったのだ。しかし実際のところ、周囲の人々……主にチェレーゼとピグトニャが私を推しまくり、私がいかに才能あるかを言いふらし、各所に根回ししている、という理由もあると踏んでいる。元勇者パーティであり、超有名人であるふたりからの評価と期待はどんどん高まっていて、もはやコネだけで六つ星になれそうだ。


 とはいえ、私としては、一段一段踏みしめるように階段を登りたい気持ちがあった。特別な事情がなければ、六つ星は地道にクエストをこなして目指すつもりである。というのも、私には急ぐ理由がなくなってしまったのだ。地球に帰るためには、お金だけでなく、相当な時間もかかるらしい。


『大変申し訳ないですが……短く見積もって、1年かかります。これは技術開発や調整や、諸々の面倒な作業がスムーズに行った場合の時間です。実際は、もっとかかるかもしれません』

『1年って365日?』

『あー、このの1年は384日です。地球は365日なんですね』

『うん。でも大きくは違わないみたいでよかった。1日の長さも24時間だし』


 短くて1年。この言い方だと、ことによっては2年、最悪3年はここにいる可能性もある。そういうプロジェクトは、地球の短い社会人人生でも何度か見たことがある。ならばズルして立場を得るよりも、着実にやっていく方が、結果的に安全に思える。チェレーゼもピグトニャも、賢明な判断だ、勇者になるための道筋はまた考えるから、しばらくはジムで鍛えつつクエストを片っ端からこなしてくれ、と非常に雑な投げ方をしてきた。確かにそうするしかないけども。


 報酬計算を終えた受付嬢に、冒険者バッジを渡す。元々四つ並んでいた星の横に、新たな刻印が刻まれる。


「はい、これで五つ星冒険者です。おめでとうございます! 収入は口座に振り込みますね」

「ありがとうございます」

「前の依頼のときはなんか慌ただしくって、ギルドの説明をちゃんとできていませんでしたが……今ご説明しても? お時間ありますか?」

「大丈夫です。お願いします」


 そうだった。前のクエスト……今さっき受付嬢にクマの首を渡すことでクリアとなった『魔物化した人喰いグマの退治』を受注したときは、過保護なチェレーゼが諸々済ませてくれたおかげで、私はあまりギルド職員と話すこともなく、さっさと出ていってしまったのだ。利用案内、と記載されたプリントが渡される。本来、初めてここに来た時点でもらうべきものだったのだろう。


「この瞬間をもって、あなたは五つ星相当のクエストが受けられるようになりました。四つ星以下の下級のクエストも、告示から1週間経過したものであれば、受注可能です。余ってるクエストというのは、難しさ以外の理由で何か嫌厭される理由がある……ってことなので、注意は必要ですが、これを趣味にしてる上位ランカーもいるぐらいです。みなさん、こういうのを草取りって呼びます」

「へえ〜」


 私は、地球のWikipediaの『草取り』文化を思い出した。誤字の修正等、誰にでもできるちまちまとした修正を草取りと呼ぶ。この草取りから翻訳されたのか、現地語でもちゃんと草取りという意味なのかが気になり、話を少し聞き漏らした。草のことはどうでもいいのだ。私はギルドのシステムを理解し、次に受けるクエストについて考えねばならない。そのために、人の話はよく聞くべきだ。人の話の最中に空想をするのは、明確な悪癖である。わかっているのにどうしてもやってしまう。


「クエストは誰でも出せます。個人だけでなく国から出ることもありますが、受注者たる冒険者がすることは特に変わりません。依頼をこなし、報酬をもらう。報酬には税金がかかりますが、ギルドが計算して天引きしますので、別途納税の必要はありません」

「ありがたい」

「ひとつのクエストを受注できるのは、原則ひとつのパーティあるいは単身の冒険者のみとなります。複数人……つまりパーティで受注する際は、『パーティ申請書』を記入してください。その際、各メンバーの報酬割合についてもご記載ください。これも税金の計算のためです」

「面倒な感じになってきた」

「ちょっと複雑ですから、実際にパーティを組むときに、改めてご相談ください。また、クエスト中、予定外に第三者の協力を得ることになった場合は、事後的にパーティ申請書を提出して対処できます。原則禁止行為ですが、命が危険に晒されて助けてもらったとか、必要なときもありますから。こういった不測の事態や応援の必要性が発生した場合は、速やかにギルドにご連絡ください。対応します」


 何かご質問は? とたずねる彼女に、特にはない、と返す。こういうとき、質問と言われてもほとんど思い浮かばないタイプだ。実際にやってみてから「あれ?」となる。やるまで大体わからない。


「では、説明は以上です。クエストはギルドのアプリでも確認できますので、よかったらインストールしてくださいね。アプリでは酒場のポイントも貯まりますよ!」

「それっていくらのお勘定で1ポイントですか?」


 しょうもない質問なら思いつくこともある。

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