チェックメイト
セクレタの面談をするのは、どこから情報が漏れ出るかわからないから一時保留となった。ナカネという人物のことも、コロネのことも、できるだけ秘匿しておきたかったのだ。軍上層部にも。それ故、上層部の完全な管理下にあるセクレタへの接近は避けることとなった。
幸い、軍に在籍している『ナカネ』という名前の持ち主、該当者は1名であった……ナカネ・ミーラー少尉。軍外部にも協力者がいたのでなければ、黒と見てほとんど間違いないだろう。
私はこれらの情報をもとに、コロネにカマをかけていく。
「目星はついてるの……あなたじゃない。私が実力行使をするのはあなたの主人」
「っ……あなた、関係のない人までその妄想に巻き込む気なの!?」
「コロネってそんなこと言うキャラだっけ?」
「私にだって良心っていうものが……」
「あるだろうけど、今回は違う」
そうでしょ、と机に身を乗り出す。コロネは嫌そうに顔を背ける。
「ナカネ・ミーラー少尉がソラージルの工作員だということは……まだ伏せられた情報。私だけが知っている」
「……」
「彼女の命は私の手の中にある……軍上層部はまだ知らない。でも……私が伝えればすぐ動くし……この情報を上へ隠せる時間も長くはない。工作員を匿うなんてあなた一人で限界、二人は無理」
彼女は私の目を見た。私がどこまで知っているのか探ろうとしているようだった。
「……セクレタッ……簡単に吐きやがって……! 死ねッ……! 情報を吐くぐらいならッ……!」
ついにコロネは折れた。私が全てを知っていると……そう思ったようだった。セクレタの名誉のため、一応補足をする。
「実はね、セクレタに聞いたわけじゃないの。ナカネ・ミーラー少尉が……セクレタを助けるため、独断で反社に頼んでテロ行為に及んだ。そこからバレたの」
「……え」
「マルヴォー家だっけ。そういう組織の下っ端が、王都中央拘置所に訪れてセクレタの身柄解放を求めた。テロ行為自体はニュースになってたけど、中身までは放送されてなかったね」
「……そんなに、あんな奴のことを……」
コロネはショックを受けたように項垂れた。そこまで悲しむ理由まではわからないが、私はこれを好機と見て捲し立てる。
「あなたがすべてを白状すれば……彼女はソラージルの工作員として処刑や幽閉されるのではなく……クラコ・ラピとして生きていける」
「……」
「もし、あなたがクラコ・ラピになれば、残った彼女がどの様な制裁を受けても、あなたはそれを見ることさえ叶わない」
「……」
「最大限の便宜は尽くしてあげる……どちらがいい?」
「ッ……」
コロネは悔しそうに歯噛みした。もう、自分にできることはないと悟った顔だった。
「……言えないっ……口を開いて……言葉にするのは無理ッ……」
それでも強い忠誠心が、自白を止める。
「使いなさいよ……天啓……! 他人の内心を暴く薄汚い力……!」
「……じゃ、そうするよ」
そう言って私は、彼女に手錠をかけた。オリバーがつけていたのと同じ、魔力素子の動きを停滞させる効果のある魔道具。決して抵抗ができないように。
「でもごめんね……使うのは<垣根なき世界>じゃなくて……あなたに誤魔化す余地を与えない……もっと原初的な魔法」
「……は? なにそれ……」
ぽかんとした顔のコロネの頬を撫でた。ごめんね、と思いながら。
「我に見せよ……あなたの全てを」




