シスター
家に帰ると、暇そうな(たぶん暇ではない)チェレーゼがいたので、雑談がてらオリバーとの面会の様子を報告した。『チェレーゼは神官権限でもっと会いに来れるだろ!』と文句を言っていたことを伝えると、「まったく兄さんは寂しがりやですね……」と、呆れたように笑う。ピグトニャとオリバーは『自分が兄、向こうが弟』と主張して憚らないが、この二人は『チェレーゼが妹、オリバーが兄』で認識が一致しているらしい。ずいぶん年上の妹がいたものだ。
「それでさぁ、セクレタを助けるためにテロまでする奴がいたって……なんか変じゃない?」
「変ですね。その人たちに話を聞いてみては?」
「そんなこと言われたって、名前も知らないし」
「そんな時の神官権限ではありませんか、ソメヤ様」
「え? チェレーゼが話聞いてくれるの?」
そういうと彼女は「それもいいですが……」と言いながら、何かを思い出すように目を軽く閉じる。
「神官服ならまたお貸ししますよ? シスター・アリアさん」
「あっ……」
私は第二の顔をして、神官服を着た自分を思い出した。シスター・アリア……オリバーと面会するために、身分を偽った時の名前だ。
「いやでも……あれは緊急時だったから……」
「ふふ、どうせならソメヤ様も神官になりませんか? 正々堂々と……」
「それ何年もかかるじゃん」
「なってもらえませんか……残念です」
本気なのか冗談なのかはわからないが、チェレーゼは態とらしくため息をつく。
「とにかく、神官ならどんな事件の容疑者とも面会可能です。私が行ってもいいですが、天啓を使うならソメヤ様の方が良いでしょうね。ええ、もちろん身分を偽装することはとても悪いことですが……国難を事前に潰すためと思えば」
「国難ってほどかな……」
私のつぶやきに対し、チェレーゼは「これは私の勘ですが」と話した上で、なにやらテーブルの上を掃除し始めた。クロスは改めてシワを伸ばされ、清潔感をより一層濃くした。
「今回の件、私とピグトニャが今受けているクエストにも関連している気がするんです……」
「クエスト?」
「ええ。七つ星相当のクエスト……実質、私とピグトニャへの個人依頼」
私が投げ出していた腕もどけられ、四隅がピンと整うと、中央にお菓子が入った盆が置かれる。陶器製の重たい、綺麗なお皿だ。チェレーゼは食器にこだわりがあるらしく、いつも様々なものをかわるがわる使っているが、これは初めて見た。
「パーティを組みませんか? 依頼主の許可があれば、低い星の冒険者も参加可能です。特級魔法使い、ソメヤ・イストゥール……あなたの実力さえ見れば、きっとあのお方も嫌とは言わないはず」
「あのお方……?」
「依頼主です。もうすぐいらっしゃいます……失礼のないようにしてくださいね」
チェレーゼが語り終えた瞬間、けたたましくチャイムが鳴った。あまりにも常識のない鳴らし方に、ついつい眉を顰めてしまう。
「来ましたね。ソメヤ様はここで待っていてください」
せかせかと彼女は玄関に向かって行く。耳をすませば、ドアのそばで何を話しているのか、何とか聞こえてくる……。
「お久しぶりです、カナデ様」




