徒労感
あれから1週間、オリバーと話して得たもの……それは、徒労感であった。
「ぜんっぜん口割らないアイツ……もう頃合いじゃない? 私の固有魔法全部使って……」
「待て、待ってくれ。もう少しだけ……」
思ったより喋ってくれそうに見えたオリバーであったが、あの後何を聞いてものらりくらり、刑務所生活の話や、チェレーゼとエイリムの悪口はいくらでも引き出せたが、肝心のヴェーラのことについては、中々口を割らなかった。
『あのねえ……チェレーゼはヴェーラごと殺されそうなんだよ? わかってる?』
『いや……そうなんだろうけど、なんだろうけどさ……俺わかんねえんだよ……どうしたらいいか。何がヴェーラにとって一番嬉しいのか……』
『何につけても、まず命が最優先でしょ?』
『そりゃ俺はヴェーラに生きててほしい……でも、』
『ヴェーラが生きたいのかわからない……』
忠告を受けていたとおり、オリバーはトリッキーな性格をしている。仲良くなれそうだと思ったら、次の瞬間には牙を剥かれ、血が出るまでこちらを噛んでから急に怯え始め、また媚び、今までのことなんか忘れたように振る舞う。
そういう人間だ、仕方がないことだ、そう自分に言い聞かせても、ストレスはストレス。チェレーゼの病態についての不安や焦りも相まって、時折酷く苛ついては、ピグトニャに<正位置>をかけてもらう始末。<正位置>は、自分に使うことが難しい……それは、<正位置>を欲してしまうほどに乱れた状態では、高度な精神魔法は使えないからだ。それほどまでに、私は翻弄されていた。
一方のピグトニャは、精神魔法にも頼らずに根気強くオリバーの説得を続けている。とはいえ、いろんな確執がある分、その仲の良さも凸凹としていて、3時間話し込んだかと思えば10分で拗ねられて何も聞けない、なんてこともざらだった。
相手は一切魔法を使えず防御もできない丸裸の状態、何も<リーダビリティ>に限らずとも、さまざまな魔法で口を割ることは簡単に思える。何も拷問でなくても、混乱させるとか、酒を飲ませるとか。しかし、それで失った信頼を取り戻す、そんな魔法だけはないのだと、そう彼は言って止めてくる。もう少し、あとちょっと、俺がなんとかするから、と。
「もう少しって言っても、チェレーゼの体力が減ってってるのは、毎日面会行ってるピグトニャが一番わかってるでしょ?」
「わかってる、わかってるよ。でも……。あっ」
そこでピグトニャは、何かに気づいたように声を上げた。
「なあ、ソメヤ。これで最後にする。最後にするから、おまえの固有魔法を試す前に……」
それから彼の放った一言は、確かに一考に値するが、危険であり、何より意外だった。
「姉さんの面会に、オリバーを連れて行きたい」




