処分
「……ただいま」
「ソメヤ! どうなった!」
「無事成功」
ピースを作ってアピールすると、ピグトニャもチェレーゼもきょとんとした。嬉しいときのジェスチャーだと教えたら、ああ、"これ"と同じようなものか、と二人ともよくわからない手をつくった。たしかそれは、"7"のジェスチャーのはずだ。
「7は神聖な数字ですから、嬉しい時にもつかうんですよ」
へえ。今度使ってみよう。
「……なんにせよよかった、無事に帰ってきてくれて……。成功率は高いとわかっていても、ハラハラしました」
「信じてくれてありがとうね、二人とも」
私は辺りをキョロキョロと見渡す。
「オリバーは?」
「あぁ……うるさかったので、寝かせちゃいました」
「扱いが雑……」
「ブレスレットはつけなおしてます。地下牢に帰るか、オリバーの部屋に入れるか、どっちにします?」
「あー……流石に地下牢は可哀想だし、こっちの部屋でいいんじゃない? あそこも簡単には出られないし」
「……裁判もあるし、俺が泊まって面倒を見るよ。ヴェーラがいなくなったと知れば、相当ショックだろうから。その上地下牢じゃあんまりだ」
ピグトニャはオリバーを背負い、私たちは部屋を出る。
「それで……本当にやるのか? ソメヤ」
「うん。オリバーの部屋でいいかな?」
「そうしよう。あの部屋は秘匿性も高いし、早めにやった方がいいしな……思ったより二人の相性が悪くてすぐ追い出された、なんてこともあり得る」
「一応、いい感じに見えたけど……ユーシャも頷いてくれたし」
「ユーシャは忍耐強い人ですが……ヴェーラはわがままですからねえ。私の最後のアドバイス、覚えてくれていると良いのですが」
布団を敷き、そこに眠ったオリバーを放る。すうすう寝息を立てる彼は、少しやつれたように見える。拘置所より酷い環境で監禁されていたのだ……強制的に睡眠を取らせるのは、確かに正しいかもしれない。その横で私たちは適当に座り込み、ピグトニャがキーボードを顕現させた。
「……ソメヤ。ヴェーラに言いたいことは、十分言えたか? 今の気持ちを残しておかなくていいか? 手紙とか……なにかで」
「……ピグトニャに前言われたとおり、日記つけてるし平気。それに……天啓を行使できる程度にヴェーラを愛しているとは言っても、私の愛は、チェレーゼやユーシャには遠く及ばない。同情と憐憫と隣人愛みたいな感じ……だから、大丈夫。お幸せに、って言えたしね」
愛を求める子どもの叫びに……私は応えきれなかった。そしてこれから、その叫びに対し、永遠に耳を塞ぐことになる。勇者としては情けない……本当に情けない、失敗も失敗、大罪だ。それでも、やらなければならない。
「じゃあ……いいんだな。思いきりやって」
「……いいよ。チェレーゼは自分にヴェーラが帰ってきた感覚がないか、念の為確認しておいて」
「理論上無いとは思いますが……わかりました」
そして3人で頷きあう。これが、私の計画の、最後の鍵。
「固有応用魔法……敗北者は幸い。我のものを、汝に与えん」




