そっくり
チェレーゼの全奢りによる祝勝会は、宣言通り行われた。しかし、私とピグトニャは、遅れての参加となった。特に用事があったわけではない。私への注目が予想より大きくて混乱を巻き起こしそうなので、先に行くメンバーで場を整えておくから、途中から来てほしい。ピグトニャは道案内役で。……というリクエストがあっただけだ。
誰もいないジムの魔導研鑽室。ピグトニャが、せっかくだからと、実践を交えた無神論の講義をしてくれる。
「無神論というか……俺のは正確には不可知論だ。聖典が事実であることは、神の実在も不在も意味せず、神は依然透明だ……。パパ……えっと、父さんは信仰のスランプっていうけど、俺は変わる気はない。お前もそのつもりで育てる」
「でもさぁ、チェレーゼの方針もあるし……」
「姉さんは、表向きは神がいるように振る舞ってくれ、としか願ってない。特に、異界育ちのお前のことは諦めてる。だから俺は……見てみたい……神を最初から信じないものが、何になるのか」
興奮した様子のピグトニャが、紙に図解しながら説明してくれる。その説明している様子があんまりチェレーゼに似ていたから、「二人って似てるよね」、と、つい口に出してしまった。
「……俺と、姉さんが?」
「そっくり。でもこういうのって、本人じゃわからないよね」
「まぁ……わからない。特に今は……」
「神=実在不明」、と書かれたメモ書きを見て、この世界に来た翌日の朝を思い出す。「神=実在する!」と力強く宣言された上、ぐるぐると丸で囲われ、疑問を呈したら怒られたので、かなり印象に残っている。やっぱり似ている。
「このメモは、後で捨てる。バレたら厄介だ……俺が無神論者だと知るのは、おまえと姉さんと父さんのみ。他にバラすなよ」
「内緒にする」
「バレたらおまえの思想だということにして、俺は逃げる」
「ひどい!」
あっはっは、とピグトニャは笑い、そろそろ時間か……と時計を見た。ピグトニャのスマートフォン(現地語でなんというのか知らないが、そう呼んで差し支えないテクノロジーがここにもある)に、「そろそろ来ていいですよー」という「姉さん」からのメッセージが来ている。ピグトニャは名前をちゃんと変えるタイプ、と。
私もスマホを手に入れたいのだが、予算から漏れていたとのことで、自費購入が決定した。賞金で出せそうなので、時間があるときに買いに行くつもりだが、身分証明や諸々が心配でチェレーゼについてきてもらわないと気が気じゃなくて、なかなか行けない。今のところ、連絡先を聞かれるたび、来国したばかりだから、チェレーゼに聞いて、で押し通している。インターネットが使いたくなったら、チェレーゼのスマホやパソコンを借りている。
「酒を飲むから、気をつけろよ。俺とコーチのテーブルにいれば、変なことにはならない」
「わかった」
「逆にアマリの席には行くな。あいつは何しでかすかわからない」
「コーチの腕を吹っ飛ばすとか?」
「そうそう、あとユアンナの左手を吹っ飛ばしてくっつけるとかな」
私はゲラゲラと笑った。実際アマリは大会後、本当に提案したものの、「傷が残ったら本業に支障あるでしょ? ユアンナ・カーニャーは全身が商売道具なの。やるわけない」とすげなく断られたらしい。「向上心がないよなー」なんて文句を言っていたが、治る根拠もくっつく保証もないのに左手を吹っ飛ばすのは、誰だって嫌だ。当たり前のことだ。




