邂逅
私の推測を聞いたチェレーゼは大きく目を見開き、わなわなと震え出し……そして叫んだ。
「私を地下牢に閉じ込めてください……今すぐに!」
ピグトニャは混乱した顔で、姉さん落ち着いて、などと言っている。
「そっか……そっか……そっか……! 嗚呼……なんで忘れていたんだろう……」
「……心当たりが、あるの?」
「あります……というか、ほぼ間違いないでしょう。早く……早く私を地下牢に……そこで話します! 早くッ……」
チェレーゼが立ちあがろうとしたところで、ぴた、と動きが止まった。糸の切れた操り人形のように、彼女の体は力を放出して萎えてゆく。
「姉さん!」
「……ふふふ」
「……」
オリバーの精神から聞こえてきた笑い声と、同じ笑い方が、チェレーゼの声帯を通じて発せられる。彼はこれを参考にしていたのだ……だから、私に気づかれた。
「……あなたは誰?」
「チェレーゼですよ。チェレーゼ・イグノジー」
「……」
「おっと」
私の固有魔法は弾かれ、意味をなさない。
「もう一度聞く。あなたは誰?」
「……チェレーゼから聞いてはいかが?」
「チェレーゼの意識、返してくれるんだ」
「ええ、だってあなたたち……あっちの方が好みなんでしょう? 捨てられないんでしょう? その分私が有利になるだけですもの」
「……夜な夜な私に固有魔法をかけてたのも、あなた?」
「怖い顔……それは誤解です。あれは……チェレーゼがやったことですよ。ソメヤ・イツナさん……」
正体不明の人格は、机から体を勢いよく乗り出し、私の顎を掴む。私は驚いて抵抗したが、あまりに強い力に動けない。彼女は私の耳元に、唇が触れそうなほど近づいて囁く。
「……あなたのことが気になって、つい出てきてしまいました。今度はゆっくり話しましょうね。それでは、ごきげんよう……」
そうして彼女は姿を消し、チェレーゼの体がぴくりと動いた。そうしてはっと起き上がると、「私を……!」と叫ぶ。
「おかえり」
「……今、私……」
チェレーゼの手は震え、唇からは、あぁ、あぁ、と、声が漏れ出ていた。その様子を見たピグトニャが立ち上がり、チェレーゼの椅子をゆっくりと引く。
「ピグトニャ……」
「……姉さん、立てる?」
「……」
「俺が運ぶよ……行こう」
そのままピグトニャはチェレーゼを抱きかかえた。所謂お姫様抱っこの形だ。
「まっ……待って、本当に地下牢に行くの?」
「それしかない……それが姉さんのためだ。まずは落ち着いてもらって……話を聞こう」
私は反論しようとしたが、ピグトニャの腕に抱えられているチェレーゼは、あきらかに正気ではない顔をしている。
「私を……早く……閉じ込めて……」
こうしている間にもますます青ざめ、まともに会話ができる状況ではなさそうだ。私は仕方なく、二人へついて行った。




