なでなで
「早速独特の人心掌握術が炸裂してるな。それもJTC式か?」
「いや、JTCだとしても、上司に忠誠を誓わせるのはやりすぎかな……」
「ははは」
「笑い事じゃないですよ……」
ガネットは疲れ果てた顔で言う。
「いや、存外良い手だと思うね。彼らに人並みの信仰心があれば、あの誓いはなかなか裏切れないし……ひとりと誓いを交わすだけで37人に同じ気持ちを植え付けられるのは、効率がいい。それに、彼らはみんな、死にたくない、助かりたいって素朴な気持ちを曝け出した……普通の人間。つまり、扱いやすいってこと」
「そうですが……」
「……ガネット、もしかして嫉妬か? 寂しいならちゃんと、褒美が欲しいと言ったほうがいいぞ。俺もソメヤも、僕の忠義には報いたいと思う方だ」
「ちっ、ちがいますっ……!」
なるほど、たしかに、忠義に見合った褒美は必要だ。それならばと私はガネットに微笑みかけ、ちょいちょいと手招きした。
「な、なんですか……」
ガネットは困惑しながら歩いてきて、自然と私の前で跪いた。見事な忠義だ。私はそれに報いるため、彼女の頭に手を伸ばす。
「よーしよーし。ガネットの働きにほんとに助けられてるよ。これからもよろしくね」
「なっ……! わ、私は犬ではないのですから……!」
頭を撫でられたガネットは、抵抗こそしないが、困惑した顔でこちらを見た。豆もちならこれで喜ぶと思ったのだけど、確かにガネットは犬ではない。
「ありゃ、嫌だった? ごめん」
「い、いえ……嫌ではなく……その……」
ガネットは目をそらし、それからゆっくりと視線をこちらへ戻した。
「二人きりの場所でなら……」
かわいい。やっぱり犬みたいだ。
ガネットはハッと正気に戻ったような顔をして、慌てて立ち上がり席へ戻った。年上の女性が自分に服従し、慌てている様子は、なんだかゾクゾクする。
「そ、そうじゃなくてですね。今後の話をしなければならないと……」
「そうだったね。多国籍隊を作ったはいいけど……正直そっちばかりには構ってられないと思う」
「軍のことは私にお任せください。時折顔を見せてくだされば。ソメヤ様の勤怠については……ツテがありますので、交渉します」
「ありがとう。助かるよ。すると今、不安なのはコロネで……あの子は私に忠誠心とかないし、不安定な状況なんだよね。私からも懐柔は試みるけど……とりあえず、変なことしないように見張ってて欲しい」
「コロネ二等兵ですか。注意してみておきます。班長のリズ軍曹は事情を知りませんが……メンタルが不安定なので注意、とでも伝えておきます」
「オッケー」
私はうんと伸びをして、背中をバキバキと鳴らした。
「余裕そうだな。人心掌握ぐらい簡単か?」
「難しいよ。私は私がされたら嬉しいことをしてるだけ……ごめん、あとはピグトニャと二人で話してもいい?」
「承知いたしました。またお役に立てることがあればお呼びください」
ガネットは従順に会議室の扉を開き、出ていく。私はピグトニャに視線を向けた。
「一旦タスク整理しよう」




