保釈
「……そんで行き先が俺の家!?」
「そこ以外ないでしょ」
「勘弁してくれ……」
「ピグトニャ久しぶり! 愛しの姉さんが入院中だって!? 可哀想になぁ!」
「それはテメーもだろうが!」
オリバーの保釈当日。なんだかんだで迎えに来てくれたピグトニャは、オリバーに誰か適当な人間に変身するよう指示するが、手首につけられたブレスレットのようなものを見せられ、頭を抱えた。
「あー……そりゃそうか」
「それ何?」
「魔力素子の動きを制限する魔道具。囚人はみんなこれつけてんだよ、保釈されてる間も。やんなっちゃうよなァ」
「自業自得といえば自業自得だけど……」
ピグトニャは頭を抱え、考え込んだ末に、オリバーの手首をぎゅっと握った。オリバーは仰天する。
「なんでピグトニャが俺の手を……もしかして俺のこと好き? チェレーゼだけじゃなくて、きょうだいなら誰でも……? ごめん、流石に弟は恋愛対象外で……」
「拘束するために決まってんだろ! つかんでるの手首だし! てか俺はおまえの弟じゃない!」
『俺はおまえの弟じゃない』にまあまあショックを受けた様子のオリバーは、暗い声で「はーい」と言って静かになった。ピグトニャも、その予想外の反応に、多少狼狽する。
「……い、言いすぎた。悪かったよ。でも、こうでもしないと……」
「あの違法な隠匿魔法使うんだろ? 人様に文句言える立場じゃあないよなァ」
「……うるさい。少しでも変な動きしたらムショに返すからな」
「はいはい、こえ〜」
そして私のことはいつもどおり、俵のように担ぐ。これで、表向きには誰もいないように見える。
「言っとくけど、俺の家は無理! 大神官殿の方に行こう。監視に都合いい部屋もある」
「その手があったか……って、いいの? それ」
「パパには後で話すよ。オリバーにとっても実家だから妥当だろ。一家団欒するぞ」
「ヤケになってる?」
拘置所付近の路地裏でやり取りする3人。すでに魔法はかかっているので、誰かに見つかれば不審極まりない。
「はぁ……行くぞ。合図するまで黙っとけよ」
「はーい」
「オリバーも」
「……なんでソメヤちゃんは手じゃねェの?」
ピグトニャはその質問を無視し、オリバーの手を引いて歩き始めた。銀髪ストレートのピグトニャと、癖毛の金髪のオリバーは、全く似ていないはずなのに、どことなくきょうだいらしさがあった。幼い時間を共に過ごした者特有の、通じ合っている感覚とでも言えばいいのか。
私は二人の幼い頃を想像してみた。そこから袂が分かれ、ユーシャとチェレーゼとピグトニャが旅へ出て、一人置いていかれることになったオリバーを想像した。エイリムの隠しファイルのパスワードにも、オリバーはいなかった。忘れられた子ども……。これを機に、過ぎた時間を取り戻せればいいけれど。




