↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
173/216

徒労感


 あれから1週間、オリバーと話して得たもの……それは、徒労感であった。


「ぜんっぜん口割らないアイツ……もう頃合いじゃない? 私の固有魔法全部使って……」

「待て、待ってくれ。もう少しだけ……」


 思ったより喋ってくれそうに見えたオリバーであったが、あの後何を聞いてものらりくらり、刑務所生活の話や、チェレーゼとエイリムの悪口はいくらでも引き出せたが、肝心のヴェーラのことについては、中々口を割らなかった。


『あのねえ……チェレーゼはヴェーラごと殺されそうなんだよ? わかってる?』

『いや……そうなんだろうけど、なんだろうけどさ……俺わかんねえんだよ……どうしたらいいか。何がヴェーラにとって一番嬉しいのか……』

『何につけても、まず命が最優先でしょ?』

『そりゃ俺はヴェーラに生きててほしい……でも、』


『ヴェーラが生きたいのかわからない……』


 忠告を受けていたとおり、オリバーはトリッキーな性格をしている。仲良くなれそうだと思ったら、次の瞬間には牙を剥かれ、血が出るまでこちらを噛んでから急に怯え始め、また媚び、今までのことなんか忘れたように振る舞う。


 そういう人間だ、仕方がないことだ、そう自分に言い聞かせても、ストレスはストレス。チェレーゼの病態についての不安や焦りも相まって、時折酷く苛ついては、ピグトニャに<正位置>をかけてもらう始末。<正位置>は、自分に使うことが難しい……それは、<正位置>を欲してしまうほどに乱れた状態では、高度な精神魔法は使えないからだ。それほどまでに、私は翻弄されていた。


 一方のピグトニャは、精神魔法にも頼らずに根気強くオリバーの説得を続けている。とはいえ、いろんな確執がある分、その仲の良さも凸凹としていて、3時間話し込んだかと思えば10分で拗ねられて何も聞けない、なんてこともざらだった。


 相手は一切魔法を使えず防御もできない丸裸の状態、何も<リーダビリティ>に限らずとも、さまざまな魔法で口を割ることは簡単に思える。何も拷問でなくても、混乱させるとか、酒を飲ませるとか。しかし、それで失った信頼を取り戻す、そんな魔法だけはないのだと、そう彼は言って止めてくる。もう少し、あとちょっと、俺がなんとかするから、と。


「もう少しって言っても、チェレーゼの体力が減ってってるのは、毎日面会行ってるピグトニャが一番わかってるでしょ?」

「わかってる、わかってるよ。でも……。あっ」


 そこでピグトニャは、何かに気づいたように声を上げた。


「なあ、ソメヤ。これで最後にする。最後にするから、おまえの固有魔法を試す前に……」


 それから彼の放った一言は、確かに一考に値するが、危険であり、何より意外だった。


「姉さんの面会に、オリバーを連れて行きたい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。