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酔っ払い

 酒場に着くと、店内の顔という顔が一斉にこちらを見、その後すぐに群がられた。とはいえ、事前にみんながうまく手を回してくれていたのか、大きな混乱は見られない。


「ソメヤ・イストゥール選手!」

「おいおいサインくれよ!」

「後でにしてくれ、後日、ゆっくりな」


 ピグトニャが彼らをいなしながら、私の手を引いて席へ連れて行ってくれる。バルも持ち前の威圧感で、二人分の席をしっかり守ってくれていた。それでも絡んでくる人に困っていると、突然その姿は遠くなった。


「今日はぁ、飲みますよお! ほらそこのあなたも!」


 私に絡んでいた屈強なおじさんが、チェレーゼに引っ張られていったのだ。そのまま、適当なテーブルに着席する。


「えっ、俺も奢りでいいのか!?」

「いいれすよぉ、ところで、お名前はあ?」

「タダズァケ・スァイコーだ、チェレーゼ神官様と飲めるなんて光栄だ。よろしく!」

「ただずぁけさん! 冒険者れすかあ? 感心感心、素晴らしい〜!」

「あぁ、まだ三つ星だけど……」

「プロ級じゃありませんかあ! お強いですよ! ほらほらほらほら」


 タダズァケのグラスに、ビールのような酒を溢れ出すほど注ぐと、かんぱーい! と叫んで、チェレーゼは瓶の方をいった。それはもう素晴らしい飲みっぷりであった。社会人1年生だった頃、飲みニケーションスキルだけで上司の好感度を勝ち取っていたのを思い出した。チェレーゼはほろ酔いがいつまでも続くタイプのようで、こんなに酔っ払っていても本当の失態はほとんどないとはピグトニャ談である。


「多少は酔ってるだろうが……全部計算づくだと俺は思ってるね。姉さんはそういう人だ」


 ピグトニャは静かにロックでお酒を飲んでいる。同じものを、と頼むと、ウィスキーに近い風味であった。私はアルコールならなんでもいいバカ舌なので、異界の酒もありがたくいただく。


「ところでここは……」

「冒険者ギルドだよ、酒場もやってる。うちのプロはみんな冒険者登録させてるからね、馴染みの店なんだよ」

「そうなんですねえ」


 バルのいうことに頷きながら、冒険者ギルドの概要について問うと、ピグトニャが説明してくれた。


「……冒険者登録をすると、登録したギルド……所属ギルドでクエストが受けられる。俺たちはみんな、聖セレンゼギルド所属ってわけ」

「セレンゼ……神殿も同じ名前だったよね?」

「高名な聖人だよ、その昔ピグイタンの独立を奇蹟でもって助けたとかいう……神殿はたくさんあって、一番デカいのが、姉さんも所属してるセレンゼ神殿。他の神殿も基本的に聖人の名前をもらってる、聖アリアとか聖ヨエフとか……ギルドはそういうの関係ないんだが、信仰の厚いヤツがあやかったんだろ」

「へえ〜、詳しいね」


 何の気なしに放った言葉が癪に触ったのか、ピグトニャはぴくりと眉を動かす。


「……俺の姉さんを誰だと思ってるんだ」


 酒の回ってきたバルが、姉さんじゃないだろ、と、ピグトニャの肩に手を回す。


「これでもピグトニャだって昔は神官様だったんだよ、今はやめてるけどね」


 バルの補足によってピグトニャはますます嫌そうな顔になり、眉間にグッと皺を寄せ、残りの酒も、ぐいっと飲み干した。


「神官は向いてない……もうやらない」


 その瞬間、ぬらりと影が現れ、バン、と音が響き、酒が揺れた。


「そんなこと言わないれくらさい!」


 ふらりと現れたチェレーゼが、私たちのテーブルを叩いたのだ。

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