↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
183/216

第一位の実力者

 オリバーがピグトニャに殴られた数分後。チェレーゼはやっと唇を開いた。


「……ごめんなさい、オリバー。私があなたを見誤っていたようです」

「……テメェみたいなクソゴミムシにも、謝るって文化あるんだな」

「ありますよ。そして、それなりに本気です」

「口でならなんとでも言えるだろうが……」


 チェレーゼは目を閉じた。


「……おっしゃるとおりです。行動で示せない誠意に、言の葉以上の意味はありません」

「……姉さん、こいつに誠意見せる必要ある?」

「まあないですが……」

「あれよ!」


 オリバーの叫びはコミカルだが、空気は重い。なんだか、悪い予感がする。


「ないですが、見せましょう。オリバー、あなた、ヴェーラのために来たんでしょう? ヴェーラと話をさせてあげます」

「は!?」


 声を上げたのは、オリバーだけでなく、私とピグトニャもであった。何を考えているのか、と言わんばかりの私たちに、チェレーゼは微笑む。


「大丈夫ですよ。ヴェーラが天啓で私に乗り移ったところで……効果は長く見積もって、15分程度。なにもできやしません。私を散々攻撃してくれたおかげで、私の残存魔力は今、かなり少ないんです。そして、ヴェーラの天啓は、天啓とはいえ魔法ですから……相当な魔力を浪費するはず。そして魔力を使い切れば、待つのは死。私は天啓が天啓ですからね……魔力計算は、得意なんです」


 驚いた。それは、オリバーから聞いた天啓の特徴と全く同じ……真実だったからである。


「現に、私がこのことに気づいた瞬間……彼女もそれを読み取って、私への攻撃を控えるようになりました。ですが勿論、私は警戒を怠らず、あえて低魔力を維持しています。ヴェーラって、私の知ってることを知ってるってだけで、頭は良くないんですよ」

「……でも、想定通りにいかなかったら……」


 私の心配を汲み取ったチェレーゼは、自身ありげな顔で笑って見せる。


「ソメヤ様、大丈夫。天啓学は守備範囲内……私は、信仰科学者です」


 私は思い出す。そういえば、目の前のこの女性は、科学者であったということを。異界から私を召喚するほどの科学力を持つチームのリーダーで、エデンの言語の研究者。称号もたくさん持っていて、その知識は広く深い。何より……。


『彼はピグトニャ・イグノジー。速さはS1なのですが……この国第二位の実力者です』


 今思うと、ピグトニャに初めて出会ったときの、あの紹介はおかしいのだ。だってピグトニャはプロ番付1位、ユーシャなき今、ピグイタン最強の男であるはずだから。ユーシャを含めて……とも考えられるが、数ヶ月を共にした今では、チェレーゼはそんなナイーブな性格ではないと断言できる。


『……あなたは……チェレーゼさんは強いの?』

『少なくとも、この部屋の中では一番。ですが、あなたがいずれ一番になるでしょう』


 あのときは召喚されたばかりで知らなかったが、ピグトニャもプロジェクトメンバーである以上……あの部屋に、いたはずなのだ。つまり彼女は、ピグトニャを第二位と呼んだとき、言外にこう言っていた──


──この国第一位の実力者は、自分。


 戦っていたのだ、彼女は。たったひとりでも。頭の中での殺し合い以外にも……様々な方法で、戦い続けていたのだ。この国第一位の、実力者として。


「でも、姉さん……」

「いや、ピグトニャ。チェレーゼを信じよう」

[これは中々ない、ヴェーラを直接観測するチャンスなんだから]


 私のテレパシーで、ピグトニャは折れた。あとは信じるしかない……勝つのは私たちだ、と。チェレーゼはどこともつかない場所を軽く見上げて、語りかける。


「ヴェーラ……あなたの可愛いオリバーが来ていますよ。出てこなくても構いませんが……オリバーはどう思うでしょうね? あなたがここで出てこないなら……私はあなたごと、昏睡させてもらいます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。