憔悴
「まぁまぁ……とりあえずさ、落ち着いて話してもらうためにここに来たけど……仕事もあるんだし、ずっとここで過ごすわけにいかなくない?」
「……と言っても……私が仕事をすればするほど、ヴェーラに情報が漏れるということでしょう」
「とはいえ、チェレーゼなしで色々動くのは難しいよ。ピグイタン王国も、私たちもね。むしろそれを狙ってるんじゃないかとさえ思う」
私の発言に、ピグトニャは頷く。
「連れて来ておいてなんだけど……そこはソメヤに同意する。あいつはいなくなる前……俺らが姉さんを見捨てられなければ、その分自分が有利になると言い残した。まるで見捨てさせたいみたいだ……それに、正体だってこっちに明かす理由がない。隠れてた方がやりやすいはずだ……仲間割れさせたいのでなければ」
それを聞いたチェレーゼは、憔悴した顔のまま少し牢屋から離れ、私たちの持って来たクッションを抱えこんだ。
「それに、今家に盗聴器が仕掛けてあるとしたら……高確率でヴェーラがやってて、それを見つけられるのはチェレーゼしかいない。チェレーゼが探さないような場所に、違和感なく設置し、回収し、また設置して……なんてことも彼女なら可能……ピグトニャと私の会話はそれで聞かれた、と思うのがシンプルだよね」
「……それはまあ」
「ハムストリの箱? とかいうやつもヴェーラが入れたんだろうし……わかんないけど。それに、現段階で体を完全に奪ってないってことは……多分自由には出てこられないってことだよ。私たちの前ではさも自由に出てこられるように発言してたけど……何らかの条件があると思う。違和感に気づける誰かが常にチェレーゼについてまわれば、勝手なことはさせられない」
「……それも、そうかもしれませんが……、せめてソメヤ様と私は離れた方がいいと思います。夜な夜な固有魔法を使って何かしてますし……」
「……それに関しては、実際そうせざるを得なくなる」
え、と私の喉から声が漏れる。こうなった以上、社会的には完全に自由人である私が監視役にぴったりだろう、と思っていたのに。狼狽える私に対し、ピグトニャはスマートフォンをいじり出し、ある書類を見せて来た。
「ソメヤの国際魔法連合軍入隊の決裁が降りた……入隊すれば、本部は王都とはいえ、今より多くの時間を割かなければならない……寮に入る可能性もあるし、非常時には国外にも行く。自然と姉さんとは離れることになる。そして……決裁ルートには、ファーザー・エイリムもいる」
「……」
「メールを見るに……アレだけ反対してた陛下が、ころっと意見を変えて通したらしい。正式なレク以外で陛下の意見を変えられるのは、大神官たるファーザー・エイリムぐらい……つまり、エイリムはもう二人の接触を必要としていないと見るべきだ。今日、必要がなくなった……あるいは、危険が大きいと見たんだ……」
「それって……」
あぁ、とピグトニャは頷く。
「エイリムもオリバーもヴェーラも……おそらくはグルだ」




