言い争い
「娘だぞ! 見破れないわけがない! それで言えば、出会ったばかりのあんたが騙されている可能性の方が大きいじゃないか!」
「でもさっき、私の大根芝居を見抜けませんでしたよね。私は、オリバー襲撃時、すぐにチェレーゼでないことを見破りました」
「……」
「エイリムさん……あなたほどの立場の方であれば、お子さんのことをあまり見られないのは、一定仕方のないことです。けれどそれが……みんなを追い詰めてたんです。あなた自身、薄々わかってるんでしょ?」
「……そうだが、チェレーゼだけは……」
「大神官様のことだから、何か理由があるのだとは思いますが……チェレーゼを使って、私に夜な夜な何をしていたんですか?」
エイリムは座った目をして、極力動揺を表に出さないよう努めながら、低い声で尋ねる。
「……何を言いたい?」
「私ってあんまり寝つきが良くなくて……すこしの刺激で目が覚めちゃうんですよ」
「いや、それはありえない……」
「ありえない? 何か細工でもしてたってことですか?」
私はしっかりと、エイリムの座った目を見つめる。向こうがたじろぐまで、視線を外さない。
「別に責めたいわけではありません。国益のためなんでしょう? ただ、被験者の私にも……そしてチェレーゼにも、一言お話があってもいいんじゃないかと思うだけです」
「……チェレーゼは知っているはずだが」
「いいえ、知りませんでした。確信をもって言えます。彼女は……私に固有魔法をかけているということを知って、あんな精神状態に追い込まれたんです」
「……」
黙り込んでいる彼に対し、ここが勝負どころだと、テーブルを叩いて叫ぶ。
「実質、あなたの娘さんが、誰かに殺されそうになったってことですよ! それとも、あなたの計画に、この自殺行為もあったんですか!? オリバーはこうも言っていました……オリバーも、私も……チェレーゼ・イグノジーを完成させるための、養分だと」
「……」
「あなたは……何を目指しているんですか? チェレーゼらしき誰かは、なんて言ってたんですか? 私は、ただ……チェレーゼがこんなことになって、悲しいんです。彼女が追い込まれなきゃいけなかった理由を知りたい……」
エイリムは、しばらく思案した。その後に、はぁ、とため息をつき、あなたのいうことを100%信じるわけではない、と前置きした。
「とはいえ、私も神官だ……自分の良心に従う必要がある。国家機密以外のことは、お話ししよう。元々、あなたに隠してきたのも、どこかで謝罪すべきとは思っていた」




