入隊検査
国際魔法連合軍は、6期に分かれて入隊検査がある。そこを私たちは国の権限で無理にねじ込んでもらったので、未検査であった。
「魔法適性者なら落とすことはほぼないんだけれども、一応ねえ、必要だからねえ」
のんびりした口調でそう話すのは、イシュー・イグール少佐である。私はこの人に見覚えがあった。思い出そうと、しばらく考え込む。
「特にソメヤくん、キミは最強決定戦でうちのボスに勝ってるからねえ。ほんとはこんなことしなくていいんだけど」
「……あー! ルースジムの次鋒!」
「そう、お久しぶり。イシュー・イグールです。キミと戦ったのはうちの妹のルースで……歳が結構離れてるんだけど、これが可愛くてねえ……」
私はゾッとした。この人、私が妹さんをボコボコにしたからキレてるんじゃないか? そういえば、イシューもルースも、キレると急に動作や口調が荒くなるって評判を見たことがある気もする。早速パワハラされたらどうしよう。
「……あはは! そんなビビらなくても。ガネットも久しぶり。教えてやっておくれよ、ボクは優しいヒトだって」
「久しぶり。相変わらずみたいで……。ソメヤさん、アレは私が軍人時代の同期なの。そんなに構えなくても大丈夫」
「へえ〜、顔が広いんですね」
「ピグイタン軍は年取るとキツいからねー、こっちに鞍替えする人が結構いるの。イシューもそうだし……他にも少し知り合いがいるわ」
「そうそう、おかげで大会に出られるほど良い待遇になった」
あまりピンとこないが、ジムで修行する時間も取れるようになったということだろうか。
「さて、この検査で見るのは魔法適性の有無、及び得意属性とその強さになるよ。といっても、ふたりに魔法適性があるのは目に見えてるから省略しちゃって、得意属性を見ていこうか」
「得意属性……」
「ソメヤくんは他国出身だっけ? じゃああまり詳しくないかな?」
「ジムで少しは習ったけど……その、知らなくてもあまり困らなかったので、考えたことがありませんでした」
正直に答えると、イシューは大きな声で笑い出した。
「いるいる、そういう天才肌タイプ。でも、どんな万能魔法使いにも、やっぱり得意なものってあるんだよねえ。それを軸にした方がいい……。基礎魔法は流石に覚えてるでしょ?」
「は、はい」
「ピグイタン式基礎魔法呪文書、あれに入ってるのはそれぞれの属性の最もスタンダードな魔法なのね。それをこの機械で計測すれば、最もパフォーマンスが出ている属性がわかるってわけ」
「はい」
「まず発散魔法……防御、熱、水、土、風、光、音。そして吸収魔法……治癒、精神、肉体強化。この十属性の基礎魔法を順にやってってもらえる?」
「わかりました」
私が機械の前に歩もうとすると、おっと、と言いながらイシューが手で遮る。
「忘れてた……上司への返事は、両手を体の横に揃え、大きな声で、はい、を1回。やってみて」
「は……はい」
「もっと」
「は、はい!」
「ためらわずに!」
「はい!!」
頑張って叫ぶと、よし、と言って通してもらえた。地球に帰りたくなってきた。




